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hirokun43さん、こんにちは。

元々、公開会社の4倍制限は、定款変更によって発行可能株式総数を増加する場合のみを対象としていました(会社113Ⅲ①)。

公開会社において株主以外に割当てを行う募集株式発行は、原則として、取締役会で決定でき、この場合、既存株主が関与できないところで、その持株比率が低下することから、募集株式発行は発行可能株式総数の範囲内で行うことができるとすることで、既存株主の持株比率低下の限界を画するというというのが、発行可能株式総数を定める(授権資本制度の)趣旨となります。

そこで、この発行可能株式総数を制限なく拡大できるのでは、その趣旨が没却されるため、上記のように発行可能株式総数を増加する場合の上限を設けました。

しかし、平成26年改正において、株式の併合を行うにあたっては、発行済株式総数が減少し、発行可能株式総数の4分の1を下回る事態を容認することは、やはり4倍ルールの趣旨を失わせるとして、株式併合の効力発生日における発行可能株式総数を株主総会の決議事項とするとともに、その数は、発行済株式総数の4倍を超えることができないと規定されました(会社180ⅡⅢ)。この改正によって、株式併合を用いて4倍ルールを潜脱することが防止されることになりました。

なお、この改正に係る平成26年5月13日の参議院法務委員会において、参考人である静正樹氏から、投資家が安心して投資をできるようにするためにこの改正が重要であると指摘されています。

一方、株式の消却については、消却後も発行可能株式総数は当然には減少せず、また、上記株式の併合に対応するような規定も存在しません。会社法においては、株主総会の決議を経ずに定款変更の効力が生じる場合には明文の規定が設けられており、また、それ以外にも、定款変更がされたとみなす必要がある場合にも明文の規定があるので、そのような規定のない消却では、定款記載事項である発行可能株式総数は減少しないということになります。これは会社法の体系的な趣旨、形式面からの理由となります。

それと、私の個人的な意見ですが、株式併合は市場に出回っている全ての株式がその対象となるのに対し、株式の消却は会社が有する自己株式のみを対象とすることから、最終的に株主の持株比率低下への影響の大きさは異なるという発想がここにはあるのだと考えます。


第113条(発行可能株式総数)
 株式会社は、定款を変更して発行可能株式総数についての定めを廃止することができない。
2定款を変更して発行可能株式総数を減少するときは、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数を下ることができない。
3次に掲げる場合には、当該定款の変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。
一 公開会社が定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合
二 公開会社でない株式会社が定款を変更して公開会社となる場合


第180条(株式の併合)
 株式会社は、株式の併合をすることができる。
2株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 併合の割合
二 株式の併合がその効力を生ずる日(以下この款において「効力発生日」という。)
三 株式会社が種類株式発行会社である場合には、併合する株式の種類
四 効力発生日における発行可能株式総数
3前項第四号の発行可能株式総数は、効力発生日における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。ただし、株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。

講師 小泉嘉孝


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koizumi1 2024-03-11 13:13:08



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