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sekainotanichanさま

争議権の行使であっても、使用者の企業施設に対する所有権やその他の財産権との調和を要求されます。
この論点について、過去に最高裁判例があります(山田鉱業事件・昭25.11.15最高裁大法廷)

この事件では、労働者が使用者の経営支配を排除し、工場・事業所全体やその生産設備等を接収して経営を行ういわゆる「生産管理」を行いましたが、
最高裁は「労働者側が企業者側の私有財産の基幹を揺がすような争議手段は許されない」と判示しました。

したがって、「小売業の場合無料で商品を配る」という行為は、場合によっては業務上横領罪に当たる可能性はあります。
ただし、これについては、その争議規模や方法、使用者側の経済的規模によって、個別具体的に判断されることになるとは思います。

また、「交通機関の場合料金徴収をやめる」という行為は、いわゆる怠業行為の一累計ですので、上の例より判断は微妙ですが、
この行為を使用者に対して予告なく行った場合、その正当性についいささか疑義が生じます。

ただ、今日の日本では、経済的損失が大きく予想される上のような争議行為を労働組合側が通告してきた場合であっても、同調する労働者が少ないので、
大手企業の場合使用者側は争議行為を行う労働者だけをロックアウトして、残存労働者だけで業務を継続することがほとんどです。
したがって、諸外国の事例がそのまま当てはまるかどうかですが、それは正当行為として認めれらるか認められないか以前に、そもそも日本ではそのような類型の争議行為が極めて起こりにくいので、あまり議論になりにくいという事情もあるのではないかと思います。

山川社労士予備校
三宅大樹

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yamayobimiyake 2017-08-12 11:48:33

丁寧な解説、誠にありがとうございました。
これでまたひとつ、正当な争議権の行使であるか否かを見極める判断基準を覚えることが出来ました。

質問で述べたようなケースは、やはり日本ではおきにくい事例なだけに、参考書にもみあたらないし講義でも話されなかったのですね。
山田鉱業事件、問題作成者の思いつきで1問くらい、出るかもしれませんね。

厚く御礼申し上げます。あと2週間、追い込み頑張ります。

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sekainotanichan  2017-08-12 13:08:41



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