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労働基準法/変形労働時間制の対象労働者の範囲について
ibuharu0720 2016-09-18 17:49:05
合格講座INPUT編P79に記載がある
1か月単位の変形労働時間制に定めなければならない事項に関する質問です。
記載しなければならない事項に、「対象となる労働者の範囲」の記載がありません。
フレックスタイム制や1年単位変形労働時間制と同様、
対象となる労働者の範囲を記載する必要があると思うのですが。
ご教示いただけましたら幸いです。
1か月単位の変形労働時間制に、「適用される労働者の範囲」の規定がないのは、「就業規則に対する規定がない」という点を見るなら、他の3つの変形労働時間制と同じですよ。
1か月単位の変形労働時間制以外の3つの変形労働時間制であっても、法が、「適用される労働者の範囲の記載をしなければならない」としているのは「労使協定」の内容であって、「就業規則」については、法は適用される労働者の範囲について、何も言っていないでしょう?
しかし、労使協定には規範性がありませんから、実際に変形労働時間制を実施する場合は、就業規則にその定めをしなければなりません。
では、実際に変形労働時間制を適用する場合に、就業規則がどうなるのかと言えば、適用範囲を限定しなければ全従業員に適用され、営業部門には原則を適用し、制作部門には変形を適用するのであれば、そのように就業規則を書く必要があります。
これは、就業規則が従業員を拘束するルールであることから生じる当然のことです。
これらを就業規則に書かずに実施し、ある者には変形労働時間制を適用し、ある者には適用しなければ、就業規則と異なる労働をさせたのですから、あらかじめ定められた労働条件に反したという、民事上の問題が発生します。
これは民事の問題として解決されるべきことであるため、法は特別な事情がなければ、触れないのです。
ご質問に対する回答はここまでです。
以下は、ではなぜ、1か月単位の変形労働時間制のみ就業規則だけで実施できるのか?、また1か月単位の変形労働時間制を労使協定で実施する場合に、労使協定の内容の規定がないのはなぜか?、について説明します。
法32条
使用者は、労働者に、休憩時間を除き1日において8時間、1週間について48時間を超えて、労働させてはならない。
2項
使用者は、就業規則その他により、4週間を平均し1週間の労働時間が48時間を超えない定をした場合においては、その定により前項の規定にかかわらず、特定の日において8時間又は特定の週において48時間を超えて、労働させることができる。
これは昭和22年4月5日に公布された、労働基準法の制定当時の法32条の条文です。
日本国憲法やそれによる国会の成立前ですね。
この第2項が、変形労働時間制の最も古い形で、変形期間は4週間でした。
これ、休日を定める法35条1項と2項の関係に似ているでしょ?
法35条は、1項が1週ごとに1日の休日の原則を定め、2項が4週間に4日の休日の変形を定めていますよね。
法32条も同様に、1項が1週で48時間以内(当時)の原則の労働時間を定め、2項が4週間で1週あたり平均48時間の変形の労働時間を定めていました。
フレックスタイム制や1年単位の変形労働時間制や1週間単位の非定型的変形労働時間制の、3つの変形労働時間制が、新たに定められたのは昭和63年の改正です。
これらは、今まで許されていなかった労働時間の変形を許す「新たな変形労働時間制」ですから、国はこれらについて「労使の協調」を前提としました。
1か月単位の変形労働時間制以外の3つの変形労働時間制について、労使協定が必須なのはこのためで、その内容も細かく法令で決められました。
労使協定は、使用者と労働者代表の合意ですが、労働者代表が合意するに当たって、従業員の誰に適用される制度か分からなければ労働者代表は合意できませんから、これらの労使協定では、適用される労働者の範囲を書かなければならないこととされました。
労使協定の意味は、使用者が就業規則で勝手な定めができないように、労使協定を締結させ、その範囲でしか就業規則を変えることができず、変形を実施できないようにしたのです。
しかし法に定められているのはあくまで「労使協定の要件」であり、就業規則については法は何も言っていません。
就業規則について何も言っていない理由は、先に書いたとおりです。
フレックスタイム制の場合のみ、始業終業の時刻について就業規則に書かなければなりませんが、これは、「始業終業の時刻を労働者に委ねること」それ自体が法89条の絶対的必要記載事項に触れるため、法89条の例外として就業規則に明確に記載しておく必要があるからです。
現在の1か月単位の変形労働時間制も昭和63年改正で制定されましたが、基本的に昭和22年の「法32項2項」を「法32条の2」に独立させ、変形期間を4週間から1か月に変更しただけでした。
そして、この時にはまだ労使協定の規定は導入されていませんでした。
これは、この昭和63年当時、すでに多くの事業場が4週間単位の変形労働時間を導入していたために、これに配慮して、単に4週間の変形期間を、一般的な給与締め期間である1か月にしただけの改正だったのです。
1か月単位の変形労働時間制のみ、就業規則の定めだけで実施できるのは、この昭和22年から続く4週間単位の変形労働時間制の流れをそのまま引き継いでいるからです。
平成11年の改正で、1か月単位の変形労働時間制を「労使協定でも実施できる」ことになりました。
国としては、労使間の協調の観点から、「労使協定がないと実施できない」としたかったはずですが、経営者側の反対からそれができず、なんとか労使協定での変形について条文に組み入れたものの、就業規則のみでの実施は以前のまま生き残り、「労使協調を重んじています」という国の姿勢を見せただけの改正になったと聞いています。
そうであるなら、ここで労使協定の要件を厳しくすれば労使協定による実施が促進しないのは明らかですので、就業規則による実施と条件を同じにしたのだと思われます。
参考になった:11人
poo_zzzzz 2016-09-19 00:27:21
コメントありがとうございます。
ただ、学習方法について等の、文字通りの参考意見は別にして、法令の解釈に関するご質問に対する具体的な回答に対して、「参考になりました」と言われるのが、私にはよくわかりません。
あなたは、実社会で、他人に何かを尋ね、その他人から何か具体的な事実を教わった時に、「参考になりました」と、面と向かっておっしゃるのでしょうか?
理解できました、とか、分かりました、とか、ここがまだ分かりません、とかのように、おっしゃいませんか?
poo_zzzzz 2016-09-19 12:10:45