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うーん、今、口述講義を聴いてみましたが、「拘束する」の部分は、おそらく山川先生が単語を選び間違えた、と、いうか、クチが滑ったのではないかなぁ?

「労使協定の範囲のものが、その事業場全体の労働者を拘束する」とおっしゃっていますが、これは、「労使協定の範囲については、その事業場全体の労働者に免罰の効力を及ぼす」という意味でおっしゃっているのだと思います。

労基法のこの部分で「拘束する」と言われると民事的な拘束力を想起しがちで、質問者の方が「あれ?」と思われる気持ちは分かります。

でも、その部分を聞き流して、写っているテキストを見ながら最後まで聴けば、全体として意味は正しくとれるように思います。

とりあえず、疑問に思われた部分は「労使協定の範囲については、その事業場全体の労働者に免罰の効力を及ぼす」という意味に取っていいのではないかと思います。

口述講義で、この例のような微妙な言葉の使い方を、完全になくすのは難しいと思います。

受講される方が迷うような言葉の使い方は、あってはならないことだ、とは、思います。

しかし私も過去に生講義を10年くらいやっていたことがあり、これは実感ですが、とても難しいです。



また、労使協定と労働協約の関係ですが、




労使協定は、「事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と、使用者との書面による協定」であって、これは、主に労働基準法のある規定について、本来の規定を緩め、本来ならば違法となる行為を適法に行わせる時に締結が求められます。

あくまでも、適正な労使協定の締結を含む、法に定められたプロセスを経れば、その適用を受ける者については、労働基準法の規制が定められた範囲で緩くなる、と、いうのが、その効果ですから、一人一人の労働者に、労使協定の内容に従うよう命じる民事的な効力はありません。

例えば、36協定で1日4時間の時間外労働を締結したとしても、その事業場の労働者が1日12時間働く義務を負うのか?と、いえば、そうではありません。

あくまで、36協定を締結し、それを行政官庁に届け出ることで、1日12時間働かしても、使用者が労働基準法違反を問われない、という、免罰効果を持つのに過ぎません。

使用者が、労働者に、1日12時間働けと命じる(民事的拘束をする)ためには、労働契約や就業規則や労働協約で、時間外労働命令に従うべきことを別に定める必要があります。

そしてこの36協定は、適法に締結されれば、締結当事者が誰であるかに関係なく、その事業場全体の労働者に効力を及ぼします。(注)



労働協約は、労組法14条に「労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによってその効力を生ずる。」とあります。

また、労組法16条に「労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となった部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。」とあって、労働協約の内容は民事的拘束力を持ち、労働者にはその内容に従って労働する義務が生じます。

ですから、36協定の内容が、労働協約に書かれるならば、その労働協約を締結した労働組合の組合員は、その内容に従って労働しなければなりません。

ただ、労働協約は、労組法17条、18条の一般的拘束力の規定が適用される場合を除き、その労働協約を締結した労働組合の組合員にしか効力を及ぼしません。

ですから、全労働者が同一労働組合の組合員である場合を除き、事業場全体で36協定の内容で労働させるには、就業規則の定め又は他の労働協約の締結が必要になります。



ところで・・・

いま、私は「36協定の内容が、労働協約に書かれるならば」と書きました。

山川先生も同じ事をおっしゃってるように思います。

でもね、受験対策として理解するなら、逆の方が解りやすいと思います。

上の労使協定と労働協約の説明をよく見てください。

36協定が使用者と過半数労働組合との間で締結されたとしましょう。

それは労組法14条の「労働組合と使用者との間で労働条件について、書面に作成し、両当事者が署名又は記名押印した書類」になりませんか?

つまり、過半数労働組合との間で締結した36協定は、労組法14条によって「締結した瞬間に自動的に労働協約になってしまう」のです。

これを「労働協約である労使協定」といいます。

受験対策としては、あくまでも36協定は労使協定として締結されるが、それが労組法14条の要件を「自動的に満たしてしまう」ために、労働協約としての扱いを受ける場合がある、と、いう説明の方が、解りやすいように思います。

その場合は、その労働協約となる36協定を締結した労働組合の組合員にとっては36協定かつ労働協約であり、それ自身が民事上の拘束力を持つが、当該組合員ではない労働者にとっては36協定であり、民事力拘束力は、別に労働契約や就業規則の内容に委ねられます、というのは、テキストの説明通りです。



(注)
36協定の必須要件に「業務の種類」があり、業務の種類ごとに延長できる時間等を協定するので、36協定そのものはその事業場全体の労働者に効力を及ぼしますが、労働者全員に同じ効力が及ぶわけではありません。

参考になった:9

poo_zzzzz 2016-09-22 04:44:14

poo_zzzzz様。
山川先生の説明がわかりやすく、テキストと照らし合わせるより一字一句逃さないように、という形で講義を受けていました。
長い講義をされているので間違えてしまう部分もありますよね。「写っているテキストを見ながら最後まで聴けば、全体として意味は正しくとれるように思います。」とおっしゃっていただきようやく上手にできていないなあ、一字一句という形ではなく上手にテキストとかみ合わせていかないと、と痛感いたしました。

また、今回質問させていただき、回答をいただいた後に疑問に思っていただろう点まで教えていただいたような、一気に疑問がなくなりました。
民法、労基法、労組法と違う法律がそれぞれをどうやって作用させているのかがよくわかりました。

労働協約に書かれることにこうした意味合いがあったのか、36協定はこうなるのかとなるほど~という気持ちの連続です。

労使協定、労働協約、36協定の疑問、解消させていただきました。
丁寧なご解説、本当にありがとうございました。

おそらくこの先勉強を進めるに当たり、また疑問が出てくると思いますのでそのときはまたよろしくお願いいたします。

本当にありがとうございました。

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a.yumi  2016-09-22 10:14:58



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