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2つ(又はそれ以上)の事業場で働く労働者が、事業場を移動する際に被災した場合の通勤災害の給付が行われるようになったのは比較的新しく、平成18年からです。

それまでは、二重就労者は、一旦住居に帰らない限り、事業場間の移動は通勤になりませんでした。


第一の事業場から第二の事業場へ移動する際の通勤災害については、それをいずれの事業場の保険関係によって処理するかを考える必要があります。

これについては厚生労働省の平成16年の研究会の文書に「本来、第一の事業場での就労を終えた労働者は自宅に帰るのであり、第二の事業場への移動は、第二の事業場で就労する必要があるために生じるのであるから、この移動時の通勤災害は、第二の事業場の保険関係で処理するのが適当である」という意味の見解があり、現実の保険関係もこれにより処理されています。

つまり、多重就労者が、ある「就業の場所」から次の「就業の場所」への移動する時の通勤災害は「移動先の事業場の通勤災害」(第2の就業の場所の通勤災害)です。

ここまで、いいですか?



さて、通勤災害の学習をする際、一番基本になるのは、「住居と就業の場所との往復」ですね?

しかし、もし仮に個人事業主が、就業の場所である事務所から、住居である自宅に移動する際に交通事故に遭ったとしたら、労災保険の通勤災害になりますか?

なりませんよね?



つまり法7条の「就業の場所」とは、労働者(通勤災害の適用を受ける特別加入者を含む)が、労災保険の適用を受ける「就業の場所」なのです。

法7条においては、単に「就業の場所」で、特別な意味がある一つの法律用語であると理解してください。



ここで、多重就労者が、ある「就業の場所」から次の「就業の場所」への移動する時の通勤災害についての条文を、単に「就業の場所から他の就業の場所への移動」とした場合を考えてみましょう。



第2の「就業の場所」は、上に書いたように通勤災害の労災保険関係が適用される事業場ですから、労働者(通勤災害の適用を受ける特別加入者を含む、以下同じ)が、労災保険の適用を受ける「就業の場所」であることは明らかです。

用語の意味としては、「住居と就業の場所との往復」の「就業の場所」と同じですから問題はありません。



しかし、第1の「就業の場所」が「何を意味するのか」は、改めて考えなければなりません。

もし、この第1「就業の場所」を、本来の日本語としての「就業の場所」と解するなら、例えば自宅以外で喫茶店を営む自営業者が、副業で警備員をしているような場合、自らが経営する喫茶店から警備員として働く場所への移動も通勤災害になります。

これは、例えば、友人の家や旅行先からの通勤を認めていない現状制度を考えると、均衡を欠きます。



また、この第1の「就業の場所」を、「住居と就業の場所との往復」の「就業の場所」と同じ意味と解するなら、第1の「就業の場所」も労災保険の適用事業所でなければならず、被災労働者も労災保険の適用対象者でなければなりません。

そうすると、被災者が、第1の就業の場所において、国家公務員災害補償法や、地方公務員災害補償法の適用を受ける労働者であった場合、通勤災害の適用がないことになります。

兼業禁止かどうかは別の問題として、公務員であっても被用者であり労働者ですから、第1の「就業の場所」には、国家公務員災害補償法や、地方公務員災害補償法の適用を受ける場所も、含めるほうが妥当です。

そこで、その内容を厚生労働省令(具体的にはH18基発0331042通達)に定めることとし、これを法7条では「厚生労働省令で定める就業の場所」としました。

このため、第1の「厚生労働省令で定める就業の場所」には、国家公務員災害補償法や、地方公務員災害補償法の適用を受ける場所が含まれます。
                                                            
このように、「厚生労働省令で定める就業の場所」も、特別な意味がある一つの法律用語であると理解してください。



第1の「厚生労働省令で定める就業の場所」も、第2の「就業の場所」も、それぞれが別の意味を持った法律用語であることが理解できましたか?

そう考えると、逆では通らないのが理解できると思います。

参考になった:20

poo_zzzzz 2016-10-10 22:01:43

POO_ZZZZZさま

とてもご丁寧な解説をいただきありがとうございます。
ご説明よく理解できました。

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take_it_easy  2016-10-11 18:06:59



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