ニックネーム | *** 未ログイン ***

 

回答順に表示     新しい回答から表示     参考になった順に表示

まず、労災保険の適用事業所に労働基準法上の労働者として使用されている者が、労災保険の適用除外である事はあり得ません。

例えば、高校生が、知り合いの近所のおじさんに、明日工場の棚卸しを手伝わないかと言われて、1日だけ放課後2時間だけ3,000円の約束で棚卸しをしている最中に怪我をしても労災事故ですし、サラリーマンが休日の小遣い稼ぎに、本来の勤務先と違う引っ越し業者で引っ越しのアルバイトをしている最中に怪我をしても労災事故です。

これらの工場や引っ越し業者の事業所が、労災保険に関わる労働保険料を計算する場合、これらのアルバイトの賃金はその基礎に含めなければなりません。

また、他社から出向できている社員が、出向先で仕事中に怪我をした場合も出向先の労災事故です。この場合出向元が賃金を支払っていても、その者の労災保険に関わる労働保険料は出向先で計算し、出向先が支払います。



雇用保険に関わる労働保険料の計算は、その適用事業所で雇用される被保険者の分だけです。また、ある年度の4月1日に64歳以上である者の賃金は、その計算結果から控除されます。

例えば週に2日勤務(16時間)のパートは、労災保険の適用は受けますが雇用保険の被保険者にはなりませんので、この者の賃金は労災保険に関わる労働保険料を計算する場合の賃金総額には算入されますが、雇用保険に関わる労働保険料を計算する場合の賃金総額には算入されません。



一元適用事業の場合でも、雇用保険の被保険者とならないアルバイト・パートを雇用している事業の場合は、1枚の申告書の中で、労災保険に関わる労働保険料と雇用保険に関わる労働保険料を別の欄で計算し、合算して申告・納付します。

2元適用事業の場合は、労災保険に関わる労働保険関係と、雇用保険に関わる労働保険関係について、実際は1つの事業を2つの別の事業として処理しますので、申告書・納付書が2枚になります。

つまり、労働保険料の申告納付における一元適用事業と二元適用事業の違いは、実務的には申告書・納付書が1枚で済むか、2枚要るかの違いと、申告先の違いだけで、その計算は同じです。

数人の小規模事業所を除き、アルバイトもパートも使用しない正社員だけの事業所はむしろ少ないですから、一元適用事業の労働保険料の計算が、テキスト通り一元になることはむしろ少なく、一元適用事業であっても、多くの場合は、二元適用事業と同様に、労災保険に関わる労働保険料と雇用保険に関わる労働保険料は、別々に計算します。



蛇足ですが、労災保険を正しく理解するには、労働基準法75条から88条の「無過失責任を問う事業主の業務上災害の補償義務」を理解する必要があります。

例えば労働基準法75条には、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。」とあります。

労働基準法の適用を受ける労働者が、業務上負傷し、又は疾病にかかった場合は、使用者は、使用者の費用で治療しなければならないのです。これは法の強行規定です。

しかし、事業主の中には零細で、この使用者の義務を果たすのが困難な者もいます。また、零細でなくても、死亡事故や高度障害が残る事故で、数千万円の費用が掛かる場合、その費用負担が困難な事業主は多いでしょう。

これらの義務についての費用負担を政府が保険で担保するのが労災保険なのです。

冒頭に書いた「労災保険の適用事業所に労働基準法上の労働者として使用されている者が、労災保険の適用除外である事はあり得ない」の意味がこれで分かりますか?

本来、労働基準法が、被災労働者に対する補償義務として使用者に課している法的義務を担保する保険なのですから、労災保険の適用事業所に労働基準法上の労働者として使用される労働者について、「労災保険が適用されない」はあり得ないのです。



ただし、労働者を使用していても、労災保険の適用されない事業所(暫定任意適用事業所)はあります。
個人で農林水産業を営む事業所の一部ですが、これは事業基盤の脆弱さや、「結い」等の農村部の労働力融通のシステムの存在から、適用の判断が困難な場合が多いとされているためです。

しかし労災保険未加入の暫定任意適用事業所で業務上災害が起き、その被災者が「結果として」労働基準法上の労働者であると判断された場合は、その使用者である事業主は、上記労働基準法上の災害補償を事業主の費用で行わなければなりません。

このような場合、事故後の事業主が申し出れば、政府は労災保険の特例による加入を認め、すでに起きてしまった事故について労災保険の給付をします。
この場合、その給付に掛かった費用の一部は「特別保険料」の形で、通常の保険料に加えて事業主から徴収されます。

参考になった:7

poo_zzzzz 2018-03-08 10:31:22

理解が深まりました。いつもありがとうございます。

投稿内容を修正

1121  2018-03-09 12:27:42

法11条2項が、「「賃金総額」とは、事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額をいう。」とあり、かつ、一元適用事業においては、労災保険に係る労働保険の保険関係と雇用保険に係る労働保険の保険関係を一元的に取り扱うため、お尋ねのような疑問が起きたのだと思います。

でもね、これはあくまで原則であり、理想論なんです。
先にも書いたように、労働者が全員雇用保険の被保険者で、かつその年度の4月1日において64歳未満でないと、一元適用事業における労働保険料の計算の図式は使えません。

このため、テキストには必ず整備省令17条1項の内容がかみ砕いて書いてあるはずです。
これは、さらっと流されてしまう場合が多いのですが、徴収法を現実的に理解するためにはとても重要な部分です。

-------------------------------------------------------
整備省令17条1項
徴収法第39条第1項に規定する事業以外の事業であって、雇用保険法の適用を受けない者又は徴収法第11条の2に規定する高年齢労働者のうち雇用保険法第38条第1項に規定する短期雇用特例被保険者及び同法第43条第1項に規定する日雇労働被保険者以外の者を使用するものについては、当該事業を労災保険に係る保険関係及び雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなして一般保険料の額を算定するものとする。
-------------------------------------------------------

ですから現実には、一元適用事業であっても、労災保険に係る労働保険の保険関係と雇用保険に係る労働保険の保険関係ごとに別個の事業とみなして労働保険料を計算する場合がほとんどなのです。
この場合、労災保険に係る労働保険の保険関係については、短時間パートやアルバイトや出向先の出向社員の賃金等もを含めて賃金総額を計算しますが、雇用保険に係る労働保険の保険関係については、その事業に雇用されている労働者であって雇用保険の被保険者である者の賃金だけで賃金総額を計算します。

逆に、ある一人の労働者を中心に見れば、その者が複数の事業所の掛け持ちで労働している場合、複数の事業所から支払われるその者への賃金は、それぞれの事業所で支払われる賃金の額が、その事業所の労災保険に係る労働保険の保険関係における賃金総額に算入され、その中で雇用保険の被保険者になっている事業所があれば(あっても1か所のはずです)、その事業所で支払われる賃金の額が、その事業所の雇用保険に係る労働保険の保険関係における賃金総額に算入されます。

また、建設業のように、現場作業員は建設現場(有期事業)で主に働き、建設会社の事務所(継続事業)では日報を書いたり作業準備のため1日の1時間だけ働くようなケースの場合、その者の賃金を建設会社の事務所の労災保険に係る労働保険の保険関係における賃金総額に全額算入すると、二重計上になります。

これは、建設現場の労災保険に係る労働保険の保険関係の保険料は、特例により請負金額を基礎として計算される場合が多く、そのコストの中には建設作業員の賃金が含まれると考えられるからです。

このため、多くの建設会社では、事務所の労災保険に係る労働保険の保険関係の賃金総額を見る場合、現場作業員の賃金を一部(例えば8分の1)しか算入しません。
もちろん、事業所の雇用保険に係る労働保険の保険関係における賃金総額を見る場合は(その者が雇用保険被保険者であれば)全額算入します。
建設業は二元適用事業ですから、これらが別々に計算されるのは当然のことですね。



これらのように、徴収法に書かれていることは「原則」であり、実務とは異なります。
ですから、徴収法のルールを、「この場合どうなるんだろう?」と考えるのは、受験対策中はほどほどにされた方がいいと思います。

投稿内容を修正

参考になった:4

poo_zzzzz 2018-03-09 21:27:26



PAGE TOP