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労災保険法/遺族補償年金
zeekzion 2018-11-19 11:13:32
労災保険法16条の5の1項において
「1年以上その所在が明らかでない場合には、同順位者の申請によりその支給を停止する」
とありますが、その1年以上の間に、所在が明らかでない者の銀行口座に振り込まれた遺族補償年金があると思いますが、仮にその方がそのまま行方がわからなくなった場合は、支給された分の遺族補償年金をどう扱うのか教えてください
よろしくおねがいします。
法16条の5により、同順位者があるときは同順位者の申請により、同順位者がなくて後順位者があるときは次順位者の申請により、所在不明の間遺族補償年金は支給停止されます。
この支給停止は、所在不明となったときにさかのぼり、その月の翌月分から支給が停止されます(昭和41年1月31日基発73号)ので、所在不明となった月の翌月分以降の年金がすでに支払われていた場合は、その額を政府に返還しなければなりません。
しかし、返還といっても、当人が所在不明なのですから、どのような手続きでこれを行うのか?の問題があります。
この場合に、同順位者等に支払われるべき年金について、法12条の内払や、法12条の2の過誤払による返還金債権への充当が行われるのか?と、いうと、内払は同一の受給権者に対して行われるものであり、過誤払による返還金債権への充当は受給権者の死亡に伴う措置であるため、どうやらどちらも適用されないようです。
また、遺族補償年金の受給権者が複数の場合、原則として代表受領となるため、所在不明になった者に対して支払われた年金であって支給停止期間に係るものを、同順位者が口座から自由に引き出せる、と、いうことも考えられますので、そのような場合の金銭の保全をどうするのか?と、いったことや、同順位者が不正利得した場合の対応をどうするのか、と、いう問題もありそうです。
こういった手続等については、私も今のところ実務で扱ったことがないので、申し訳ないですがよく分からない部分です。
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poo_zzzzz 2018-11-19 23:00:01
細かいところまで答えていただきありがとうございます。
poo-zzzzzさんが実務で扱ったことがないということは、僕が重箱の隅をつつきすぎですね。
ということは、試験対策上必要ではないと思うので、先に進みます。
ありがとうございました。
zeekzion 2018-11-20 00:51:16
そうですねぇ。
開業して20年になりますが、実務での遭遇確率と、受験対策としての重要さは全く別ですなのですけどね。
労災事故による給付は日常仕事で扱っていますが、受給開始後の方から仕事の相談を受けることはあまりありません。
お尋ねの部分で受験対策として重要なのは、
■ 同順位者(ない場合は次順位者)の申請による支給停止であること。受給の継続に必要な書類が提出されない場合で所在不明が明らかであっても、申請がない限りは支給差止にとどまること。
■ 所在不明となった月の翌月に遡って支給停止されること。
■ 支給停止であるから、その期間の年金は、支給停止解除後も支給されないこと。
■ 支給停止の解除は、所在不明とされた本人の申請によること。所在が明らかになっても、申請がなければ支給停止解除されないこと。
■ この支給停止には法16条の3第3項の規定が準用(法16条の5第3項)され、遺族の数の減として年金額が改定されること。
くらいですかねぇ・・・
法16条の5の規定は遺族補償年金の支給停止を定めていますが、これを保険者側からの支給停止の規定と理解すると、本質を誤ります。
法16条の5の支給停止は遺族の数の減として取り扱われるため、遺族の数が減ることで年金の額は全体では減りますが、受給権者一人あたりの額は増えます。
また、法律上の遺族補償年金の額は、別表第一に規定する額を遺族の人数で除して得た額(つまり受給権者一人あたりの額)として定まります(法16条の3第2項)ので、これ「増額改定」です(笑)
受給権者が所在不明の場合の原則的な取り扱いは支給差止であり、年金額は改定されませんので、これを放置すると他の受給権者(または次順位者)にとって不利益です。
つまり、法16条の5の本質は、同順位者(ない場合は次順位者)の権利を保護するための規定なのです。
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poo_zzzzz 2018-11-20 08:55:55
試験対策上必要な事項をまとめていただき、大変助かります。
同順位者(次順位者)からの申請がないと、支給差し止めの状態が続くということですね。
申請があって初めて、遡及的に支給停止になるということですね。
減額改定になりますが、申請者にとっては増額となる意味理解できます。
詳しい説明、ありがとうございました。
zeekzion 2018-11-20 11:43:21
「減額改定」ではありません。
遺族補償年金の額の受験勉強は、どうしても年金の総額に目が行ってしまい、かつ、過去の出題もそれで問題はないのですが、
■ 労働者災害補償保険法16条の3第2項
遺族補償年金を受ける権利を有する者が二人以上あるときは、遺族補償年金の額は、前項の規定にかかわらず、別表第一に規定する額をその人数で除して得た額とする。
上記のように、遺族補償年金の受給権者が複数である場合は、それぞれの規定で計算された額を、受給権者の額で除して得た、受給権者一人あたりの額が、法律上の「遺族補償年金」の額になります。
このため、受給権者が2人以上の場合に、その数が減ると、法律上の「遺族補償年金」の額は「増額改定」になるのです。
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poo_zzzzz 2018-11-21 00:21:22