ニックネーム | *** 未ログイン ***
労働基準法/年次有給休暇の素朴な疑問
BIRSUKE 2018-12-29 18:46:03
Aさんは退職間近というケースです。繁忙期で使用者が時季変更権を行使しようにも行使出来ない場合は、どうなりますか?
例えば、残り20日、持ち日数15という場面です。ここで、全て有給休暇で処理したいが、20日のうち、10日はどうして休めないケースです。
疑問に思いました。ご教示願います。
時季変更権は、文字通り年次有給休暇の取得時季を変更する権利ですから、退職等で時季変更の余地が無い場合は行使できません。
時季変更権の行使ができない場合、事業の正常な運営を妨げる場合であっても、労働者の時季指定通りの労働日について、労働の義務が消滅します。
追記
上記についての通達を転記しておきます。(昭和49年1月11日基収5554号)
【問】
駐留軍従業員の年次休暇については、1月1日を基準として暦年を単位として整理している場合に、15年間継続勤務し、かつ、前年全労働日の8割以上勤務した労働者の場合、労働基準法によれば20日の年次休暇の権利を有するが、その者が、当該年の1月20日付で解雇される場合について、使用者は通常の場合と同様の時季変更権の行使ができるか。
【答】
設問の事例については、当該20日間の年次有給休暇の権利が労働基準法に基づくものである限り、当該労働者の解雇予定日をこえての時季変更は行えないものと解する。
参考になった:1人
poo_zzzzz 2018-12-30 11:37:10
早速のご回答ありがとうございます。
この場合の時期変更権が認められない。即ち、正常な運営を妨げる場合でも、有給休暇取得を認めざるを得ないということですか?
この日だけは休まれては困る!なんて場合も、この場合は認めざるを得ないのでしょうか??
BIRSUKE 2018-12-30 15:02:33
質問された方は、大きな勘違いをしておられます。
使用者には、労働者の年次有給休暇の取得を「拒む」権利がないことはもちろんですが、使用者には、労働者の年次有給休暇の取得を「認める」権利すらありません。
また、「時期変更権が認められない」のではありません。
質問された方が尋ねられている条件の場合、「時季変更の余地がない」(他の時季に年次有給休暇を与えることができる可能性がない)のです。
年次有給休暇の権利は、法律上、形成権と呼ばれる権利に分類されると考えられており、債権者(年次有給休暇の場合は労働者)の意思表示だけで法律効果が生じます。
債務者(年次有給休暇の場合は使用者)の承認という概念がありませんから、労働者が時季指定したその瞬間に、使用者の意思と関係なく、指定された日の労働義務が消滅します。
ただし、労働基準法はこの権利行使の解除条件として使用者の時季変更権を定めていて、使用者が時季変更権を「適法に」行使する場合は、労働者による時季指定の法律効果が発生しません。
つまり、労働者が年次有給休暇の時季指定をしたときは、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる事由が客観的に見て存在し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権の行使をしないかぎり、労働者の時季指定だけで、その日の労働義務は消滅する、と、いうことです。
これについて、昭和48年の最高裁判決は「すなわち、これを端的にいえば、休暇の時季指定の効果は、使用者の適法な時季変更権の行使を解除条件として発生するのであって、年次休暇の成立要件として、労働者による『休暇の請求』や、これに対する使用者の『承認』の観念を容れる余地はないものといわなければならない。」と述べています。
このため、労働者は使用者に対し年次有給休暇の取得を請求する必要すらなく、単に年次有給休暇を取得する時季を指定するだけでよいのです。
使用者には年次有給休暇について許可や承認を与える権限はなく、客観的に見て正当な理由がある適法な時季変更権の行使を使用者がしない限り、労働者の時季指定だけで年次有給休暇は成立し、時季指定日の労働義務が消滅します。
時季変更権については、この機会に、法39条3項但し書きの文言を再確認してください。
そこには「他の時季にこれを与えることができる」と、あるでしょう?
先の回答でも述べたように、また、法39条3項但し書きの文言を見れば分かるように、時季変更権は、労働者の年次有給休暇の時季指定に対し、使用者が「他の時季にこれを与えることができる」という権利に過ぎません。
労働者の年次有給休暇の取得を、使用者が拒むことができる定めはありません。
そして、時季変更権は、可能性であってもあくまで時季変更の余地があるという前提でしか行使できない権利のため、労働者の退職日が迫っており、退職日までの全ての労働日について時季指定された場合のように、「他の時季」が存在し得ない場合は時季変更権の行使は不可能であり、結果として労働者の時季指定通りに労働義務は消滅します。
何度も書きますが、使用者が認める、とか、認めない、というレベルの話ではないことは、年次有給休暇の法的性格にかかわることですから、しっかり理解してください。
参考になった:3人
poo_zzzzz 2018-12-30 21:50:52
お忙しい中、私の質問のためにお時間を割いてくださったにもかかわらず、大変失礼いたしました。
申し訳ございません。身の置き場もございません。
心のこもった、暖かいご回答ありがとうございます。
とても詳しく、根拠もお示しくださって、わかりやすいです。
有給休暇の法律要件は労働者の時期指定のみで足りる。
使用者の時季変更権は例外的なもので、時期を変更する権利に過ぎず、他の時季が存在しない場合、行使し得ない(39②但し書)。
そもそも、債務者の承認は不要である。また、認める権利すら有しない。
こんな理解でよろしいでしょうか。
この度の件、重ねて、お詫び申し上げます。
BIRSUKE 2019-01-08 17:52:41
時季変更権が例外とは思いませんが、
① 客観的に合理的な理由のある適法な時季変更権の行使がある場合を除き、労働者の時季指定のみで当該日の当該労働者の労働義務は消滅する。
② 年次有給休暇の時季指定は「請求」ではないため、使用者の「承認」の概念はない。当然のことながら「認めざるを得ないのでしょうか?」という質問は当を得ていない。
と、いうことです。
もともと、年次有給休暇は労働者の権利なのですから、使用者は、労働者が年次有給休暇を消化できるように、適切な人員配置をし、適切な業務配分をする潜在的な義務を負っています。
そういった配慮を使用者が行ってもなお、特別な業務がある日に、いなければその日の業務の遂行が困難になるような労働者から年次有給休暇の時季指定をされた場合に時季変更権が行使できる、ということです。
労働者が退職を届け出て、退職日までに時季変更可能な日がない、というのは、そういった法の予定を超えた事態です。
従って、これに対して使用者は手の打ちようがないのですが、あえて言えば、労務管理を考えている企業は、そういった事態のリスクを減らすよう、年次有給休暇の残日数を管理して、普段から適切な消化を促して、過大な残日数が残らないように留意しています。
あなたは、どうしても出勤してもらわなくては困るのに、手も打てないのか?というお気持ちで質問されたのでしょうが、「どうしても出勤してもらわなくては困る」ような事態をたびたび起こすような場合は、人員配置や業務配分を含めた労務管理に問題がある可能性が高いのです。
第一、インフルエンザ等の感染症の場合に「どうしても出勤してもらわなくては困る」という主張をしますか?
そちらはすんなり認めることができるのに、年次有給休暇について「おかしいなぁ」と思うなら、やはり本質的には労務管理の考え方の問題です。
参考になった:2人
poo_zzzzz 2019-01-08 18:45:30
早速のご回答ありがとうございます。
そもそも、債権者は時季指定だけしたら、当然に労働の義務は消滅する。よって、債務者の承認なんて概念がない。
したがって、認めざるを得ないのか?という質問は、的を得ていない。
常日頃から、使用者は労働者が権利行使できるような人員配置をする潜在的な義務を負っている。その上で、どうしようもないと時は、時季変更権は行使できる。
常日頃からの人員配置が重要で、そもそも、質問のような事態が発生するという事は、労務管理が不充分。
上記のように理解しました。
本当に、ちゃんと理解できていない事が悔しいです。
先生の解説は本当分かりやすいです。お忙しい中、いつも、本当にありがとうございます。
確かに、インフルエンザなら良くて、なぜ、有給休暇はダメなのか?といつ事になりますね。
言われて、そのように思いました。
BIRSUKE 2019-01-08 22:17:41
根拠はなく、私の直感ですが、まだうまく消化されていないように思います。
今はこれで良いので、結果をあせらず、「あなた自身の言葉で」考えられるようになってください。
参考になった:1人
poo_zzzzz 2019-01-09 02:15:17