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雇用保険法/出頭の期限
amamy 2019-01-17 22:16:12
よろしくお願いします。
基本手当を受給しようとしている人の、失業の認定のための出頭期限について確認させてください。
高年齢求職者給付金の出頭については条文に「離職の日の翌日から起算して1年を経過する日までに」とあります。
ここの説明のところで山川先生が「一般の方と同じですね」とおっしゃられていましたが、15条2項には同様の文言が入っていません。
受給期間が原則1年だから、結果的に同じになるという意味かしら、とは思ったのですが、その理解でいいのでしょうか。
(そうだとすると、所定給付日数が330日の人は出頭期限が1年+30日となると考えています。)
理解の間違いや見落としなどがあればご指摘ください。
(一般の)受給資格者は、受給期間があり、原則として1年間の受給期間内に受給資格の決定を受け、その後原則として28日に1回失業の認定を受けて、失業の認定を受けた日分の基本手当が支給されます。
定期的に複数回の失業の認定を受けるため、「期限」ではなく「期間」なのです。
そして、受給期間が経過した場合や、受給期間内であっても所定給付日数の残日数が無くなった場合は、原則としてその時点で受給資格者ではなくなります。
受給期間内に出頭しないと給付(基本手当)が受けられない点、出頭して受給資格の決定を受けても、タイミングが遅いと所定の日数分全部を受けることができず、受給期間の最後の日までの間にある日数分しか給付の対象にならない点、離職日の翌日から1年間が給付の対象の期間となる点、期間と期限の違いはあっても、高年齢受給資格者と同じでしょう?
私自身、受験対策校の講師をしていた時に「期間と期限の違いはあるが、基本的に基本手当の受給期間と同じ」という説明をしていたような気がします。
ただ、高年齢受給資格者の場合、受給期限を先送りする規定がないんですね。
これは、日額に乗ぜられる日数が少なく、かつ、1回限りの失業の認定で全額支給されることからそうなっています。
(一般の)受給資格者の場合は、所定給付日数が330日、360日の場合は受給期間が1年を超えますが、これは所定給付日数が多く受給期間が1年では足りないから、という理由に過ぎません。
もし、高年齢求職者給付金の給付日数に330日があれば、同じように受給期限は先送りになるでしょう。
つまり、おっしゃっている部分は「所定給付日数が多いことを理由に」例外的に起きる現象であって、基本的な受給期間と、受給期限に、考え方の差がある訳ではないように思います。
また、疾病や給付制限の場合にも受給期間は先送りされる場合がありますが、比較的多い日数の給付を複数回の失業の認定で受ける(一般の)受給資格者だから設けられている、これも例外の制度であって、日額に乗ぜられる日数が少なく、かつ、1回限りの失業の認定で全額支給される高年齢求職者給付金では、そのような制度がありません。
基本的な受給期間と、受給期限は共に1年で、基本的な考え方は上に書いたように似ていますから、日数の違い等から来る例外の規定がないからという理由で、同じではない、と、言うほどのことでは無いと思います。
異なる制度の基本的な考え方の共通点は共通点で把握し、例外的な違いは違いで把握すればよく、例外の部分を捉えて、ここが違うから同じではない、と考えていたら全体像が把握しにくくなるように思いますよ。
蛇足ですが、昭和の時代まで、雇用保険の(一般)被保険者には年齢制限がありませんでした。
このため、例えば67歳で離職しても、基本手当が受けられたのです。
昭和59年の改正で、日雇労働被保険者と短期雇用特例被保険者を除き、65歳に達する日以降は新たに被保険者としないこととし、65歳に達する日の前日から引き続き雇用されている者については、(一般)被保険者と別に高年齢継続被保険者制度を新設して、基本手当ではなく高年齢求職者給付金を支給することとし、給付内容を引き下げ、かつ1回限りの失業の認定で全額支給する、という形になりました。
つまり、高年齢被保険者制度は、昭和59年改正により新設された高年齢継続被保険者制度が元であり、この改正で変更されたのは、
・基本手当ではなく高年齢求職者給付金を支給する
・給付内容を引き下げる
・1回限りの失業の認定で全額支給する
・65歳に達する日が属する保険年度からは保険料を徴収しない
ということであって、この変更に適した形で基本手当とは別の規定になっており、給付も1回限りだから期間ではなく期限だよ、ということなのですが、もともと基本手当から別れたものですから、考え方の根っこは基本手当と同じなんですよ。
さらに平成29年の改正で、65歳以降に新たに雇用される場合でも被保険者になることになりましたが、昭和59年以前の状態に戻すのではなく、高年齢継続被保険者を高年齢被保険者と名称変更し、高年齢求職者給付金の内容はそのままで、保険料は徴収することとしました。ただし経過措置として保険料の徴収は平成31年度までは行われません。
さらに蛇足ですが、短期雇用特例被保険者の特例一時金の場合は、高度成長期に日本の産業を支えた地方からの出稼ぎ労働者を強く意識した給付で、季節雇用が前提となるので被保険者期間のカウントは甘く、受給期限は短くなっていて、基本手当とは趣が違います。
季節労働者は、元々は春から秋は地方で農作業をし、冬に出稼ぎ労働者になる、というパターンが想定されていて、つまり「失業しない」のです(笑)
このため季節労働者は被保険者としない、というのが元々の考え方だったのですが、産業構造における出稼ぎ労働者の重要性の増大から、昭和30年代の失業保険で雇用期間が4か月を超えることを条件に被保険者とすることとしました。
その後、制度創設時には想定されていなかった夏期の出稼ぎ労働者の増加の問題等もあり、短期雇用特例被保険者制度の是非は何回か議論されているのですが、改正を重ねつつ継続しています。
短期雇用特例被保険者と日雇労働被保険者は、(一般)被保険者と比較しても歴史的・政策的な色彩が強い制度なので、細かくみていくと現在の失業等給付の基本的な考え方と合わない部分が出てきます。
参考になった:6人
poo_zzzzz 2019-01-18 10:22:56
poo_zzzzz先生
深夜、そして追記で詳しい解説と、お忙しい中をぬってのご回答ありがとうございました。
なかなかゆっくり考える時間が取れず、遅くなってしまいました。
すみません。
基本手当支給までの流れ、またそれが高年齢求職者給付金の制度と似ている点、納得しながら読めました。
期間と期限の言葉の使い方も、しっくりきました。
その上で、私が疑問に思っていたのは、
離職票を手にした離職者が、「いつまでに」管轄ハローワークに行かなければならないのか、という点でした。
高年齢求職者給付金の条文には期限が書かれているのに、基本手当の方には書かれておらず、受給期間内ということになるのかなぁ、と。
そう考えると、その受付期限が人によって違うことに違和感を持ちました。
私のイメージでは、ハローワークに行くことで 受給資格が決定されて「あなたの給付日数は◯日ですよ」と案内されることで、自分の受給期間を把握できる、といった流れになるかと思っていたもので。
でも、今回のご回答で、受給期間はあらかじめ決まっているものだから、その期間内に、という捉え方なのだとわかりました。
そう考えると、妊娠・出産などで受給期間が延長されて4年になる場合でも、ひとまずの手続きなどがいらない点すんなり理解できます。逆に、60歳以上の定年到達で延長する場合の2箇月以内に申出というのが例外なのですね。(こちらの方が自然な流れに思えていたのです。)
高年齢被保険者制度の変遷、短期雇用特例被保険者制度の社会的背景、ともに興味深く読ませていただきました。
もし、日雇労働被保険者の特例給付の趣旨もご存知でしたら教えていただけませんか。
基本手当の出し方と似ているところもあり、日雇労働をやめる方向で求職活動をする人のための制度かしらと想像しているのですが、いかがでしょうか。
よろしくお願いいたします。
amamy 2019-01-18 22:55:44
> 離職票を手にした離職者が、「いつまでに」管轄ハローワークに行かなければならないのか、という点でした。
受給期間であっても、受給期限であっても、出頭が遅れ、期間や期限の最後の日までの日数が、その者に本来給付されうる日数未満になれば、本来受け取りうる手当が受け取れなくなります。
この点で受給期間や受給期限の性格に違いは無く、受給期限だからと言って、ぎりぎりに出頭して全額受け取れるわけではありません。
つまり、国の考え方としては、離職して求職活動する気があるなら、すぐに出頭しなさい、ということです。もし出頭が遅れ、期限や期間内の日数が少なくなっていて、本来給付されうる日数の手当が受け取れなくても、それは離職者の責任、という考え方です。
ですので「受給期限」も、「この日までに出頭したらいいよ」という意味での「期限」ではありません。
ですから、私に言わせれば「期限」としたほうに違和感があります。
受給可能な期間があって、その受給可能な期間内に出頭し、資格の決定を受け、その決定日から先の日で期間内の日数が受給可能、という点で、基本手当も高年齢求職者給付金も同じなんですから、高年齢求職者給付金も「期間」でいいと思うんです。
> 60歳以上の定年到達で延長する場合の2箇月以内に申出というのが例外なのですね。
平成29年まではね、疾病や妊娠等で求職活動ができない場合は、引き続き30日以上職業に就くことができないことが明らかになってから1か月以内に職安所長に申出だったんです。申出の期限は結局該当の事由があってから概ね2か月だったんですよ。
つまり定年退職等で「ひとまず求職活動をせず、夫婦で世界一周クルーズでも行ってこようか」なんていう場合に受給期間をその期間だけ先送りしたい場合の申出と、申出の期限の「おしりは一緒」だったんです。
疾病や妊娠等で離職した者は、すぐに求職活動できないことは自分自身がよく分かっていますよね?
しかし、受給期間の延長制度を知らなければ、「基本手当もらえないね」で、職安に相談せずに諦めてしまうことになります。
制度を知らず、また職安にも相談しないのは離職者の責任ですが、例えばけがで入院して動けない離職者やその家族が「そうそう、雇用保険がね」という発想で2か月以内に動けるか、というと疑問があります。
実際に法令に定められた期間に申出ができず不利益を被る例が多くあったので、疾病や出産による場合の申出期間の規定を緩和したのですが、定年等の離職で求職しない場合の申出期限は緩和されませんでした。
このために定年等の方が例外に見えてしまいます。
気をつけて欲しいのは、疾病や妊娠等の期間も、定年等の離職で求職活動をしない期間も、労働の意思および能力のどちらかが欠けていますから、失業していません。
基本手当を「受給不可能な期間」です。
つまり、これらによる受給期間の延長は、実質的には延長ではありません。単なる「受給可能な時期の先送り」です。
日雇労働求職者給付金について
高度成長期に、土木・建設・港湾運送といった産業は大幅に伸びたのですが、こういった産業は、事業主から見ると、労働力需要の上がり下がりが非常に激しい産業です。
これらの産業は、非常に多くの労働力を使います。しかも、高度成長期ですから、産業全体としてはだいたい常に労働力は要るのです。
しかし、それを使うのは(使えるのは)、土木工事や建築工事を受注し、入出港の船舶の荷受けを請け負った業者で、受注競争に負けた業者は、「一定の期間労働力は要らない」のですね。
次に受注競争に勝って工事や荷受けをする時に、労働力が要るのです。
そういう産業の事業主が、多数の固定的に労働力を確保したくない、のは理解できますよね?
あまり言いたくないですが、いつでも雇える流動的な労働力が、狭い場所に固まっていてくれたら都合がいいのです。
国が何かした、とかそういうことではなく、そういった産業構造であるため、そういった事業主に日々雇い入れられる労働者が、自然に狭い場所に集中する、という状況が起きます。
その方たちは、毎朝、仕事を探しに出るのですが、その日の仕事の募集にあぶれたら、その日は失業です。
また、これは実際に日雇労働をした方に聞いたのですが、身体が厳しくて2日に1回くらいしか働けないんだそうです。
そのような方たちは資産もあまりないですから、「今日はいいや、のんびりしよう」と構える金銭的余裕がありません。
つまり、そういった方たちの日々の失業を救済しないと、地域社会がおかしくなってしまうのです。
でも、考えてみてください。
求職者給付が基本的に求めるのは、安定的な雇用です。
ですから、一定期間の雇用と、その間の賃金を基準に、基本手当等の額と所定給付日数が決まります。頻繁に入退職を繰り返すと受給資格すら得られません。
そのような制度の中に、毎月働いていて、しかし毎日働くのではない人に対し「今日は仕事がないから」という理由でその日の分の給付をする、というのは特殊でしょう?
これらは、高度成長期に産業が必要とした上のような労働力を、社会的に守る必要性からつくられた政策的な給付なのです。
参考になった:5人
poo_zzzzz 2019-01-19 09:44:47
poo_zzzzz先生
ご回答ありがとうございました。
受給期間についての考え方、よくわかりました。
期間と期限についても、捉え方は変わらない、と確認しました。高年齢求職者給付金と短期雇用特例被保険者の特例一時金では受給できるスパンが病気などで延長されることがなく、また給付日数も一律であることから条文に「◯◯を経過する日までに」と明記されているだけと考えます。
疾病や出産等の場合の延長についても納得できました。実質延長ではなく「単なる受給可能な時期の先送り」とのご説明がストンと落ちました。
定年等の方が例外に見えてしまう、もなるほどと思いました。
日雇労働求職者給付金についてもご解説くださり、ありがとうございました。
日雇さんの街みたいな地域があるのはそういう事情だったのですね。
その方たちの救済と地域社会を支えるための普通給付、
またその方たちが安定的な仕事を求めて求職活動ができるように設けた特例給付、
と理解しました。
講義では普通給付しか扱われていなくて、
普通給付が日雇い労働を続けていくことを前提にとてもうまくできているのはわかったのですが、一方で日雇い生活を根付かせてしまっていいの?という疑問もありました。
これが、高度成長期の政策的要請ということで、納得。特例給付はあとからできた制度なのかなと思ったりしました。
ありがとうございました。
amamy 2019-01-19 13:26:23
特例給付はね、巨大ダムやハイウェイの建設で人里離れた山奥の工事現場で働く労働者は、現場近くの飯場で寝泊まりして働くため、一定期間失業しないんですよ。
しかし、工事が終われば、次の工事まで失業なので、そのような日雇労働者を対象にするのが、特例給付です。
参考になった:3人
poo_zzzzz 2019-01-19 13:37:25
poo_zzzzz先生
そうなのですか、、、
特例給付はそのような仕事内容に合わせての制度だったのですね。
私のイメージとは随分違いました。
だから日雇労働求職者給付金全体としてご説明してくださっていたのですね。
たしかに特殊です。
よくわかりました。
ありがとうございました。
amamy 2019-01-19 13:48:15