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例えば、19歳から61歳まで海外居住で、その間国民年金に任意加入しなかった日本人が、61歳で国内の会社で働き出し、64歳まで4年間厚生年金の被保険者であったものを考えてみましょう。
・ この者の20歳から60歳までの40年間は、全て合算対象期間です。
・ この者の61歳から64歳までの4年間は、厚生年金保険の被保険者期間ですが、老齢基礎年金の支給要件を見る場合は保険料納付済期間にならず合算対象期間になります。

この者には4年間の厚生年金保険の被保険者期間と44年間の合算対象期間がありますから、厚年法42条を満たし65歳で老齢厚生年金の受給権が発生します。しかし、国民年金においてはこの者には44年間の合算対象期間しかないため、国年法26条の要件を満たしませんから65歳になっても老齢基礎年金の受給権は発生しません。この場合の老齢基礎年金に相当する額は、老齢厚生年金の経過的加算額として支給されます。

ですので、「老齢厚生年金の受給権を取得すると同時に老齢基礎年金の受給権も取得している」という考えは誤っています。



ただ、「付加年金」を論じる場合、「付加保険料を納めている」(つまり、第1号被保険者期間又は65歳未満の任意加入被保険者期間に通常の保険料と共に付加保険料を支払っている)ことが前提のため、保険料納付済期間が生じますから、上記のような例は考えられません。

ですので、「事実関係」でいうなら、本則上は「付加保険料に係る保険料納付済期間を有する者に老齢厚生年金の受給権が生じた場合は付加年金が支給される」は「事実」です。
しかし、今現在、法附則の経過措置としていわゆる特別支給の老齢厚生年金があり、これも法律上は「老齢厚生年金」ですから、法附則も含めると「事実」ですらなくなります。

さらにいうと、社労士試験は事実関係を問う応用的な問題と、法の規定を問う基礎的な問題があります。
どちらかというと基礎的な問題の方が多く、複数の法令の関係をかみ合わせて「事実がどうなるか」を問う問題は少なく、かつ、そのような問題は、「何を問おうとしているのか」が分かるようなしつらえになっているのが普通です。

大切なのは「題意」です。作問した者が、何を問おうとしているのかを読み取らなければならず、それに対して「こう考えたらこうなるじゃないか?」と言ったところで何も始まりません。

国民年金法43条には「付加年金は、第87条の2第1項の規定による保険料に係る保険料納付済期間を有する者が老齢基礎年金の受給権を取得したときに、その者に支給する。」とあります。

法の規定がそうなのですから、例えばシンプルに「付加保険料に係る保険料納付済期間を有する者に老齢厚生年金の受給権が生じたときに、その者に付加年金が支給される」という設問であったとするなら、これは「法の規定の内容を尋ねている」設問で、「老齢基礎年金と老齢厚生年金を入れ替えたひっかけ?」と考えた方が無難な肢であり、本試験で出るとするならグレーな肢として保留し、題意を考えた上で他の4肢と比較し、事実関係を問うていると考えるべき要素がある、とか、誤を選ぶ問で他に明らかな誤がある、とか、正を選ぶ問で他に正がない、とか、なにか事情が無い限り、どちらかといえば誤と判断する肢といって良いと思います。

このため、前後を見ないとなんとも言えませんが「付加年金は老齢基礎年金の受給権を取得したときに支給され、老齢厚生年金の受給権を取得したときに支給されるとはいえない」という記述は、事実関係は別にして、「受験対策上知っておくべきことである」のではないかと思います。

テキストや問題集は受験のための武器です。ですから、その記述も、受験のために役立つかどうかで良否を判断しなければなりません。

参考になった:7

poo_zzzzz 2019-03-09 18:46:20

わかりやすく丁寧に解説いただいて本当に感謝します。
受験を意識して学んでいきたいと思います。
ありがとうございました。

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masa.s  2019-03-09 19:38:08



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