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労働基準法/前借金相殺の禁止について
yarufu 2019-05-10 14:34:45
質問させていただきます。前借金相殺について、テキストP42に、相殺の同意又は合意(相殺契約)によって相殺することも本条違反となるとあります。
↓なお・・・以下に □労働者からの相殺契約のような形式がとられていても・・・とありますが、そもそも相殺契約による相殺は本条違反であるのなら、このような書き方は正しくないような気がします。
仮に、相殺契約が認められるとすれば、相殺契約のような形式がとられていても、実質的にみて労働を強制していると認められるときは、5条に違反する。というのならわかるのですが。
書き方がわかりずらくてすいません。わかる方よろしくお願いします。
テキストを見ていないので、周辺に何が書かれているのかが解らないのですが・・・
労働者からの相殺の申出や、労働者からの申出による相殺契約による相殺は、それが真正に労働者の意思であり、一定の要件を満たしていれば法17条違反にならない場合がありますから、「労働者からの相殺契約のような形式がとられていても」という仮定に問題はありませんよ。
テキストにS23.10.15基発第1510号、S23.10.23基収第3633号、S63.3.14基発第150号通達は載っていませんか? そこには「使用者が労働組合との労働協約の締結あるいは労働者からの申出に基づき・・・その後この貸付金を賃金より分割控除する場合においても」とありませんか?
労働協約は使用者と労働組合の契約ですから、そこに賃金からの控除があるなら、これは相殺契約を含む労働協約ですよ。
そのあたり、読まずに、または見落として書いていませんか?
法の趣旨を説明します。
法17条が禁じている「相殺」は、「使用者」が「前借金その他労働することを条件とする前貸の債権」と「賃金」を相殺することです。
つまり、禁じられているのは、基本的には使用者側からの相殺のみであり、また、「前借金その他労働することを条件とする前貸の債権」との相殺です。
しかし、労働者が負う債務が、例えば戦前まで多くあったように、親が高額の金銭を受け取り、その代償として子が一定期間働かされるような「前借金」であったり、あるいは債務を完済するまでは退職できないような性格を持つ「労働することを条件とする前貸の債権」である場合は、労働者にその意思がなくても実際にはそうせざるを得ない事情がある場合があり、単に労働者からの申出である、または双方合意であるならばOKとは言えない事情があります。
ちなみに「相殺」と「相殺契約」は法の解釈としては別ですが、厚生労働省労働基準局編のコンメンタール(逐条解説)は、使用者からの相殺が違法で相殺契約が本条に抵触しないのであれば、従来行われていた相殺の多くが慣用的な文言の相殺契約によっていたことから、本条の目的が達せられないこととなりるため、本条の相殺には相殺契約を含むものと解すべきである、という趣旨のことを述べていて、仮に相殺契約であっても上記と同じです。
つまり、相殺は、合意や同意があっても、相殺契約であっても、法17条の解釈においては同じように扱われ、その内容から、それが真正に労働者の意思(希望と言った方がぴったりかも知れません)ではなく、実質的に使用者がそれらをさせていると判断される場合は法17条違反です。
逆に、使用者からの相殺ではなく、労働者が相殺を希望して相殺や相殺契約の申出をしていることが客観的に明らかであり、さらに「前借金その他労働することを条件とする前貸の債権」との相殺ではないことも明らかであれば、法17条違反にならない場合があります。
S23.10.15基発第1510号、S23.10.23基収第3633号、S63.3.14基発第150号通達は、「使用者が労働組合との労働協約の締結あるいは労働者からの申出に基づき、生活必需品の購入等のための生活資金を貸し付け、その後この貸付金を賃金より分割控除する場合においても、貸付の原因、期間、金額、金利の有無等を総合的に判断して労働することが条件となっていないことが極めて明白な場合には、本条の規定は適用されない。」としています。
また、S22年9月13日発基17号、S33年2月13日基発90号は、「本条の規定は、金銭貸借関係と労働関係とを完全に分離し金銭貸借関係に基く身分的拘束関係の発生を防止するのがその趣旨であるから、労働者が使用者から人的信用に基いて受ける金融、弁済期の繰上げ等で明らかに身分的拘束を伴わないものは、労働することを条件とする債権には含まれないこと。」としていています。
このように、貸付の原因、期間、金額、金利の有無等のような内容を総合的に判断して、労働することが条件となっていないことが明らかな場合は、労働者からの相殺の申出や、労働者からの申出による相殺契約による相殺は、法17条違反にならない場合があります。
ただし、この場合でも「賃金の全額払い」の規定がありますから、これをクリアしないと法24条違反になります。
さて、相殺について労働者の同意があっても、労働者が相殺を申し出た形式になっていても、相殺契約になっていても、その内容から、実質的に使用者側からの相殺と見るべき相殺であれば法17条違反ですから、テキストに「相殺の同意又は合意(相殺契約)によって相殺することも本条違反」とあるのは、この部分を指しているのではないですか?
また、「労働者からの相殺契約のような形式がとられていても」という書き出し方で、例えば「労働することが条件となっていないことが明らかではない場合は本条違反である」とか「労働することが条件となっていないことが明らかである場合は本条違反にならない」というような説明であれば、前記のように労働者からの相殺は法17条違反にならない場合がありますから、説明としては問題ありません。
おそらく、口述講義やテキストでは、通達も含めて、規定の趣旨や、相殺が容認される場合のことも触れているのではないかと思います。
もし、口述講義やテキストがそれらに触れているなら「そもそも相殺契約による相殺は本条違反であるのなら」という認識は一面的です。
間違っていたらお詫びしますが、あなたの今のご指摘は、テキストの中であなたが目に付いた部分だけを取り出し、つなぎあわせて、「おかしい」と言っておられるような気がします。
「解りにくい」かどうかは別にして、「正しくない」とまで言われるのでしたら、口述講義を聞き直し、テキストをていねいに読み込んだ総合的な判断で言われるべきであると思います。
参考になった:3人
poo_zzzzz 2019-05-10 19:09:51
お礼が遅くなり申し訳ございません。、
一通り講義を聴きながら文章を読んで、理解できなかったので書かせて頂きました。
お分かりになる方に、ご説明頂き理解できました。
ありがとうございました。
yarufu 2019-06-05 16:14:46