ニックネーム | *** 未ログイン ***

 

回答順に表示     新しい回答から表示     参考になった順に表示

まず最初にテキストを見ていないことをお断りしておきます。



法14条の「被保険者期間」は「被保険者であった期間のうち、当該被保険者でなくなった日又は各月においてその日に応当し、かつ、当該被保険者であった期間内にある日(その日に応当する日がない月においては、その月の末日。)の各前日から各前月の喪失応当日までさかのぼった各期間(賃金の支払の基礎となった日数が11日以上であるものに限る。)を1か月として計算した期間」です。

「被保険者であった期間」のうち、一定の区切りで賃金支払基礎日数を満たすものが「被保険者期間」であり、「算定対象期間」の中に一定の数の「被保険者期間」があると、「受給資格」を取得する、という関係にあります。

ただし、ある離職において「被保険者期間」をカウントする場合、上記の「被保険者であった期間」に含めることができない期間があります。

● 最後に被保険者になった日前に受給資格、高年齢受給資格、特例受給資格を取得したことがある場合、その取得日以前の被保険者であった期間(法14条2項1号)

● 法9条の被保険者資格の確認が行われた日の2年前の日前における被保険者であった期間(法22条5項の例外あり)(法14条2項2号)

この法14条2項1号がお尋ねの イ)のはずです。

例を挙げると、例えばA社で9年働いて退職し職安に出頭し受給資格の決定を受けたが基本手当をまったく受給しないままB社に就職し、5か月後に退職した場合のB社離職時の被保険者期間は最長でも5か月です。

A社離職の受給資格を取得した日以前の被保険者であった期間は、B社離職の被保険者期間の計算には使えないからです。

5か月の被保険者期間ではB社離職時に受給資格を取得しないので、A社離職の受給資格を使うしかなく、A社離職日の翌日から1年間(原則)を受給期間として、算定基礎期間9年で基本手当を受けることになります。

この場合、後で説明しますが現行の行政手引の規定では、A社の離職において「受給資格の決定」を受けていなければ「被保険者期間」に係る「被保険者であった期間」は通算できるため、B社の離職において受給資格を満たす可能性があります。その場合はB社離職日の翌日から1年間(原則)を受給期間として、算定基礎期間9年5月で基本手当を受けることになります。



「算定基礎期間」は「基準日(離職日)まで引き続いて同一の事業主の適用事業に被保険者として雇用された期間」及び、それ以前にある「被保険者であった期間」のうち要件を満たす期間の長さで決まります。こちらは「賃金の支払の基礎となった日数」が影響しません。

また、上記法14条2項1号2号の制限は、あくまで「被保険者期間」をカウントする場合の「被保険者であった期間」の制限ですから、「算定基礎期間」をカウントする場合の「被保険者であった期間」には関係がなく、受給資格の取得は算定基礎期間の通算には影響しません。

例えば上と同じようにA社で9年働いて退職して職安に出頭し受給資格の決定を受けたが基本手当をまったく受給しないままB社に就職したものが、少し頑張って1年後に退職したとしましょう。

この場合に、B社在籍の1年間で被保険者期間の要件を満たし、B社離職時に受給資格を取得したとすれば、受給資格の取得は算定基礎期間の通算には影響しませんから、B社離職時の算定基礎期間は10年です。

A社離職からB社就職までの間に、わずかでも基本手当を受けていれば、A社離職日以前の被保険者であった期間は算定基礎期間に通算できませんから、B社離職時の算定基礎期間は1年です。

このように、「被保険者であった期間」を「算定基礎期間」に通算できるかどうかは、A社離職からB社就職までの期間が1年未満かどうかと、基本手当又は特例一時金を受けたかどうかで決まり、受給資格の取得だけであれば影響しません。



受給資格の取得についてお答えするのは、なかなか難しいです。

法13条と法14条の条文を文理的に考えれば、一定の要件を満たして離職すれば、職安への出頭がなくても受給資格を取得し、それ以前の被保険者であった期間は被保険者期間の計算に使えなくなります。
30年以上前ですが、職安への出頭が無い場合に、労働者が「受給資格を取得しない」、国が「受給資格を取得する」と主張して争い、地裁判決(S61.01.27浦和地裁)ですが国が勝ったことがあります。
この時の判決文には「以上は、雇用保険法の関連法条の文理上明らかなところである」の記述があり、裁判官の判断が雇用保険法の条文の表現から導き出されたことがわかります。

しかし、その後時が流れ、被保険者となる条件が大幅に緩和されると、「離職によって労働者が知らない間に受給資格を取得してしまう」という弊害が大きくなってきました。
そこで国は法令の改正はしないまま、行政手引(業務取扱要領)50103を変更し、「最新の離職票に係る被保険者となった日前に当該被保険者が受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格の決定を受けたことがある場合」に被保険者期間が通算できないように実務の取扱いを変えました。

受給資格の「決定」は職安に出頭しないと受けることができませんから、これにより離職しただけならば被保険者期間は通算可能になったのです。(実務的には行政手引の変更前からそのように扱っていたように、過去に聞いたことがあります)

つまり、30年以上前ですが「受給資格は職安に出頭しなくても取得する」とし、後の離職における被保険者期間の通算を否定して裁判で勝った事実があるにもかかわらず、国はその法令を改正せずに、行政手引の変更だけで法14条2項1号の運用を変え、職安への出頭を、被保険者期間通算の可否の判断基準にしてしまったのです。

受験対策として、「受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格の決定を受けたことがある場合」が行政手引で被保険者期間通算の可否の判断基準になっていることは重要です。実務もこれで運用されています。

しかし、法の上での表現は「受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格を取得したことがある場合」であるとなっており、受給資格の発生を定める法13条を文理的に考えれば被保険者期間を満たして離職すればもうその時点で受給資格が生じると考えることができます。また、先にも書いたように、国にもそれを主張して裁判に勝った過去があります。

つまり、ここは「そっとしておく部分」です。

以上のような経緯から、被保険者期間の通算についての問題で、職安への出頭なしで受給資格を取得したことになるかどうかが直接問われることはないでしょう。

しかし、受給資格の決定を受けた場合に被保険者期間が通算できないことは行政手引に明記され、そのように運用されていますから、これは出題される可能性はあります。

また、逆に法13条の受給資格や法14条の被保険者期間についての出題で、条文そのままの表現が出題される可能性はありますから、例えば「最後に被保険者となった日前に、当該被保険者が受給資格を取得したことがある場合には、当該受給資格に係る離職の日以前における被保険者であった期間は被保険者期間の計算に含めることができない」といった問題も、基本的に○と考える必要があります。

参考になった:10

poo_zzzzz 2019-06-29 11:14:57

前段部分について、被保険者期間としてカウントするのと算定基礎期間としてカウントすることの違いが整理できました。
後段部分については、年金法での最低請求せずとも受給資格は当然生じるという考えから雇用保険でも同じ考えをするのかと思っていたらそんな話があったとは驚きでした、ありがとうございました。

投稿内容を修正

aokabi931  2019-06-29 21:13:50



PAGE TOP