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まず、テキストを見ていないことをお断りします。

労働協約と労使協定は異なる定義であり、しかし、モノとしては同じである場合があります。

◆ 労働協約(労働組合法14条)
労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによってその効力を生ずる。

◆ 労働基準法の労使協定(同じ定義が異なる表現で何か所もでてくるので代表的な法36条1項を一部改変して抜粋)
当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と(使用者と)の書面による協定

法令上の定義はこのようになっています。

労使協定の場合、これは「定義」というより、労働基準法上の「労使協定」の本来の書き方そのものです。
労働基準法上では、書かれている条によって多少表現が異なりますが、労使協定が登場する条すべてにおいて「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合・・・略・・・書面による協定」のように書かれており、「労使協定」という表現は、どこにも出てこないのです。
実は、労働基準法の法・令・則の条文のどこをみても「労使協定」という「用語」は出てきません。(条文の標題は除く)
「労使協定」という用語は、省庁が下部組織に通知する「通達」等で使われている用語が一般化したものであり、法令上には「労使協定」という用語そのものが無く、このため条文上はその定義も無いのです。
「労使協定」という用語やその定義そのものが、「条文には無い」のですから、法令の条文にそって用語を正確に扱うなら、「法○○条に定める書面による協定」になります。
ですから、テキスト等で単に「書面による協定」とあれば、前後に特段の断りがない限り、それはいわゆる「労使協定」を指すと考えてください。



さて、上の労働組合法14条を見てください。
・ 労働組合と使用者又はその団体との間で締結される
・ 労働条件その他に関する定めごとである
・ 書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印している
この3つのポイントを満たせば、その書類は、労働組合法上の労働協約として「効力を持ってしまいます」。

ですから、いわゆる労使協定が、過半数労働組合との間で締結されると、その労使協定は、自動的に労働協約である労使協定になります。

変形労働時間制の労使協定の有効期間のところで、「労働協約の場合は有効期間の定めが要らない」ようなことは書いていませんか?
これは、当事者が意識するとしないとに関係なく、「労使協定が労働協約である場合」が起きるからです。

労働組合法15条3項において、「有効期間の定がない労働協約は、当事者の一方が、署名し、又は記名押印した文書によつて相手方に予告して、解約することができる。」とあり、期間の定めのない労働協約における書面通知による解約の自由を保障しているため、労働基準法においてもこれを尊重し、「労使協定が労働協約である場合」は有効期間の定めが要りません。

参考になった:2

poo_zzzzz 2019-07-12 09:42:19

ご連絡ありがとうございます。

大変丁寧な返信で、回答者はとても詳しく、かつ、易しい方と感じました。
ありがとうございます。

>実は、労働基準法の法・令・則の条文のどこをみても「労使協定」という「用語」は出てきません。
ありがとうございます。かつて水町先生の基本書を読んだことありますが、そこまで書いてなかった気がします。

>・ 労働組合と使用者又はその団体との間で締結される
>・ 労働条件その他に関する定めごとである
>・ 書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印している
>この3つのポイントを満たせば、その書類は、労働組合法上の労働協約として「効力を持ってしまいます」。
>ですから、いわゆる労使協定が、過半数労働組合との間で締結されると、その労使協定は、自動的に労働協約である労使協定になります。
過半数組合は労使協定も労働協約も結べることはわかっていましたが、「自動的に」労働協約になるとまで認識していませんでした。
ありがとうございます。

大変丁寧にありがとうございました。
今後ともご指導いただければ幸いです。

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tanuki  2019-07-12 10:52:29

「自動的に」という表現が妥当かどうかは私自身分からないですが・・・

ただ、使用者と労働組合が書面を交わし、その内容について争いが起きた場合に、使用者は「あれは単なる覚え書きだ」といい、労働組合は「あれは歴とした労働協約だ」といって、裁判になった例はいくつかあります。

いずれも地裁判決ですが、平成5年の青森放送事件の判決では、合意文書の表題が「覚書」「了解事項」等の名称であっても、労働組合法第14条に該当すれば労働協約といえるとしており、また、昭和43年の東京12チャンネル事件では、団体交渉記事録であっても、労使双方が署名していれば内容によっては労働協約と解されるとしています。

つまり、労働協約であるか否かをその書面の表題等に求めた場合、正常な労使関係を阻害するおそれがあるため、労働組合法14条にある要素が満たされた書面であれば、その書類にどんな名前が付いていようと、それは労働協約として見るべきだ、というのが基本的な考え方なのです。

参考になった:1

poo_zzzzz 2019-07-12 13:53:06

ご連絡ありがとうございます。
>労働協約であるか否かをその書面の表題等に求めた場合、正常な労使関係を阻害するおそれがあるため、労働組合法14条にある要素が満たされた書面であれば、その書類にどんな名前が付いていようと、それは労働協約として見るべきだ

これで意味がよくわかりました。
自動的という意味ではなく、労働協約として主張をした場合に、労働協約としての要素を満たしていれば、労働協約としての効力も持つという意味ですね。
ありがとうございます。

投稿内容を修正

tanuki  2019-07-18 11:56:17



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