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雇用保険法/日雇労働被保険者と短期雇用特例被保険者について
shiho11 2020-05-09 14:59:18
よろしくお願いいたします。
短期雇用特例被保険者とは、被保険者であって、季節的に雇用されるもののうち次のいずれにも該当しないもの だと思うのですが、
・4か月以内の期間を定めて雇用される者
・1週間の所定労働時間が30時間未満である者
上記の要件において、例えば日雇労働被保険者に該当していれば、日雇労働被保険者の資格が優先され、短期雇用特例被保険者にならないのはなぜでしょうか。
お忙しいところ恐縮ですがよろしくお願いいたします。
単純に言えば、この2つの資格は、原則的にぶつかりません。
まず、日雇労働者は、日々雇い入れられる者又は30日以内の期間を定めて雇用される者ですから、定義として法38条1項1号の「4か月以内の期間を定めて雇用される者」に抵触し、日雇労働者であるものは短期雇用特例被保険者になれません。
つまり、ある労働者が適用事業所で働き始め、短期雇用特例被保険者の要件を満たす場合に、同時に日雇労働被保険者の資格を満たすことは、原則はないのです。
しかし、日雇労働被保険者が、前2月の各月において18日以上同一の事業主の適用事業に雇用された場合又は同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用された場合にはその資格を失いますが、公共職業安定所長の認可を受けてときは、その者は、引き続き、日雇労働被保険者となることができます。
つまり、お尋ねの現象が起きるのは、日雇労働被保険者であることの認可を受けた場合なのです。
法令で優先の理由をいうなら、これになると思います。
ここからは雑談です。
それ、制度としてどうなの?という疑問が残る可能性がある内容ですが、そこの再質問は勘弁してください。
日雇労働被保険者については、ここ10年は適用範囲の拡大を職安もアピールしています。
日雇派遣の例
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koyouhoken07/dl/index01.pdf
しかし、それ以前は、事実上、建設業と港湾運送業にしか適用されていませんでした。
法令には「適用業種」なんてありませんから、本来ならば、法42条の労働者が法43条に該当すれば、どんな業種でも日雇労働被保険者になるはずです。
しかし現実には建設業と港湾運送業以外の事業主は、通帳も印紙も持っていませんからね。そのような形態での雇用を想定していません。これは今でもそんなに大きくは変わっていないと思います。
また、現在の扱いは知りませんが、ごく少数の特定の指定された職安しか、その給付を取り扱っておらず、受給できる職安は、大きな港湾の近く、または日雇労働者が多く住む町にしか無かったのです。
また、日雇労働被保険者の制度は、法令上強制加入ですが、入り口は、本人が手帳を取得することから始まります。
つまり、「日雇労働被保険者としてある場所で仕事をするのだ」という意思のある人しか保護されません。
さらに、その給付は、納められる保険料と比較して非常に手厚くなっています。
すごく単純に言って、176円の印紙26枚(最低24枚+他の等級の印紙)で7,500円の給付が13日分受けられます。一般保険料を考えても保険料納付期間の重複や事業主負担を考えれば、信じられないくらい手厚い給付です。
実際に経験した人に聞くと、非常に重労働で通常の労働者のように月に20日も働くなんて普通の身体では無理で、月に15日も働いたらクタクタだと言っていましたから、例えば10年間という期間を考えた場合に、働いて得る収入と、雇用保険から得る収入の割合は、通常の労働者が就職・退職を繰り返した場合とは比較になりません。
これは、例えば建設業の場合、工事を受注できれば非常に大人数の労働者が必要だが、受注できなければ人は要らないという産業の構造から、事業者が固定の労働者を抱えたがらず、業務の繁閑や天候によって自由に雇用が調整できる労働者を必要とし、昭和の高度成長期において、国もその特殊な状況に配慮して、特定の場所に集中して存在する日々雇用される者について、仕事がある日は仕事をしてもらい、仕事がない日は日雇労働求職者給付金を支給する、という「政策的な保護」をすることにしたのです。日雇労働求職者給付金を俗に「あぶれ手当」というのはこのためです。
また、やる気を出して働いて、ある月に17日分の給付の資格を得ても、それを全部受給はできないのですね。
ある月に17日給付を受けてしまうと、待期が最低4日ありますから、21日は失業していることになり、その月の印紙が10枚以下になって、次の月に困るのです。
なんだか、13日(つまり週に3日くらい)働いたらいいよ、と言っているみたいなのです。
給付内容はさておき、つまり、簡単にいうと、日雇労働被保険者となる方は、業種も、雇用形態も偏っています。
手帳を取得して、日雇労働被保険者となった方でも、同一の事業主の元で働き続けると適用除外になりますが、これも公共職業安定所長の認可で、引き続き日雇労働被保険者となることができます。
やむを得ずの選択かどうかは別にして、「自分の意思でそこに居る」性格の強い資格なのです。
短期雇用特例被保険者と特例受給資格者は、昭和の高度成長期に、農村部からの季節的な出稼ぎを促進し、保護するためにできた制度です。
主なターゲットは農村部からの出稼ぎでしたから、季節的な仕事が終われば帰って農業をするのですから、考えてみれば「失業しないはず」なんです。
でも、春に出稼ぎから帰っても、農業は秋にならないと現金収入が無いですからね。
つまりこれも高度成長期の産業を支えるために作られた政策的な性格の強い制度です。この30年くらい、何度も廃止が検討されましたが、制度内容を変えて存続しています。
日雇労働被保険者とは異なり、「短期雇用特例被保険者になるための手続き」は存在しません。
適用事業所において、一般被保険者と同様に同じ書式の資格取得届を出します。
職安が、そこに書かれた業務の内容、雇用期間、労働時間から、短期雇用特例被保険者に該当すると判断すれば、短期雇用特例被保険者としての確認が行われます。
つまり、「季節的に働きに行ったら短期雇用特例被保険者になった」みたいな感じです。
上記の説明で実務的なニュアンスは分かりますか?
日雇労働被保険者も、短期雇用特例被保険者も、政策的な制度なので、通常の求職者給付の「雇用のミスマッチを防ぎ、安定した職業に就くことを促進する」という目的からは外れた部分があります。
参考になった:15人
poo_zzzzz 2020-05-09 17:33:26
実務的なニュアンスの違いとてもわかりやすかったです!
テキストにおける要件だけを見ていくとごちゃごちゃになってしまうところ、実務的なニュアンスをお伝えいただくととても整理しやすいです!とても丁寧なご説明ありがとうございました。
Shiho11 2020-05-09 18:01:24
そうですね。
ただ、テキストを読んで疑問を持った時は、しっかり復習して順序立てて考えなければいけませんよ。
質問を書かれるときに、日雇労働者の定義を確認していたら、日雇労働者であるものが短期雇用特例被保険者の要件を満たすことがあるの?という部分が、スタートであったはずです。
疑問を頭の中で処理してはいけません。
必ずテキストに戻り、用語の定義からしっかり順序よく確認して、疑問の中心をあぶりだしてください。
今回も、なんとなくは「あれ?」と思われたはずですが、目の前の除外規定に気をとられてスルーしてしまったのでしょう。
そういった部分に疑問の原因があったりします。
参考になった:5人
poo_zzzzz 2020-05-10 10:14:58