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労働契約法7条により、就業規則で労働条件を定めている部分は、原則として労働契約の一部になります。

これは秋北バス事件等の最高裁判決によって明確になった就業規則の性格を、法で明文化したものです。

秋北バス事件判決より抜粋
労働条件は、経営上の要請に基づき、統一的かつ画一的に決定され、労働者は、経営主体が定める契約内容の定型に従って、附従的に契約を締結せざるを得ない立場に立たされるのが実情であり、この労働条件を定型的に定めた就業規則は、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至っているものということができる。

就業規則が法規範性を持ち、労働契約の一部となる条件は労働者への周知ですので、周知していない就業規則の規定は無効です。
周知の結果、ある労働者が忘れていたとしても、配られた書類を読んでいなかったとしても、就業規則の有効性には影響がありません。
また、合理性を欠く労働条件を定める就業規則の規定にも法規範性はなく、労働契約の内容にもなりません。
当然ですが契約することを法が禁じている事項を就業規則が定めても、その部分は無効です。

就業規則に規定があることだけを理由に16条違反が問われ、処罰されるようには思えませんが、法意に反する規定に基づいて現実に賠償を受け、その事案が悪質であれば、法16条に基づいて刑事罰が科される可能性はあると思います。

なお、「皿を割ったら全額弁償することとする」と言う規定が、「現実に生じた損害について賠償」になるかどうかには疑義があります。
現実に労働の現場で起きる器物の破損には、自然に起きる損耗が原因の場合や、そうではなくてもある程度の確率で起きてしまう破損があります。
「皿を割ったら」→「無条件に全額弁償」という規定は、長期間の使用による損耗(脆化や目に見えないヒビなど)といった条件を無視している点で合理性を欠きます。
裁判例を見ても、事業主が現実に負担した額の全額の賠償が認められる例はないと言って良く、5割未満の賠償例がほとんどです。
このため故意の場合を除き、「全額」という部分は無効と解されると考えた方が良いと思います。
賠償予定額を契約する行為は法16条違反ですから、その法意に反する規定を就業規則に定めた場合も無効です。

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poo_zzzzz 2020-09-28 01:27:19

とても分かりやすい解説で、納得できました。
就業規則も労働契約の一部になるところがあるんですね。

合理的な範囲内で「金額」を定めずに、賠償を求めることは自体は有効なんですね。
ご回答いただきありがとうございました。

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kyolaw  2020-09-28 17:14:24

> 合理的な範囲内で「金額」を定めずに、賠償を求めることは自体は有効なんですね。

そうですね。
民法は、例えば違約金を定めることを禁止していません。
「違約金は、賠償額の予定と推定する」とされているだけです。
また、民法は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と言っており、故意又は過失により生じた損害の賠償を求めることは、法律上の権利です。

労働基準法は、民法に対する特別法です。
ですから、労働基準法に書かれていることについては、民法より労働基準法が優先です。
逆に言えば、労働基準法が禁じていないのであれば、民法による民事損害賠償の請求が可能です。

法令の学習は階層的な部分があります。
いま、見えている範囲で分からなくても、「あのときのあれは、こうだったのか!」と、学習が進むと共に理解できる部分があります。
このため、受験勉強は、あまり深読みせず、テキストと口述講義で丁寧にしっかり学習することをお勧めします。

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参考になった:3

poo_zzzzz 2020-09-29 09:34:34



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