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http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/shinsa/roudou/04.html

これは、労働保険審査会の裁決例集ですが、この平成19年の雇用保険関係の裁決例6が、お尋ねの箇所を扱っています。

裁決文では「やむを得ない理由があるか否かは、行政実務上、不正をなすに至った動機、不正の度合い、反省の情の程度等の諸条件を総合的に検討した上で判断すべきものとされており、例えば、不正をなすに至った動機についてみれば、受給者の生計が著しく貧困であり、かつ、社会通念上やむを得ないと認められる支出の必要に迫られている場合や、他人の圧迫により不正受給を余儀なくされた場合など、真にやむを得ない特段の事情が必要とされている」とあります。

また、今現在の公開されている行政手引では見ることができませんが、昔(私の知る限り早くても平成21年まで)は、「不正受給に対する宥恕」(行政手引53205)として、上記の基本的な考え方と共に、

・著しく貧困で、かつ社会通念上やむを得ない支出に迫られている場合
・事業主が、採用後も基本手当を受け続けることを条件としてその期間賃金を支払わず、生計維持のため不正受給せざるを得ないような場合
・不正の度合いが軽微であって受給権のすべてを剥奪することが酷である場合

と、いった、具体例が行政手引に挙げられていました。

これが今公開されている行政手引に載っていないのは、削除されたのか、非開示になったのかはわかりません。

このため、今現在もなおこの基準で取り扱っているのかどうかも、わかりません。

テキスト等に載っていないのは、このような理由によるものと思われます。



雇用保険の場合は、基本手当や雇用継続給付のように一定の期間中何度も支給認定があったり、複数の失業等給付が行われる場合に、ある給付での不正が、その給付での制限だけではなく他の給付の制限に絡む制度であるため、返還命令以外に、将来に向かっての不支給規定があり、複雑ですが、不正受給に対しての労働社会保険の扱いは、基本は返還命令です。

雇用保険法も、他の労働社会保険法も、返還命令の条文の基本は「徴収することができる」等、任意規定です。

つまり、法律的には行政の裁量が入る余地があり、実務的に行われるかどうかは別にして、返還命令も宥恕の可能性を残しています。

雇用保険の失業等給付の不支給規定は、例外文が明示である点で特異ですが、労働社会保険法全般において返還命令が任意規定であることを考えれば、共に、法のレベルでは宥恕が可能であるという点で、さほど特別ではないと思います。



なお、他の労働社会保険において、「支給しない」と言い切っているのは、故意等で保険事故を生じさせた場合であり、不正受給とは性格が違います。

例えば障害基礎年金で言うなら、故意に怪我をして障害者になった場合は不支給です。

受給権の発生後、障害の程度が軽くなったにも係わらず、障害の程度を偽って支給停止されるべき年金を受給した場合が不正受給で、こちらは返還命令であり、「徴収することができる」という規定です。

でも、そういった不正で返還命令を受けた者でも、失権はしませんから、次に障害の程度が重くなったら、障害基礎年金は受給できます。

雇用保険は、基本手当の受給中に不正があったら、原則それ以後の基本手当の支給を打ち切ります。

不正受給後は、本当に失業しまじめに求職活動をしていても、何も受給できません。

不正受給の場合に、不正受給額だけではなく、それとは別に不正受給額の2倍の額の納付を命ずることができることも含め、実は、雇用保険の方が厳しいんですよ・・・

参考になった:21

poo_zzzzz 2016-12-03 00:31:28

poo_zzzzz様

 早速に大変に詳細な解説を頂きまして、ありがとうございました。
このご回答により、得心いたしました。
他制度との違いも明確になり、横断勉強になりました。
いつも的確で、詳細かつ丁重なご回答を賜りまして感謝申し上げます。

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hauser  2016-12-03 09:52:07



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