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行政手引20301に、雇用保険における「労働者」の意義として、「ここでいう「労働者」とは、事業主に雇用され、事業主から支給される賃金によって生活している者をいう」とあります。

一週間の所定労働時間があまり短い者については、その賃金は生活の補助的なものであると考えられ、「事業主から支給される賃金によって生活している者」とは言い難いため、1週間の所定労働時間が20時間未満の者の場合は、日雇労働被保険者となる場合を除き、雇用保険の被保険者になりません。(日雇労働被保険者は日々雇い入れられる者であるため、そもそも1週間の所定労働時間の概念になじみませんから論じることができません)

すると、ご質問の論点は、季節的に雇用される者であって、
(1) 4か月以内の期間を定めて雇用される者
(2) 週所定労働時間が30時間以内の者
が、なぜ適用除外か、と、言う点に絞られます。

これは、短期雇用特例被保険者と特例一時金の制度が、雇用保険の本来の趣旨から考えて、イレギュラーな制度(政策的な制度)であることに起因します。

短期雇用特例被保険者と特例一時金の制度の対象者は、簡単に言うと「出稼ぎ労働者」の方です。

春から秋にかけて農業をし、秋から早春の間は積雪等で仕事がないため、自宅から離れた場所に出向いて寄宿生活をしながら働く人を想定した制度なのです。

「なんだ、それなら普通の被保険者じゃないか?」と、思うかも知れませんね。

よく見てくださいね。

この者は、春から夏の間は、自営で農業をすることが想定されているのです。

つまり、この短期雇用特例被保険者と特例一時金の制度の想定されている対象者は、毎年定期的に季節的な就労をし、その他の期間は自営であって、結局この者は「失業しない」可能性が高いのです。

失業しないことが分かっていて、雇用保険が求職者給付を行うのです。

これは、昭和30年代の後半からの高度成長期に、地方の農業従事者の出稼ぎ就労が重要な労働力となっており、この者たちは出稼ぎを終えると秋まで収入が無いため、政策的に保護する必要があったのです。

今となっては存続を検討すべき給付であり、労働政策審議会の報告を見ても「循環的な給付であって、検討が必要」とされていますが、しかし、いまだ継続されています。

そのような政策的な制度ですから、季節的な就労であっても比較的短期であるものや、労働時間が短いものは、短期雇用特例被保険者と特例一時金の制度の対象にしません。

これが、お尋ねのか所の「理由」です。

そういう、政策的で、過去の遺産的な給付ですから、一般的な被保険者に対する求職者給付と、制度を並べて論じることには、あまり意味がないように思います。

参考になった:34

poo_zzzzz 2016-12-04 23:22:11

poo_zzzzz様

ご回答ありがとうございました。

poo_zzzzz様の「政策的」という観点からのご説明により、
「一般的な被保険者に対する求職者給付と、制度を並べて論じることには、あまり意味がないように思います。」
とおっしゃっていることを理解しました。

それでは失礼いたします。

投稿内容を修正

watam  2016-12-06 17:29:35

すみません、失業保険制度の変遷を調べたところ、論理的に矛盾する書き込みであったのでこの書き込みを削除し、差し替えます。

さらに戦後すぐの失業保険からの変遷を見ていると、先の書き込みについても認識の誤りが見つかりましたので、追記します。(参考文書・出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構(JIL) 007_01.pdf)



第一次世界大戦後の不況時(大正時代)に、失業保険法の制定に向けての議論があったのですが、その時の法案にすでに「季節労働ニ従事スル職工ニ在リテハ季節失業ハ失業ト看做サス」という規定が盛り込まれていたようです。

つまり、季節労働に従事する者は、毎年一定期間季節的に就労し、毎年定期的に失業し、そういう生活のサイクルができているのだから、そういった定期的に起きる失業は、社会保険が給付すべき対象ではない、という考え方です。

戦後の1947年に雇用保険法が制定された時にも、この季節労働者については議論があり、季節労働者については全面適用除外の考えもあったようですが、結局「季節的業務に4箇月以内の期間を定めて雇用される者」は適用除外で落ち着きました。

これについては当時の解説書に「これらの労働者を除外したのは、一に保険技術上の問題による。保険料の徴収、保険給付の算定など手続き上の困難が多いためである。一部には、これらの労働者は雇用期間が短いため、その期間後は当然に失業が予想されているのであるから、除外するとの意見もある。が、本法に於ける場合は、専ら技術上の問題だとされている」とあったようです。

つまりは、4か月以上かどうかはその当時の大きな問題ではなく、季節的業務につく労働者を適用除外にするかどうか自体が問題であり、結局「4か月」の制限が置かれたのは、当時の保険技術的な問題であったようです。

この当時は、季節的業務に雇用される者も、一般の被保険者と同様の給付(一律180日)をしていたようです。

また、この当時は、「季節的業務に雇用される者」には、単に「季節的に雇用される者」は含まれない、という考え方だったようです。

しかし、季節労働者に対する濫給が目立ったため、1949年改正で、いったん「季節的に雇用される者」は、全面適用除外にしました。

この理由は、「農閑期において出稼ぎに出る農業労働等は、別に農業という本職があり、季節が過ぎて事業主から離職しても、何ら失業者となる危険がない」と考えられたからです。

私が、「認識が間違えていた」と感じて、今回追記したのは、この部分があったからです。

私がむかしに教わったのは、そういった農閑期における出稼ぎ者に、実態として失業しない状況をわかっていて政策的に給付するのが、特例一時金の目的である、と、いうことだったのですが、どうやらそうではなかったようです。

これについては後述します。

しかし、そのような適用除外を置いても、濫給は収まりませんでした。現実にはまったく逆のタイプの季節労働者が増加していたのです。

それは、春から秋にかけて建設業等で就労し、冬場は積雪のため就労できなくなるというタイプの労働者でした。

そういったタイプの季節労働者が急激に増加し、社会政策的に無視できない状況になっていたのです。

そこで、こういう労働者についても、 4 か月を超えて雇用されれば季節性はなくなるという解釈での運用がなされるようになり、結果的には季節労働者への濫給が継続したのです。

そういった現実と濫給防止のバランスを取るために、1955年に失業保険法が改正されました。

この改正で、実際の雇用関係を見た場合に「季節的業務」と「季節的に雇用される者」の区別は困難であるという理由づけで、季節的に雇用される者であっても、その雇用期間が当初より 4 か月を超えると認められる者は適用するとして、現状を追認しました。

そしてこの時に、給付日数を一般の被保険者から切り離し、季節労働者については90日にして、濫給に歯止めを掛けたのです。

そして1974年、失業保険法が廃止され、雇用保険法が施行されました。

この時に問題になっていたのが「季節労働者の半ば定期的な受給と女子結婚退職者の退職金的受給が全体の7割を占めるという状態」でした。

このうち、季節労働者については、短期雇用特例被保険者と特例一時金の制度がおかれました。

この時にも、季節労働者については適用除外とするという議論もあったようですが、給付が受給者の生活に組み込まれているという現実に配慮して、50日分(当時)の一時金という妥協的解決をしたようです。



上記が、現在の制度に至る流れのようです。

先に書いたように、農閑期において出稼ぎに出る農業労働等に特に配慮した制度ではなかったようです。

この点、誤った根拠を書き、申し訳ありません。



さて、この問題の根本は、「季節労働者に失業給付を行うことが適切かどうか?」という点にあります。

季節的な業務はその季節しかないのですから、季節的な業務に就職する者は、その季節が終われば失業することが分かっていて就労しているのです。

また、業務そのものが季節的でなくても、豪雪地帯等で夏にしか仕事がないような場合は、季節的にしか働けないのですが、この場合もその季節が終われば失業することが分かっていて就労しているのです。

このような者は、失業がサイクル化しているわけでそこに給付を行うとなると、これは求職のための給付ではなくて、生活給になってしまいます。(給付の循環化)

このため、季節労働者に対する失業等給付はするべきではない、という考え方は常にあり、議論されてきたのですが、結果的には時代ごとの社会情勢によって政策的に給付が行われきて、現在も現実に配慮して給付し続けている、というのが実態のようです。

本来ならば給付するかどうか自体に問題があるが、政策的に古くから行われてきた制度であり、一般の被保険者の制度と並べて論じることは難しい、という、結論は変わりません。



ふと、思ったのですが、質問された方の疑問は、もしかするとこうではないですか?

「毎年季節的な業務に就く者ではない者が、たまたま仕事を探していたら仕事があったから期間雇用で就職したら、そこの仕事に季節性があった。その場合に就職先の事業所が季節的業務であるという理由だけで、4か月未満の契約では被保険者にならないのか?」

これについては、以前、職安で訊いたことがあります。

実を言うと、実務で短期雇用特例被保険者の確認をされている職員さんは、現在ではとても少なく、私が訊いた職員さんも「扱ったことが無い」とおっしゃっていました。

しかし「条文上や行政手引を見る限り適用除外だけど、短期雇用特例被保険者になる場合「季節的に雇用される者であるかどうか」の認定がある。やったことがないから「こうだ」とはいえないけど、単に就職先がスキー場をやっているから季節的に雇用される者、みたいな認定にはならないと思う。そういった認定の結果、就職先の業務に季節性があっても、その者が「季節的に雇用される者」と認定されなければ、一般の被保険者としての確認になるはずです。」とのことでした。

参考になった:10

poo_zzzzz 2016-12-07 11:00:06

poo_zzzzz様

重ねてご回答ありがとうございました。

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ふと、思ったのですが、質問された方の疑問は、もしかするとこうではないですか?

「毎年季節的な業務に就く者ではない者が、たまたま仕事を探していたら仕事があったから期間雇用で就職したら、そこの仕事に季節性があった。その場合に就職先の事業所が季節的業務であるという理由だけで、4か月未満の契約では被保険者にならないのか?」
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一般の被保険者と短期雇用特例被保険者の違いを考えていたときに、この疑問も生じていましたが、
この疑問も、「なぜ、短期雇用特例被保険者が、一般の被保険者と比して高いハードルを設定しているか?」に集約されると思い、
当初の質問の記載内容にて質問させていただきました。

私の思考も踏まえて、ご回答下さり、いつもいつも感謝しています。
今後は、質問する際、私の思考過程もできる限り書こうと思っています。

それでは失礼いたします。


投稿内容を修正

watam  2016-12-07 17:05:52



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