出張先での就寝中の被災について、裁判で争った事例はないように思います。

裁判にはなっていませんが、宿泊先で就寝前に労働者が誤ってガスストーブの元栓を外してしまい、これに気付かずに就寝したためにガスが漏れて中毒死した事件について、労働者がガスの元栓を外したのは過失であって恣意的行為ではないとの判断から、業務上災害を認定した例があります。



一般論として、出張については、その移動中や宿泊先を含み、出張中は常に労働者は使用者の支配下にあると考えられていることより業務遂行性が認められます。

また、労働者が移動について合理的ではない経路や方法をとった場合の災害や、積極的な私的行為や恣意的行為等を原因とした災害でなければ、一般に出張中に起きた災害による被災には業務起因性が認められます。

就寝は、宿泊を伴う出張において「通常行われる行為」であり、「積極的な私的行為や恣意的行為等」とは言えないので、就寝中である場合も含め、宿泊中の事故について、お尋ねの例はいずれも業務災害になります。



ただし、会社が宿泊先を指定したような場合は、「その場所に泊まること」も出張の構成要件ですので、他の場所に泊まって被災した場合は業務上にならない場合があります。

しかし、出張の場合、宿泊場所の指定はなされていない場合も多く、そのような場合は、宿泊先の選択はある程度労働者の裁量に任されていると言うべきですので、その選択に合理性があったかどうかが問題になります。

例えば出張先がたまたま実家の近くで、実家に泊まった場合であっても、「実家だから宿泊中は業務外」ということはなく、その判断は、その移動経路や出張命令の内容からなされると思われます。

もう20年も前の書籍ですが、当時の労働省労働基準局補償課監修の書籍に「出張地から1時間程度の距離にある実家に宿泊したことをもって「積極的な私的行為」ともいえないということも考えられる」と、いう記述があります。

参考になった：7人

poo_zzzzz　2016-12-14 23:51:18

poo_zzzzz様　有難うございました。

過去の判例まで有難うございました。
文章全て納得いたしました。
御礼申し上げます。
勉強頑張ります。
労災も事例問題も多く敏感になっちゃいます。
基本の考え方をきちんとしないと・・・。

mandolao

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mandolao　　2016-12-15 00:14:27