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労働保険徴収法/通貨以外で支払われる賃金
smn11210 2017-01-02 14:58:31
本年もどうかよろしくお願いいたします。
1)「通貨以外で支払われる賃金」についてどうかご教示願います。
2)徴収法の法2条3項(インプットテキスト7ページ)には
「賃金のうち、通貨以外のもので支払われるものの評価に関し、必要な事項は
厚労大臣が定める。
となっております。
3)一方、
雇用法 則2条1項(インプットテキスト8ページ)には
「通貨以外のもので支払われる賃金の「範囲」は
職安所長が定めるところによる。
雇用法 則2条2項(インプットテキスト8ページ)には
「通貨以外のもので支払われる賃金の「評価額」は
職安所長が定めるところによる。
となっております。
4)2)と3)の関係は、
通貨以外の賃金の大綱の決め方は厚労大臣が定め、
実際のジャッジは職安所長が実施、
くらいの押さえ方でいいのでしょうか。
あまり深入りはしたくはないのです。
うーん、根本的に比較対象を誤っておられるので、このままでは説明しにくいです。
労働保険の保険料の徴収等に関する法律(以下、徴収法)に対応するのは、労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則(以下、徴収則)です。
雇用保険法施行規則ではありませんよ。
その部分を修正して、徴収法と雇用保険法に分けて言うと、おおまかな考え方としては、
徴収法の場合は、
・ 通貨以外の賃金の評価に関し必要な事項は、徴収法2条3項により厚生労働大臣が定めることとなっている
・ 厚生労働大臣の定めは厚生労働省告示により定まる
・ しかし、厚生労働省告示には食事の利益と住居の利益しか具体的な価額がなく、他は時価となっている
・ そこで厚生労働省令(徴収則3条)により、厚生労働省告示にない部分は、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長が定めることとしている
雇用保険法の場合は、
・ 通貨以外の賃金の評価に関し必要な事項は、 雇用保険法4条5項により厚生労働省令で定めることとなっている
・ 厚生労働省令(雇用保険法施行規則2条1項)には、通貨以外のもので支払われる賃金の範囲は公共職業安定所長が定めるところによる、とあり、同条2項に、通貨以外のもので支払われる賃金の評価額は公共職業安定所長が定めるとある
・ 具体的な考え方は、雇用保険関係業務取扱要領(行政手引)に書かれている
のようになっています。
徴収法と雇用保険法について、それぞれきちんと説明すると、下記の通り長くなります。
下記の説明ですら、厚生労働大臣の定めの具体的な内容(厚生労働省告示による都道府県ごとの具体的な価額)には触れていないのですが・・・
参考までに書いておきます。
徴収法2条3項によって厚生労働大臣が定めているのは、平成24年1月31日厚生労働省告示36号と、それを一部改正する平成25年2月4日厚生労働省告示17号と、平成28年2月23日厚生労働省告示37号です。
ただ、これらの告示には、都道府県ごとの具体的な食事の利益の額と住宅の利益の額しか定めがありません。それら以外の報酬等については「時価」とあるだけです。
そこで、徴収則3条に「法第二条第二項の賃金に算入すべき通貨以外のもので支払われる賃金の範囲は、食事、被服及び住居の利益のほか、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長の定めるところによる。」とあり、このうち食事と住居の利益の評価については前記通達のその都道府県の項に従うことになりますが、その他の部分についてはその範囲と評価は労働基準監督署長または公共職業安定所長が、当該地域の時価を基準にして評価することになります。
なお、私自身やその周辺での実務経験では、食事と住宅の利益以外の算入の例を知りません。
なお、厚生労働大臣が定める現物給与の価額の取扱いについて、基労徴発0204第2号、保保発0204第1号、年管管発0204第1号の通達が出ていますが、これは「厚生労働大臣の定め」そのものについての通達ではありません。
平成24年1月31日厚生労働省告示36号によって全面改正された「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」の適用について、平成25年2月4日厚生労働省告示17号が明確にしたため、この平成25年の告示に付随して同じ日に出された通達です。
平成25年2月4日厚生労働省告示17号によって、例えば、千葉県の派遣元から東京都の派遣先に派遣された労働者については、千葉県の項を適用する、といったことが明確にされました。
この告示について、労働保険料徴収及び社会保険料徴収の行政の担当者に対し、注意喚起したのが基労徴発0204第2号、保保発0204第1号、年管管発0204第1号の通達です。
この通達は多くのテキストに載っていますが、この通達の内容が、労働保険の保険料の徴収等に関する法律2条3項の「厚生労働大臣の定め」ではないので気を付けて下さい。
先にも書きましたが、労働保険の保険料の徴収等に関する法律2条3項により、厚生労働大臣が定めているのは、平成24年1月31日厚生労働省告示36号と、それを一部改正する平成25年2月4日厚生労働省告示17号と、平成28年2月23日厚生労働省告示37号です。(平成26年と平成27年にも告示がありますが、平成28年の告示で内容が上書きされています)
雇用保険法の場合は、法4条5項に「賃金のうち通貨以外のもので支払われるものの評価に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。」とあり、これを受けて雇用保険法施行規則2条1項に「法第四条第四項 の賃金に算入すべき通貨以外のもので支払われる賃金の範囲は、食事、被服及び住居の利益のほか、公共職業安定所長が定めるところによる。」とあり、同条2項に「前項の通貨以外のもので支払われる賃金の評価額は、公共職業安定所長が定める。」とあります。
この適用範囲については雇用保険関係業務取扱要領(以下、行政手引)50403、評価については行政手引50404にルールが書かれています。
行政手引50403
通貨以外のもので支払われる賃金(いわゆる現物給与)の範囲は、食事、被服及び住居の利益のほか、安定所長が定めるところによる(則第2 条)。すなわち、食事、被服及び住居の利益は安定所長が定めるまでもなく賃金の範囲に算入されるものであり、したがって、食事、被服及び住居の利益が法令又は労働協約の別段の定めに基づくことなく、労働の対償として支払われた場合においても、当該利益(現物給与の利益)は当然賃金の範囲に入るものであるが、その他の現物給与については、安定所長が具体的に定めた場合賃金に算入されるものである。この場合において、安定所長が定める現物給与の範囲は、原則として「法令又は労働協約に支払いの定めがあるもの」について指定する。なお、地方運輸局において扱う場合も、賃金の範囲は安定所長が定めるところによることとする(50404(4)において同様。)。現物給与について代金を徴収するものは、原則として賃金とはならないが、当該徴収金額が実際費用の3 分の1 を下回っている場合は、実際費用の3 分の1 に相当する額と徴収金額との差額部分は、賃金として取り扱う。実際費用の3 分の1 を上回る代金を徴収するものは現物給与とはならない。
行政手引50404
50403 により賃金の範囲とされた現物給与の評価額は、次による。
イ 法令又は労働協約に評価額が定められているときは当該評価額
ロ 食事、被服及び住居の利益以外のもので法令又は労働協約に支払の範囲のみが定められ、評価額の定めがない場合は、安定所長が当該事業所の所在地区の市場価格を基準として評価した額
ハ 食事、被服及び住居の利益については、法令又は労働協約に評価額が定められていないときは、健康保険法第46条の規定に基づき、都道府県知事が定めた評価額を参考として安定所長が評価した額
この場合において、安定所の管轄区域内であっても、例えば、都市地区とその他の地区との物価、家屋の賃貸価格等に著しい差があること等一律の額をもって評価することが不適当であるときは、地区別に評価額を定めることが望ましい。
また、住居を無償で供与される場合においては、住居の利益を得ない者に対して、住居の利益を受ける者と均衡を失しない均衡手当が支給されるときは、住居の貸与の利益が明確に評価されているものであるから、当該額を限度として評価する。
参考になった:15人
poo_zzzzz 2017-01-03 09:31:54
poo_zzzzz 先生
いつもお世話になっております。
考え方の誤りからご教示いただき有難うございました。
周辺知識もあわせてご教授いただいたお陰で
理解することが出来ました。
今後もどうかよろしくお願いいたします。
smn11210 2017-01-03 15:14:57
そうですね・・・
・ 徴収法における「賃金」の定義は、「労働保険料」の中の「一般保険料」を徴収するための「保険料算定基礎額」の元となる「賃金総額」を算定するために必要な定義である。
・ 雇用保険法における「賃金」の定義は、「失業等給付」の額の算定の元となる「賃金日額」等を算定するために必要な定義である。
・ 法は立法の決議を必要とするため、法の細目は政令や施行規則に委任されるが、政令や施行規則には上位の法令のどの部分を受けたものであるかが書いてある場合が多く、少なくとも何の断りもなく、徴収法からの委任事項が雇用保険法の施行規則に書かれることはない。今回の雇用保険法施行規則2条1項にも「法第4条第4項の賃金」と書いてあり、雇用保険法施行規則が単に「法」といえば、それは雇用保険法である。
質問された方は、失礼ながら、これらの事柄が解っておられなかったことになります。
また、「厚生労働大臣の定め」とあるのに、目がいきなり施行規則に行くことにも、本来ならば問題があります。
少数の例外はあるようですが、法令に「厚生労働大臣の定め」とあれば、まず、最初に考えるべきは「厚生労働省告示」です。
こういった法令についての基本的なことをきちんと押さえていないと、今回のような「一歩踏み出した」疑問を考えることは、とても難しくなります。
それは、周りにピースが置かれていないジグソーパズルの一片のようで、とても不安定で、それが何を意味するのか解らない断片的な暗記になりやすいのです。
受験勉強において、深入りしないようにすることは大切です。
このため、私は受験テキストをしっかり精読し、口述講義を聴いて、それらと過去問の範囲で考えることをお勧めしています。
今回の疑問でも、疑問が生じたときにテキストをきちんと読み直しておけば、徴収法2条3項と徴収則3条の関係は書いてあったはず(テキストも厚生労働省告示は飛ばしているようです)であり、もしそこで疑問が生じたとしても、今回の質問とは違った質問になったはずです。
しかし、そこから一歩踏み出して、法令相互の関係をより深く考える勉強方法を採るならば、暗記の断片だらけでは、逆に受験勉強はとても手間なものになってしまいます。
その場合は、そういった勉強方法に必要な、最低限の法令の仕組みは理解するようにしてください。
参考になった:4人
poo_zzzzz 2017-01-03 16:47:34