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厚生年金保険法/標準報酬月額等級表改定について
einaba5 2017-03-01 12:43:58
基本的な質問で申し訳ありません。
今年度標準報酬月額の等級区分が改定され、下限に88000円の区分が追加されています。
厚生年金保険法における等級区分の改定についての規定は、3/31における全被保険者の標準報酬月額の平均額の2倍が最高等級の標準報酬月額を超え、それが継続することが見込まれるときはその年の9/1から更に上の等級を追加することができるというものがありますが、それ以外の場合については特に規定がないので、今回は短時間労働者への制度適用拡大に合わせる形で、9/1ではなく10/1から下限追加の改定をした、と考えてよいのでしょうか。
また、現在の事例としては考えにくいことですが、等級の削減(例えばインフレなどで貨幣価値が大きく変化した際に、9/1から最高等級を平均額の2倍以下となるようにし、合わせて下の等級を削るなど)についても第20条に規定はないので、第2条の2や3などに基づく形で行われうる、と考えてよいのでしょうか。
試験対策上重要なことではないとは思いますが、どうしても気になってしまいました。
どうかよろしくお願いします。
厚生年金保険の標準報酬月額の1級が88,000円に改正されたのは、平成24年8月22日に公布された「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」第3条による改正です。
つまり、改正のための法律(これを「改正法」といいます)が新たに国会で成立して、その改正の対象となる法律(これを「被改正法」といいます)の中に、厚生年金保険法があった、と、いうことです。
新たに国会で成立した改正法が、すでにある被改正法を改正するのですから、その時点の被改正法の内容とは関係なく、改正が行われます。
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poo_zzzzz 2017-03-01 14:15:08
厚生年金保険法内の規定による改定ではないので20条の条件は関係ないという事ですね。
当たり前のことを聞いてしまって申し訳ありませんでした。
ありがとうございました。
einaba5 2017-03-01 14:34:49
うーん、「当たり前のこと」でもないような・・・
確かに当たり前ではあるのですが、法学部等で法律の基礎を学んだ方以外の方については、社労士受験の過程で見落としてしまいがちな部分です。
受験に必要な部分に絞って説明しておきます。
まず、「法令」は、法律と行政の命令ですが、社労士試験で法令という場合、一般的には法律と政令と省令(法・令・則)を指します。
法律は、国会の議決により成立し、公布されます。法律の公布は内閣の助言と承認によって天皇の名で行われ、公布の形式は、一般には官報への掲載によって行われます。
ただ、成立し、公布されてもすぐに施行されるとは限りません。附則に「公布の日に施行する」と書かれていれば公布即施行ですが、多くは、附則が施行日を定めていたり、「公布の日から○○日以内」や「××法の施行の日」のようにいつ施行するかの目処が附則に定められていて、場合によっては公布から数年後の施行になる場合があります。
今回のお尋ねの部分は法律の公布から施行まで4年あまり掛かっています。
法律は、立法機関である国会の議決によって定められますから、その内容は、国会の議決による法律によってしか変えることができません。
日本は制定法の法体系ですので、最高裁判決による判例であっても下位の裁判所を拘束するだけであり、判例が直接的に法律に影響を及ぼすことはありません。
ただ、最高裁判所が憲法違反又は違法とした法律については、速やかな立法措置が執られる必要があります。
法律の改正は、全面改正の場合を除き、「○○法等を改正する法律」のような改正法を国会で成立させることにより行われます。
この時に経過措置が置かれることが多く、この経過措置は改正法附則として、特に年金法で受験する方を悩ませます。
また、改正法は「第○条の△△を××に改める」のように書かれますので、それに合わせて被改正法を読み換える作業が要ります。
一般に目にする法律は、この読み替えが済んだ状態です。
政令は、内閣が制定し、公布されます。公布については法律と同様の扱いになります。また、施行される日の考え方も法律と同様です。
政令は、多くの場合「○○法施行令」のような名称になります。
政令は、行政が定める命令の中では最高位のものですが、その内容は、法律に反することができません。
また、法律の委任による場合を除き罰則を設けることができず、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができません。
法律に「政令の定めるところにより」のように書かれていれば、その範囲で政令が義務を課し、又は権利を制限し、罰則を設けることができます。
省令に関しては厚生労働省令に絞って説明します。
省令は厚生労働省が制定します。省令の公布は厚生労働省が厚生労働大臣の名で行い、公布の形式は一般には官報への掲載によって行われます。施行される日の考え方は法律と同様です。
省令は、多くの場合「○○法施行規則」のような名称になります。
省令の内容は、法律及び政令に反することができません。
省令は、厚生労働省の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて制定され、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができません。
社労士受験の範囲でいうと、行政に対する具体的な手続き内容や届出期限等は、この省令に定められている場合が多くなります。
法・令・則の概要と優劣関係は上記の通りです。
今回お尋ねの標準報酬月額等級表は、法律に定められていますので、その改正は、国会の議決を経て行います。これが原則です。
しかし、法律の内容には社会情勢に応じて柔軟に変更されなければならない部分があり、そのような部分について、その都度国会の議決を必要としていては不便です。
そこで、そのような部分については法律にあらかじめ改定の規定を設け、その規定に定められた範囲内で、政令や省令によって法律の施行内容の一部を改定させることができます。
これは、あらかじめ設けられた法律の改定規定によって行われるものであって、政令や省令が法律を変えているわけではありません。
今回お尋ねの法20条2項はそのような部分です。
また、法2条の2や法2条の3について言及しておられますが、これらの規定は厚生年金保険を管掌する政府の義務を定めているものに過ぎず、これらの規定が直接的に法律の内容を改変することはありません。政府がこれらの規定に従おうとしたときに、法改正が必要であるなら、やはり国会の議決が必要になります。
次に法・令・則以外に、社労士試験に出てくる規定について説明します。
法令に「厚生労働大臣の定める」とある場合は、厚生労働大臣がその内容を定めます。当然ですが、根拠となる法令に反する内容を定めることはできません。
この定めた内容の公示が、「告示」であり、厚生労働大臣の場合は、厚生労働省告示です。
通達は、行政の上級機関が下級機関に対し、その機関の事務についての指針を明らかにするために出すものです。
あくまでも行政機関の間で伝達される事務についての指針に過ぎませんから、法律の根拠を要せず、また、その内容は国民の権利を制限したり義務を課したりすることができません。
ただ、行政機関の監督権限により出される指針ですから、下位機関は通達の内容に反する事務をすることができず、結果として国民に対する影響はあります。
通達は、その発翰する行政機関等で名称が異なります。
一つの例として、労働基準法関係の通達についてのみ説明します。
発基通達:法律の大改正があったとき等に、特に重要な事項について、厚生労働省事務次官名で出される通達。
基発通達:厚生労働省労働基準局長が出す通達。
基収通達:下位の行政機関からの疑義に応じて、厚生労働省労働基準局長が出す通達。Q&Aになっていることがある。
行政手引は雇用保険法で出題対象になります。
文字通り、行政の窓口(雇用保険法の場合は主として公共職業安定所の窓口)が、事務のために用いるマニュアルです。
雇用保険の場合は「雇用保険業務取扱要領」という名称で、その内容は公開されていますが、私の個人的な感触では非公開部分があるような気がします。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouhoken/data/toriatsukai_youryou.html
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poo_zzzzz 2017-03-02 04:06:22
詳しい説明をしていただきありがとうございます。
理系学部出身ということもあり法や規則についてのイメージがよくわかっていなかったのですが、説明していただいて少しはわかったような気がします。
受験だけでなくそれ以降においても非常に重要なことだと思いますし、きちんと理解できるようにします。
einaba5 2017-03-02 08:54:25