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民執法/差押登記後の抵当権者に対する順位の譲渡・順位の変更
hatu 2016-11-10 11:32:31
民事執行における配当について、具体的な事例が中々想像できず、
特に、後順位抵当権者に対する手続相対効の理解が乏しく、ご質問致しました。
宜しくお願い致します。
下記のような権利関係の不動産があるとします。
不動産価格:5000万円
【甲区】
3番 所有権移転 平成20年7月1日 所有権者 A
4番 差押 平成27年7月1日 債権者 B 債権額 3000万円
【乙区】
1番 抵当権設定 平成23年7月1日 抵当権者 X 債権額 2500万円
2番 抵当権設定 平成27年8月1日 抵当権者 Y 債権額 3500万円
※諸費用などは省略するとします。
原則として上記の配当は、差押登記に劣後する抵当権者Yは差押権者Bに対抗できないので、
①X 2500万円・②B 2500万円 ③Y 0円
となると思います。
(1)Bの差押登記の後にX・Y間で1番抵当権の順位が譲渡された場合の配当はどうなるのでしょうか?
私としては元々、①Y 2500万円・②B 2500万円 ③X 0円
と、考えていたのですが、民事執行法の学習をしてから、
YはBの差押え後の抵当権者で、かつ、順位譲渡も手続相対効によりBに対抗できず、
Yは配当を受けることはできないのでは?と疑問に思いました。
X・Y間の相対効とB・Y間の相対効が混乱してしまって、ご質問した次第です。
(2)同様の事例で、Bの差押登記の後にX・Y間で順位変更をした場合の配当はどうなるのでしょうか?
順位譲渡とは違い、順位変更は絶対効ということで、順位譲渡と異なる扱いとなるのでしょうか?
差押権者Bは利害関係人とはならないので、Bの配当に影響はないとしても、X・Yの配当の扱いが分かりません。
長文となってしまいましたが、ご教示頂けると幸いです。
以上、何卒宜しくお願い致します。
(1)について
Bに優先する範囲においてXが処分することに対して、差押債権者Bは文句を言う立場にありません。
また、順位譲渡の登記は乙区1番に付記されて登記されるし、その登記の申請の際にもBは利害関係人ではないので、BとYの法益は衝突しません。
(2)について
まず、登記されてない場合は順位変更の効力は生じないので無視します。
順位変更の登記は必ず主登記でなされるので、差押の登記に劣後します。ということは、Bは手続相対効によって順位変更登記を無視できるので、当該登記がない場合と同じように配当されるでしょう。
参考になった:5人
rudess99 2016-11-13 23:46:47
rudess99様
ご回答頂き、ありがとうございます。
(1)差押登記後における先順位抵当権者の順位譲渡登記の場合
⇒先順位のXは差押権者Bに抵当権を主張できる立場にあるため、
たとえXがBに後れる後順位のYに順位譲渡をしたとしても、B・Y間の問題ではなく、
あくまでX・B間の関係をベースに考えれば良いのですね。
(2)差押登記後における抵当権者間の順位変更登記の場合
⇒差押登記に後れる抵当権者を含めた順位変更について、
B・(X&Yの順位変更登記)は手続相対効によりBに主張できず、
登記のままの配当でなされるということですね。
自分では調べきれず、ご質問をさせて頂きましたが、大変参考になりました。
また、今一度、主登記・付記登記の本質的な違いを学び直す必要があると痛感致しました。
誠にありがとうございました。
hatu 2016-11-14 08:30:45
実務的にいうと、書記官は、競売開始決定(差押え)登記の嘱託時の登記事項証明書しか見ないので、その後に登記された抵当権は、二重差押えがなければ、書記官が知りえないので、配当を受けられないと思います。
民事執行法87条1項でも差押え登記前の抵当権しか配当を受けることができないと規定しています。
(1)についてですが、順位譲渡されたとしても、差押え登記の抵当権になるので、そのままでは配当されないので、配当異議などの手続が必要になるでしょう。配当表の作成には、民事執行法85条2項により、民法の規定に従うので、配当を受けるということにもなるのでしょうか?ただ、民事執行法87条1項により、あくまでも差押え登記後の抵当権だして配当が認められない可能性もあると思います。
いずれにしろ、かなり、難しい問題と私は思います。
(2)についても同様なような感じがしますが・・・
不動産の競売に関する配当は、手続相対効ということだけでは決まらない感じがします。87条1項では、差押え登記後の仮差押え登記の債権者は、配当要求すれば、配当を受けられますし・・・。 いずれも競売開始決定後(差押え登記後)に順位譲渡や順位変更の登記をすることは稀有なので、本試験に出る可能性はかなり少ないと思います。
参考になった:2人
ACAC 2016-11-15 00:21:51
ACAC様
ご回答頂き、ありがとうございます。
実務レベルのお話、大変参考になります。
正しく理解できているか不安ですが、自分なりにまとめてみたいと思います。
①差押登記に後れる抵当権者の扱い⇒配当を受けられない
[理由]
・民事執行法の配当要求権者に後順位抵当権者が含まれていない
・差押登記後になされた不動産所有者の抵当権設定は、手続相対効により執行手続上無効
・裁判所は差押登記時の登記事項証明書を基に手続きを進めるため、後順位抵当権者の存在を知り得ない
ただし、一般債権者として仮差押え等をすれば配当を受ける可能性はある。
②差押登記に先んじる抵当権者の抵当権の処分⇒配当に反映させるには、配当異議等の手続が別途必要
[理由]
・差押債権者よりも先に配当を受けられる立場にあるため、先順位抵当権者の行為が差押債権者に利害を与えることはない
・差押登記に後れる順位譲渡であるため、裁判所は当該順位譲渡を知り得ず、このままでは配当表に反映されない
・別途、配当異議などの手続が必要
なお、手続上Yの抵当権は無効とされているため、
そもそも『抵当権の順位譲渡』ではなく、内容的には『抵当権のみの譲渡』になるのでは?などと考えて直しておりますが、
いずれにしても先順位抵当権者だからと言って、差押登記後になされた譲渡・放棄などの処分を、
配当手続に反映させるためには、別途手続が必要と思われる、ということですね。
正直な所、民事執行法85条1項但書により、債権者全員の合意により配当順位・額の変更をしたり、
極論ですが、先順位抵当権者であるXが配当を受けた後でX・Y間だけで金銭のやり取りをするなど、
当事者で解決方法を見つけることもできるため、
頑なに配当手続という法的手続様式に則って白黒つけさせようとして、深みにはまってしまったと思います。
差押登記の先・後だけを見て、一様に考えてはならないのだなと思いました。
非常に参考になりました。
誠にありがとうございました。
hatu 2016-11-19 16:28:51