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民法/物権的請求権について
takugin97 2022-09-29 15:02:50
皆様、よろしくお願いします。
次の過去問と解答についてです。
【平成26年度第7問】
ア A所有の甲土地上に、Bが乙建物をAに無断で建築して所有しているが、Bとの合意によりCが乙建物の所有権の登記名義人となっているにすぎない場合には、
Aは、Cに対し、甲土地の所有権に基づき、乙建物の収去及び甲土地の明渡しを請求することができる。
解答 ×
判例(最判平成6.2.8)は、「土地所有権に基づく物権的請求権を行使して建物収去、土地明渡しを請求する場合において、建物の現実の所有者と登記名義人が異なる場合、原則として現に目的物を占有している者を相手方とすべきであるが、自らの意思で取得した建物の所有権登記名義を有する者(旧所有者=譲渡人)も相手方となる」としている。本記述のCは、現に乙建物を占有している者ではないため、これを相手方とすることはできない。
AはCに建物収去・土地明渡しを請求できない、との結論のようです。
「Cは、現に乙建物を占有している者ではないため」とありますが、建物の所有権登記名義人であるCをなぜ「占有を有している者ではない」と言えるのでしょうか。
また、別の解説では、「所有権を持ったことがない人に対しては、物権的返還請求はできない」とだけ記載がありました。Cは建物の所有権登記名義人であり、「所有権を持ったことがない人」にはあたらないと思うのです。
いずれの解説もよく理解できない状態です。
ご指導のほどよろしくお願いします。
この論点については、原則は、「現に建物を占有している者」に対して物権的請求権を行使できます。
今回の過去問では、「Cが乙建物の所有権の登記名義人となっているに過ぎない場合」とありますので、この表現から、Cは「現に建物を占有していない者」であると判断し、AはCに対し物権的請求権を行使できないという結論になります(この問題文では現実に乙建物を占有しているのが誰かは判断できませんが、「少なくとも」Cは占有者でない=請求の対象とならない、ということは判断できます)。
また、この論点については例外があり、最判平成6.2.8でいえば、「自らの意思で取得した建物の所有権登記名義を有する者も相手方となる」という部分が例外に当たります。
例えば、今回の過去問で、仮にBにまだ所有権登記名義が残っているが、Cが現実に占有している場合、Bは「現に建物を占有していない者」ですが、自らの意思で所有権登記をしており、いまだ登記名義人である以上、AはBに対し物権的請求権を行使できます。なお、この場合、Cは「現に建物を占有している者」ですので、当然(原則通り)、AはCに対しても物権的請求権を行使できます。
参考になった:3人
tashiro4566 2022-09-30 11:08:38
tashiro4566さん
ご回答を有難うございます。
ポイントは、「Cが乙建物の所有権の登記名義人となっているに過ぎない」→「少なくともCは占有者ではない」と判断することが必要なのですね。
また、さらに論点の例外まで説明いただき、有難うございます。
よく理解できました。ご指導に感謝申し上げます。
takugin97 2022-09-30 15:50:33
お疲れ様です。自身も過去問攻略をしていて、当該の肢ほかを質問しようとしていたところでした。まず、最初にご質問の結論及び理由から
1.
Q:「Cは、現に乙建物を占有している者ではないため」とありますが、建物の所有権登記名義人であるCをなぜ「占有を有している者ではない」と言えるのでしょうか。
また、別の解説では、「所有権を持ったことがない人に対しては、物権的返還請求はできない」とだけ記載がありました。Cは建物の所有権登記名義人であり、「所有権を持ったことがない人」にはあたらないと思うのです。
A:登記名義人だから、必ずしも。所有者であり占有者ではない。理由:日本では、『登記に公信力』がないため。*『公信力』の関連過去問:昭和60-11
原則:『土地所有権に基づく物権的請求権』は、現実に建物を所有することによって、その土地を占拠し、土地所有権を侵害してしている者を相手方とする。(ケースをあてはめると、)
そして、建物の所有権登記名義人が、『実際に建物を所有したことがなく』単に自己名義の所有権取得の登記を有するにすぎない場合、土地所有者に対し。建物
収去・土地明け渡しの義務を負うものでない。最判昭47.12.7 過去問26-7 ア
物権の直接性・排他性の原則>『所有権の絶対的・全面的に支配する権利』(民法第206条)から、物権的請求権(①物権的返還請求権 ②物権的妨害排除請求権 ③物権的妨害予防請求権)が派生してくるので、結論:当該肢のケースの単に、所有権登記名義人だから、明け渡しの当事者にならない。
2.
関連過去問24-8 4:A所有の甲土地上にある乙建物について、Bが所有権を取得して『自らの意思に基づいて所有権の移転登記』をした後、乙建物をCに譲渡したものの、引き続き登記名義を保有しているときは、Bは、Aからの乙建物の収去及び甲土地の明け渡し請求に対し、乙建物の所有権の喪失を主張して、これを拒むことはできない。解答:〇 理由:最判平6.2.8 はっきりと記載されていませんが。こちらのケースでは、Bが、建物を占有及び使用していると解釈できそうですね。私には、この読み取りが、試験では、難しいです。単純暗記で、『登記有り無し』で、単純に切れる肢では、なかったです、
以上、記入に時間がかかってしまいましたが、大変勉強させていただきました。私は、早く違いの分かる男(狐狸庵先生)になりたいです。
参考になった:1人
hinotori 2022-09-30 11:15:36
hinotoriさん
ご回答有難うございます。同じタイミングだったとは光栄です。
登記に公信力がないという基本的思考が必要だったのですね。
そして、建物の所有権登記名義人が、『実際に建物を所有したことがなく』という踏み込んだ表現により、理解が助かります。
個人的には、そこまで問題文にあれば迷わずに済んだかも、と感じました。
関連過去問24-8についても、やはり読み取りが難しい印象を受けますが、仕方がないのかもしれません…。
質問者の立場にご配慮いただいたご指導に、感謝申し上げます。
…その昔、「違いが分かる男」は缶コーヒーのCMにもいた気がします…
takugin97 2022-09-30 16:02:41