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民法/指図による占有移転と即時取得
Ocham 2022-11-08 01:29:55
択一過去問集 民法Ⅱ 36-23 についてです
Aがその所有する動産甲をBに寄託後、
Cに譲渡、指図による占有移転を経た後で
Dへ譲渡、指図による占有移転をした場合の問題ですが、
AがCに指図による占有移転をしたにも関わらず、
その後AがDへ指図による占有移転ができることがイマイチ理解できません。
BからするとAはすでに所有者ではないのになぜ指図ができるのか??
という疑問です。
これが可能なのであれば、
全く別のEという人物が動産甲は自分のものでBに寄託しているとDに嘘をついて
Dへ譲渡、指図による占有移転をしても即時取得が成立するのでしょうか?
上記の例では成立しないという理解なのですが、
すでに権利を失っており、B目線でも無権利者であると認識しているAと
上記例のEでは立場が同じではないかと思い、混乱しております。
Q1:BからするとAはすでに所有者ではないのになぜ指図ができるのか??
という疑問です。
A1:いわゆる、2重譲渡のケース(ビジネスでは、条件の良い方に売ることありますね)の理論構成として、『不完全物権変動論』があります。雪崩のように所有権が、移転していくイメージ、最終的に、物を所持(占有)して、完全に所有権が、移転します。なし崩し的な所有権移転論です。本ケースは、まだAに所有権の一部残ってます。社会科学での戦いです。算数の世界では、ありません。
Q2:全く別のEという人物が動産甲は自分のものでBに寄託しているとDに嘘をついてDへ譲渡、指図による占有移転をしても即時取得が成立するのでしょうか?
A2:即時取得の適用場面では、ありません。 理由:承継取得・即時取得の当事者と言えないから。Eは、リング外からの乱入者です。他人物売買契約が、考えられます。詐欺(民法96条1項)も該当します。
解法の前提として、1.『所有権』と『占有権』は、別の物権で、物(”もの”とは、読まず、”ブツ”と読むそうです。)物の位置は、所有者にあり。通常ケース 2.A=所有者 B=受寄者C=1回目の指図による占有移転権者 D=2回目の指図による占有占有移転権者 3.動産の対抗力は、『動産の引き渡し』民法178条 物の位置及び当事者により、1)現実の引き渡し 2)簡易の引き渡し 3)占有改定 4)指図による占有移転 の4パターンです。4.即時取得(民法192条)の占有形態で、占有改定(物の位置は、所有者)以外であれば、即時取得は、可能。指図による占有移転は、もちろん、可能。
5.所有権の移転は、意思主義(『当時者の意思表示のみによつて』民法176条)にて、移転する。
以上から、質問文から、わかりませんが、即時取得の要件が充足しているとすれば、結果;本問Dは、即時取得します。*関連過去問H23-8オ H27-8ウ
参考になった:2人
hinotori 2022-11-09 13:54:38
hinotoriさん
ご返信ありがとうございます!
大変参考になりました。
私の中でモヤモヤするのは
「まだAに所有権の一部残っている」という
部分なんだと思います。
指図による占有移転も引渡しの一つであるのに、
なぜDに所有権が完全に映らないのでしょうか?
寄託が終了し、BからDへの引渡しが行われるまでは、
Aにも所有権の一部が残っているということなのでしょうか?
Ocham 2022-11-09 16:05:55
hinotoriさん
丁寧にご回答ありがとうございます!
かなりスッキリしてきました。
占有は失われていないというのが盲点でした。
引き続き勉強頑張ります。
またよろしくお願いいたします。
Ocham 2022-11-12 07:42:56
Ocham さんこんにちは、リセットの回答を確認してくれたので、削除等アップデートしておきます。
本問は、即時取得の問題 民法192条:占有権の物権変動の問題でした。
過去問H23-8オ(・・・条件:即時取得の規定の適用があるから、この場合には、結果:Eが甲の所有権を取得することになる。)本筋は、即時取得の成否の問題(占有権の移転)であって、所有権の移転の問題ではありませんでした。物権変動を時系列で(甲を『水の分子構造H2O=H2水素+O酸素』H2を所有権に、酸素Oを占有権にざっくりとイメージすると、
1.A(所有権者=水素H2:占有者:寄託者=酸素O) B(甲の受託者:代理占有者=酸素O) 2.Aが、甲をCに譲渡、1回目の指図による占有移転の引き渡しを受けた。結果としてA(所有権=水素H2を喪失するが、占有権=酸素Oは、失っていません。受託者Bを通じて占有(他主占有=O)しています。)この段階で、即時取得の要件である『無権利者』を充足します。Cは、所有権=H2あり3.その後、A(無権利者である)は、Eに対して、甲を譲渡し、Eは、Aが無権利者であることについて善意無過失で甲を譲り受け、指図による占有移転(酸素=O)によって甲の引き渡しを受けた。即時取得の要件1)平穏・公然・善意無過失 2)無権利者からの取引行為をEが、充足しました。結果:Eは、甲の所有権を取得する(化学変化のイメージで、水素H2+酸素Oが、結びついた状態H20)〇となります。動産取引の『公信力』ある場面ですね。
参考:『無権利者の泥棒』でも、所有権(本権)なくても、占有権(自主占有:自分のためにする占有)あるので、仲間に占有を移転(例えば寄託)することは可能です。本問の2回目の指図による占有移転による引き渡しの段階での話です。関連過去問H27-8ウ
『・・・その後、Aが無権利者であることについて、善意無過失のDが、Aから、動産の甲を譲り受け、指図による占有移転によって、引き渡しを受けたときは、』即時取得のキーフレーズですね。問題前文及び肢をしっかり読むと『即時取得』の成否についてでした。4. WBC世界チャンピオン井上尚弥さんのスランプに入ったときのアドバイス
トレナーの父 井上真吾さん 曰く『簡単だよ、基本(本問では、占有権の本質)に戻ればいいんだよ!!』努力は、天才に勝る 井上真吾 著より引用
hinotori 2022-11-16 12:07:59
Ochamさん、こんばんは。
まず、「指図による占有移転」は、引渡しの態様の一つですから、引渡す側に本権(ここでは所有権)があるか否かは問いません。
つまり、所有権を有していなくても、その物を占有していれば、これを他に引き渡すことは可能です。
そこで、Aは動産甲をBに寄託していますが、当該寄託後もAは動産甲について間接占有をしています。
したがって、その後も指図による占有移転によって、CやDに引渡しを行うことは可能です。
次に、AはCに動産甲を譲渡し、指図による占有移転で引渡しを行っているため、その時点で完全に所有権を失っています。
したがって、Dが所有権を取得することができるか否かは、即時取得の要件を満たすか否かで判断します。
即時取得の要件として、「前主から占有を取得すること」があるため、まず前主には目的物たる動産に対して占有があることが前提となっています。
そうするとAには上記のとおり占有が認められますが、動産甲は自分のものでBに寄託していると嘘をついているだけのEには占有は認められず、当該要件を満たすことはできません。
よって、Aから譲渡を受けた者の即時取得は成立しても、Eから譲渡を受けた者の即時取得は成立しないという結論になります。
講師 小泉嘉孝
参考になった:6人
koizumi1 2022-11-10 23:31:40
Ochamさん、こんばんは。
まず、「指図による占有移転」は、引渡しの態様の一つですから、引渡す側に本権(ここでは所有権)があるか否かは問いません。
つまり、所有権を有していなくても、その物を占有していれば、これを他に引き渡すことは可能です。
そこで、Aは動産甲をBに寄託していますが、当該寄託後もAは動産甲について間接占有をしています。
したがって、その後も指図による占有移転によって、CやDに引渡しを行うことは可能です。
次に、AはCに動産甲を譲渡し、指図による占有移転で引渡しを行っているため、その時点で完全に所有権を失っています。
したがって、Dが所有権を取得することができるか否かは、即時取得の要件を満たすか否かで判断します。
即時取得の要件として、「前主から占有を取得すること」があるため、まず前主には目的物たる動産に対して占有があることが前提となっています。
そうするとAには上記のとおり占有が認められますが、動産甲は自分のものでBに寄託していると嘘をついているだけのEには占有は認められず、当該要件を満たすことはできません。
よって、Aから譲渡を受けた者の即時取得は成立しても、Eから譲渡を受けた者の即時取得は成立しないという結論になります。
講師 小泉嘉孝
参考になった:1人
koizumi1 2022-11-11 11:42:29
小泉先生
ご回答ありがとうございます。
最初の指図による占有移転後は、AとEは同じ立場かと
思ってしまっていましたが、
Aの占有は失われていないというのが盲点でした。
今後ともよろしくお願いいたします
Ocham 2022-11-12 07:42:26