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民法/法定地上権の判例
kororo 2022-11-20 12:10:23
最判昭10.8.10では、抵当地上の建物が再築された場合、旧建物のために法定地上権が成立する場合と同一の範囲内で法定地上権が成立するとされました。
一方、最判平9.2.14では、所有者が土地及び地上建物に共同抵当を設定した後、建物が取り壊され土地上に新たな建物が築造された場合、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しないとされました。
抵当権上の建物に法定地上権が成立するか否かに関し、同じく再築された場合ですが、なぜそれぞれにおいて結論が異なるのでしょうか?
よろしくお願いいたします。
kororoさん こんにちわ
まず、法定地上権(民法388条)の成立要件として、①抵当権設定当時、土地の上に建物が存在すること。➁土地と建物が同一の所有者に属すること。③土地・建物の一方に抵当権が設定されたこと。④土地・建物の所有者が競売により異なるに至ること。解釈及びあてはめで、当初は、要件が、緩和されていたようですが、法定地上權を利用した執行妨害の濫用事例が目立つようになった (以上、民法Ⅲ 第4版 内田 貴 先生著 東京大学出版会刊 515頁より引用)
判例百選・判例六法にて、最判平9.2.14掲載されていましたが、百選が手元にないので、最高裁判所のHP>判例検索で確認しました。昭和の判例は、ヒットしませんでしたが、前記判例のなかで参照されてます。 土地・建物の時系列の物権概要:1・抵当者は、A:共同抵当権設定時(建物・土地:所有権は、甲)土地・建物を全体で評価 2・建物取り壊し 3・土地賃借人乙:上告会社が、乙建物を同土地に再築した。 以上を前提にして、
Q:法定地上権の成否の違い理由について(原則ケース:1935年:最判昭10.8.10:成立 例外の特殊ケース:1997年最判平9.2.14:不成立 62年の時間差による社会経済状況の変化)
理由1.抵当権者・抵当権設定当事者の合理的意思に合致しているから(抵当権者は、抵当権実行後の不動産価値を予測・予定している。株式市場では、すでに、株価に織り込み済みのケースと同じです)
原則:『抵当権設定時に、建物が存在しており、 抵当権者は、法定地上権の成立を予定しているので、不測の損害は、受けないぞ』ロッキー先生>極みテキストより
2.トラブルの状況が違います。1)法律上の利害関係人:①抵当権者 ②債務者 ③ 抵当権設定者 ここまで、上記、判例は、共通事項 以下、当該、平成の判例 ④賃借人の存在:短期賃貸借 上告会社=新築建物の所有権者2)根抵当権>極度額の変更を4回していた。当然、不動産評価額を考慮(抵当権の実行時を含む)している。
3. 旧建物は、取り壊しにより、抵当権が消滅した。新築建物の所有権は、乙にあり。物上保証契約がないと、共同抵当権になりません。
4.判例変更:社会的経済的価値(法定地上権の成立)<金融(抵当権者の交換価値)建物を保護する
という公益的要請に反する結果となることもあり得るが、抵当権設定当事者の合理的意思
に反してまでも右公益的要請を重視すべきであるとはいえない。大審院昭和一三年(オ)第六二号同
年五月二五日判決・民集一七巻一二号一一〇〇頁は、右と抵触する限度で変更すべきもの
である。
5.共同抵当権での個別価値考慮説(従来の通説:建物抵当権は、その敷地利用権を含めた担保価値を
把握し、土地の抵当権は底地の担保価値を把握するものと考える)VS 全体価値考慮説(東京地裁実務:抵当権は、土地建物を共同抵当にとることによって、全体の担保価値を把握していることに着目し。そ
の利益が、建物の滅失・再築という事後的な事態によって害されるべきではない。法定地上権を認めませんてことですね。土地に関しては、更地の評価 )
6.例外の例外:2つの特段事情:1)土地・新築建物が、同一人 かつ2)土地の抵当権者が、新建物について、土地と同順位の設定を受けた事 で、法定地上権が成立します。
*卒論のテーマでした。経年変化や判例六法の要旨からは、判断できませんでした。以上、最高裁HP・極みテキスト 内田先生著 民法Ⅲ 参考にして、回答しました。
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hinotori 2022-11-21 11:22:24
kororoさん、こんばんは。
最判昭10.8.10と最判平9.2.14の違いは、設定されている抵当権が(同順位の)「共同抵当権」か否かに違いがあります。
当該共同抵当権では、建物に対する抵当権と土地に対する抵当権の2つがあります。
①建物に対する抵当権が把握している交換価値は、建物の価値と土地利用権である法定地上権の価値になります。
②土地に対する抵当権が把握している交換価値は、土地利用権である法定地上権の価値を差し引いた底地としての価値になります。
従来、判例は、当該共同抵当権は、①と②を別個に把握しており、建物の滅失によって①は失われ、②だけが残るが、再築された建物について法定地上権が成立しても、土地に対する抵当権としては、最初から底地の価値しか把握していないのであるから、抵当権者に不測の損害はないと考えました。
しかし、最判平9.2.14は、確かに抵当権は2つ存在しているが、抵当権者は、建物と土地の全体の価値を把握しているとしました。
つまり、底地の価値は土地抵当権の方で、土地利用権の価値(法定地上権相当額)は建物抵当権の方で把握しているだけであって、あくまで土地全部の価値を把握していると考えます。
そうすると、建物が滅失した場合でも、土地全部の価値を把握していることは変わっておらず、いわば価値の配置が変化したにすぎない、つまり、これまで建物抵当権の方で把握されていた土地利用権の価値(法定地上権相当額)は、今後は残った土地抵当権の方で把握されるようになるという発想をします。
したがって、再築建物について法定地上権を成立させてしまうと、(土地の所有者は当該土地を自由に利用できなくなり)土地の価値としてはその分下落し、底地の価値しか残らない(上記の発想が実現できない)ため、結果として、原則的に法定地上権の成立は否定されるとしています。
講師 小泉嘉孝
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koizumi1 2022-11-21 23:29:16