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aoshikayraさん、こんばんは。

「代理人と相手方が通謀虚偽表示を行った場合、判例は相手方の意思表示は有効であるとし、本人は貸金返還請求ができる」という結論が、大判大3.3.16で示してあるというのが、私の方では確認できなかったのですが、大判大3.3.16では、代理人と相手方との通謀虚偽表示は無効であり、相手方は、当該無効をもって本人に対抗できるか、つまり、本人が94条2項の第三者として保護されるかが論点となります。

そこで、本人は当該通謀がなされる前から本人の地位にあり、新たな利害関係人とはならず、94条2項の「第三者」にはあたりません。
あるいは、101条1項を根拠に、94条2項の「第三者」にあたらないと考えることもできます。

したがって、本人は保護されず、相手方は、本人に対して意思表示の無効を主張することができます。

講師 小泉嘉孝

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koizumi1 2023-08-26 18:35:10

小泉先生 はじめまして
初めて質問させて頂きました。丁寧なご説明ありがとうございます。過去の質問をそのまま引用させて頂いたのですが、私自身まだ勉強を始めたばかりで、質問の内容もあまり分かっておりませんでした。申し訳ありません。
改めてご質問させて頂きます事をご容赦願います。

<代理人と相手方が通謀虚偽表示(民94条1項)を行った場合>
代理人が本人を騙すつもりで相手方と通謀して虚偽表示を行った場合、たとえば、Aの代理人Bが相手方Cと通謀して虚偽の消費貸借契約を結び、CがAから借金をしたことにした場合、本人AはCに貸金返還請求ができるかが問題となった。この点、代理人が虚偽表示をした場合の本人は、94条2項の第三者に当たらない(大判大33.16)ので、BとCの通謀虚偽表示による消費貸借契約は94条1項により無効であるから、本人AはCに貸金返還請求ができないのが原則である。

とあるのですが、無効であるならそもそも消費貸借契約が無かった、なので、本人Aはお金を貸していない、貸金返還請求の必要はない。とはならないのですか?

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aoshikayra  2023-08-28 13:12:12

aoshikayraさん、こんにちは。

前提となる事案に不足している部分があることから、イメージが難しくなっていると思われます。

たとえば、代理人Bが本人Aの所有する不動産をDに売却したものの、当該売却代金を自己の借金返済に使用し、これをAに引き渡すことができなくなったBがCと通謀して、Cにこれを貸し付けたことにしたという場合が該当します。

この場合、本人Aが当該売却代金を回収するためには、BC間の金銭消費貸借契約が有効であるとして、Cに対してその返還を求めるというのも一つの方法となります。

「無効であるならそもそも消費貸借契約が無かった、なので、本人Aはお金を貸していない、貸金返還請求の必要はない。とはならないのですか?」については、確かにそうですが、そうなると、結局、Aが請求する相手はBであり、請求の対象はBが受領した売買代金ということになり、委任の規定(646・647)や不当利得(703・704)等で処理することになります。
しかし、事案(問題文)の文言から、それは論点となっていないということは、勉強が進むと徐々に理解できるようになります。

ここではまず、CがBとの契約が通謀であることを理由に無効を主張した場合に、Aが94条2項の第三者として保護されるかが論点となります。

結論は前述のとおり、当該代理におけるAの本人の地位は、BC間の通謀の前から成立していたため、ここでの第三者には該当せず、保護されません(大判大3.3.16)。

一方、当該事案に「代理人が本人を騙すつもりで相手方と通謀して虚偽表示を行った」という文言がある場合は、93条の類推適用も考慮する必要があります。
これは、代理人Bには、相手方Cと通謀して本人Aをだます権限はないので、この場合のBを相手方Cの「使者(他人が決定した法律行為を単に伝達する者。代理人と異なり自らは意思決定できない)」と考え、Bが使者である以上、101条の適用はなく、Bのなした行為は通謀虚偽表示でなくなります。

そこで、これをCがBを使って行ったAに対する心裡留保と構成し、Aが善意・無過失であれば、AC間は有効に効果帰属し、AはCに貸金の返還請求ができることになります(大判昭14.12.6)。

前者の94条2項では、Aが善意・無過失であっても、そもそもAは94条2項の「第三者」に該当しないため保護されませんが、後者の93条類推適用では、Aは心裡留保の「相手方」であり、善意・無過失であれば、保護される点が異なります(INPUTテキストⅠP103参照)。

講師 小泉嘉孝

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koizumi1  2023-08-29 15:27:36

小泉先生、こんにちは

改めてのご回答ありがとうございます。
非常に分かりやすかったです。私自身がそもそも論点を分かっていなかったですね。このケースでは第三者として保護されるか否かが問われていると言う事もしっかりと把握出来てありませんでした。初学者なんですが、いろいろ考えてこんがらがってしまう事が多々ありますが、毎日努力していきたいと思っております。
これから多々、質問させていただくと思いますが、何卒よろしくお願い致します。

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aoshikayra  2023-09-01 16:30:32

aoshikayraさん、原告A(本人)の弁護士・司法書士の先生になった立場になって、
1.手続法からのアプローチも考えてみて下さい。
裁判官は、たとえ『通謀虚偽表示』が、代理人Bと相手Cにあっても忖度してくれません。
理由:私的自治にかかわる弁論主義から。テーゼ1:裁判所は、当事者の主張しない事実を裁判の基礎にできない(訴訟の資料と証拠資料の区別) テーゼ2:当事者間で自白された事実は、裁判所を拘束する(自白の拘束力)。テーゼ3:裁判所は、当事者の主張してない証拠を職権で証拠調べできない(職権証拠調べの原則的禁止)。民事訴訟法 小林秀之先生著
新世社刊 300頁より引用
以上から、原告Aは、売買代金支払い請求(小泉先生が例示されたケース)をするのであって、わざわざ、難しい通謀虚偽表示:民法94条は、使いません。理由:自白がないと立証困難・迂遠なのに対して、売買契約は、立証のハードルが低い。請求の趣旨 :売買代金支払い請求 請求原因:債務不履行 415条 555条
*被告B・Cの被告代理人は、苦し紛れに、民法94条を主張したんだと思います。当該判例について:裁判所判例検索では、ヒットせず、手元の基本書にも載ってませんでした。
2.実体法からのアプローチ:『代理人Bと相手方Cとの通謀虚偽表示』
1)前提:御質問ケースの本人Aは、94条2項の第三者ではない。理由:取引の安全を担保するため、虚偽の外形を作出した者に、ペナルティーを科す制度であり、本人Aは、当該外形を信頼して取引に入った者でないため。
2)学説:①93条ただし書類推説  ➁ ア:A本人保護肯定説 イ:A本人保護否定説 ③94条2項類推適用説
④信義則説・権利濫用説 
判例:大判昭14・12・6(小泉先生も御紹介されてます)以上、民法講義 近江幸治 先生著 第6版 成文堂 
262~265頁より引用
 以上です。民法94条のツールを使う場面ではなかったですね。




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hinotori 2023-08-30 16:01:14

hinotoriさん、こんにちは

詳しくご回答ありがとうございます。
私自身、この夏に司法書士の勉強を始めたばかりの初学者なもので、hinotoriさんのご説明の中の少しの部分しか理解できませんでしたが、早くこれを理解出来る様になりたい!とモチベーションが上がりました。
また度々、質問させていただきたいと思っておりますが、よろしくお願い致します。

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aoshikayra  2023-09-01 16:35:00



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