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こんにちは。
制度趣旨ということであれば確かに要役地側に有利に感じますが、もしこの地役権がなければその土地はどうなるかというと
誰も使わない死んだ土地になってしまうからではないでしょうか。
例えば時効もそうですが国としてはちゃんと使ってくれるのであれば、所有権を持ちながら放置してしまう人よりも
平穏かつ公然に取得した人が使ってくれた方がその土地を活用することのメリットがあるという考えなわけです。
確かにその土地だけを切り取るとあまりに要役地側に有利に感じるとしても少し引いた目で見るとその地区としては
有効に活用してくれていることになるからだと思います。

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ysyki7thagst 2024-04-17 04:45:08

ysyki7thagst さま
返信ありがとうございました
承役地の土地があまり有効活用出来ていないような場合は、考えていませんでした、なるほどです。
本を読んで講義を聞いて勉強していても、やはり法律ですから、自然科学のような訳にはいかず、
現実の状況がわからないと理解もなかなか進まず、ゆっくり勉強してみます。
私の頭の中では、要役地と承役地があり、どちらが上下というわけでもなく、ただ要役地のために
承役地が差し出されているようなイメージでした。
以前、不動産登記の「登記事項要約書」がどうしてあるのか分からずネットで調べたことがありました。
登記事項の全部や一部事項証明書に比べて
・その登記所へ出向かないともらえない
・内容もあくまで要約
証明書ならネットで依頼できるのに?何で要約書なんて制度があるのかな??と思ってしまいました。
ネットで調べると、正しいかどうか分かりませんが、「料金が安いから不動産屋が使う」と書いてありました。
その時はなるほどと思い、やっぱり現実を知らないとダメだなと思いました。
今回も本だけ読んでいるから制度趣旨などが想像できなかったのだと思います。
あまり考え込まず先へ進むことにします。
ありがとうございました。

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373nao  2024-04-17 08:21:29

373naoさん、こんにちは。

地役権は、土地相互間の利用調整をする制度の一つといえます。
この利用調整は、実際には、要役地所有者の便益となり、承役地所有者の負担となっているので、「人」の便益と負担から成り立っているのですが、これをあえて「土地」の便益と負担と構成します。
そうすることによって、要役地所有者又は承役地所有者に変更があっても、内容の変わらない利用調整が確保されることになります。

1 地役権を設定することによる要役地所有者の利益
隣接する土地の利用調整をするための制度として、民法は相隣関係として、所有権の章にこれを規定しています(209条~)。

しかし、相隣関係は、土地利用に最低限の範囲で隣地の使用を認めているにすぎません。(ex.囲繞地通行権では、通行の場所及び方法は、通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。211Ⅰ)

したがって、隣地以外の土地を使用する場合やたとえ隣地であっても相隣関係で規定されている範囲を超えて調整を必要とする場合に地役権を設定する実益が生じます。

さらに地上権や永小作権では、土地の利用目的が、工作物又は竹木を所有(地上権)、耕作又は牧畜(永小作権)と制限されていますが、地役権には、原則的にその制限がなく、幅広くこの権利を利用することができます。

賃借権や使用貸借権でも、他人の土地を使用することができますが、いずれも債権的権利であり、その対抗力が常に確保されるわけではなく、その点で物権である地役権の設定を受ける方が優位であるといえます。

2 地役権を設定することによる承役地所有者の利益
 上記賃借権のほか、地上権や永小作権を設定した場合、利用権を有する者はその土地を全面的に使用収益する権利を取得するため、設定者は、特約がない限り、その土地を利用できなくなります。

これに対して地役権の場合は、地役権者が承役地を排他的に支配するのではなく、承役地所有者もこれを使用収益でき、共同使用権とすることができる点が、その特徴となります。

対価については争いがあり、古い判例(大判昭12.3.10)は否定的ですが、多くの学説ではこれを認めています(上記判例も、当事者間の債権契約としての効力は認める)。
立法者も「地役権ヲ設定スルニハ多クハ有償デ無償デ設定スルコトハナイ」(法典調査会民法議事11巻157-梅謙次郎)とされています。

また、実際には、「無償」しか認めないというのであれば、承役地として土地を提供する所有者は、ほぼ存在しないといえます。

そこで、「地代」「借地料」という項目とするかは別として、実務的には、補償金等の名目で一時的に支払われることが多いとされています。

その上で、承役地所有者は、地役権の非排他性という性質から、同一の土地の上に要役地所有者を異にする数個の地役権を設定できる(複数の者から対価を取得できる)わけですから、これらを考慮すると、地役権が専ら承役地所有者にとって不利なものとはいえません。

もちろん、(時効取得を除き)契約ですから、あらかじめ不利な内容であることが明らかであれば、譲歩する義務などなく、契約を結ぶことに応じなければ良いともいえます。

存続期間についても、対価と同様にその登記はできませんが、当事者間で存続期間を定めることはできると解されています。民法上、存続期間の定めがないのは、元来地役権は永久のものとして設定されたローマ法以来の沿革とされています。また、フランス法では、所有権について永久性が認められるのであれば、要役地所有権の従たる権利である地役権にも永久性が認められるという発想であり、このような意味での永久性は、日本法の下でも、特約の有無にかかわらず地役権の原則型として認めるべきという見解があります。

特約(存続期間の定め)として「永久」とすることができるか否かについては争いがありますが、地役権は承役地の所有権を制限する程度が少ないものであり、かつ、承役地所有者の利用を完全に奪うものではない等から、一般的には認められています。ただ、要役地のための通行や引水の必要がなくなっても、地役権のみを存続させるというのは、地役権の本来の性質に反するものであり、永久といってもそれは「要役地がこれを必要とする限り」という限定があるのは当然だとも考えられています。

3 付従性・不可分性
(1)地役権は、要役地所有権の移転に伴って当然に移転します(付従性-281Ⅰ)が、これは地役権が、要役地の便益に資する権利であることから、要役地を離れて地役権が独立して移転することはないというものです。
(2)土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない(不可分性-282Ⅰ)となっているのは、地役権は、要役地と承役地という土地と土地の関係と構成されており、持分ごとに独立した権利ではないことから、特定の共有者との関係でその消滅を認めないということです。
また、この不可分性は、土地の共有からくる必然的な帰結であるという考え方もあります。たとえば、要役地がABC3名の共有(各持分3分の1)の場合にCの持分についてのみ通行地役権を消滅させた場合に、3分の2だけ通行するというのは事実上不可能ということであり、結局、通行できるのか、全く通行できないのか、いずれかしかないというものです。
 
(3)土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する(284Ⅰ)というのも、地役権は、要役地という土地のために存在する権利であることから、要役地の共有者の一人が自己の持分についてのみこれを取得しているという発想がありません。


(4)地役権の時効取得についての共有者に対する時効の更新は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力を生じない(284Ⅱ)。地役権を行使する共有者が数人ある場合には、その一人について時効の完成猶予の事由があっても、時効は、各共有者のために進行する(284Ⅲ)。これらは、元々、時効の更新、完成猶予が相対効であることからすれば、当然の内容だといえます。
また、地役権の消滅時効について、要役地が数人の共有に属する場合において、その一人のために時効の完成猶予又は更新があるときは、その完成猶予又は更新は、他の共有者のためにも、その効力を生ずる(292)とする規定についても、これは一見284ⅡⅢと矛盾するかのように思えますが、やはり、地役権は、要役地という土地のために存在する権利であり、共有者の持分ごとの存否を考えない、つまり、共有者の一人でも地役権を失わなければ、その地役権は依然として存続するという発想に基づいています。


以上のとおり、時効については、地役権を取得しやすい方向、消滅しにくい方向に規定されていることは確かですが、これは要役地所有者だけを特別有利に扱うという発想ではなく、地役権は要役地という土地のために存在する権利であるという、その権利の性質から生じているものであり、また、時効の相対効からの帰結であると理解しておきましょう。

講師 小泉嘉孝

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koizumi1 2024-04-23 15:15:00

小泉先生、大変詳しく、解答して頂きありがとうございました。
これからも、宜しくお願い申し上げます。

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373nao  2024-04-25 12:51:14



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