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民法/民法平8-15
zuka12 2024-11-26 08:59:01
A所有の建物についてBが抵当権を設定した後に、Aがその建物をCに賃貸して引き渡した場合における権利関係に関して、Bが抵当権の設定登記と同時にBを権利者とする賃借権設定仮登記をした場合において、その本登記がされたときは、Bは、賃借権に基づく妨害排除請求権を行使して、Cに対して建物の明け渡しを請求できる
→誤り
本登記をした第一賃借権者であるBは、第二賃借権者に対して、建物明け渡し請求ができると考えるのですが誤りなのでしょうか。ご教示頂けると幸いです。
zuka12さん、こんばんは。
平成8年第15問5は、「その本登記がされたときは、AC間の賃貸借の期間が3年であっても、Cは、Bに対して賃借権を対抗することができない」かを問う問題となっていました。
これは、平成15年改正前に存在した抵当権に劣後する短期賃貸借の保護という制度を前提としています。
抵当権に後れる賃借権は、当該抵当権実行時に消滅するのが原則ですが、その賃借権が短期賃貸借である場合に限って、抵当権設定登記後に対抗要件を備えたものであっても、当該賃貸借の期間中は買受人に対抗できるというものでした。
元々、抵当権者の保護と設定者の使用収益権の実効性確保のバランスから定められたものですが、実際には、競売妨害の目的で設定されたり、高額な立退料が請求されたりして、抵当権実行による換価における大きな障碍となっていました。
そこで、これに対する対策として、抵当権者自らが抵当権設定登記とともに停止条件付の短期賃貸借の当事者となり、その仮登記を受けるということがなされるようになりました(併用賃借権)。
この仮登記及びその後の本登記によって、後れる賃借権を排除することを目的としています。
つまり、これは抵当権者が自ら当該不動産を使用することを目的として定めたものではないということになります。
そこで、最高裁は当該併用賃借権を真正な賃借権といえず、後順位の短期賃借権の出現を事実上予防する意図のもとになされたにすぎないとして、劣後する短期賃借権を排除する(明渡請求をする)ことを認めないという結論を示します(最判昭52.2.17・最判平.6.5)
本肢では、当時この最高裁の結論を問う問題として出題され、Cの賃借権は、期間3年の短期賃借権であり、建物の引渡しにより対抗要件も備えているため、Bからその賃借権の排除請求は認められないというのが正解となっていました。
しかし、平成15年の民法改正により、この短期賃貸借の保護という制度が廃止されたことから、前提を失った本肢について検討をする必要はないと考えます。
なお、当該短期賃貸借保護の制度廃止によって、抵当権に劣後する賃借権は、原則どおり抵当権者・買受人に対抗できないものとなりましたが、賃借人に対する一定の保護を考慮し、建物賃貸借の明渡猶予制度(395)・抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力制度(387)が成立したという流れになります。
講師 小泉嘉孝
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koizumi1 2024-11-27 18:19:42