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商登法/重要な事業の一部の譲渡
Harry 2025-04-08 16:46:36
会社法467条1項2号について、株式会社が事業の重要な一部の譲渡(当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないものを除く。)をする場合、その効力を生ずる日の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない(会社法467条1項2号)。もっとも、いわゆる簡易事業譲渡の要件を満たす場合、すなわち、譲り渡す資産の帳簿価格が総資産額の5分の1以下の場合には、たとえ当該譲渡が事業の重要な一部の譲渡に当たるとしても、株主総会の決議により当該行為に係る契約の承認を受ける必要はない(会社法467条1項2号括弧書)との説明がある。
言っていることがよくわかりません。事業の重要な一部の譲渡を「当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額の5分の1を超えないものを除く。」としながら、「譲り渡す資産の帳簿価格が総資産額の5分の1以下の場合には、たとえ当該譲渡が事業の重要な一部の譲渡に当たるとしても、」と言っている。譲り渡す資産の帳簿価格が総資産額の5分の1以下の場合には、事業の重要な一部の譲渡に当たらないのだから、論理矛盾と思えます。こんなところで悩んでないで、「事業譲渡において、総資産の5分の1以下の場合、株主総会決議を要さない」とだけ覚えておけばよいのでしょうか。
Harryさん、こんばんは。
まず、「譲り渡す資産の帳簿価格が総資産額の5分の1以下の場合には、事業の重要な一部の譲渡に当たらないのだから」というのは、「重要な一部」か否かの区別を譲渡資産の帳簿価額のみで判断していることになります。
確かにそのような見解も存在しますが、少数派といえます。
この判断基準について、判例は明らかにしていませんが、「量的」及び「質的」の両面で判断され、量的基準の中でも、上記の帳簿価額だけでなく、売上高・利益・従業員数等が問題となり、質的基準としては、譲渡対象部分が小さくても、沿革等から会社のイメージに大きな影響があるか否か等を問題にしていくのが一般的な見解です(株式会社法 第9版 江頭P1020参照)。
すなわち、「譲り渡す資産の帳簿価格が総資産額の5分の1以下の場合には、事業の重要な一部の譲渡に当たらない」というような単純なものではないということになります。
そこで、譲渡の対象が事業の一部の場合には、上記基準をもとに、「重要な一部」か否かを区別します(この部分が試験で問われることは、ほぼあり得ません)。
その上で、重要な一部でなければ、たとえ、譲り渡す資産の帳簿価格が総資産額の5分の1を超えていても、株主総会の特別決議による承認は不要となります。
一方、重要な一部であっても、譲り渡す資産の帳簿価格が総資産額の5分の1以下の場合には、株主総会の特別決議による承認は不要となります。
したがって、「もっとも、いわゆる簡易事業譲渡の要件を満たす場合、すなわち、譲り渡す資産の帳簿価格が総資産額の5分の1以下の場合には、たとえ当該譲渡が事業の重要な一部の譲渡に当たるとしても、株主総会の決議により当該行為に係る契約の承認を受ける必要はない(会社法467条1項2号括弧書)との説明がある。」というのが、どこの記載かはわかりませんが、なんらの矛盾も生じていません。
自分の感覚というのは、物事を理解する上で大切な要素ですが、あまり強く思い込みすぎたり、必ずこうだと決めつけてしまうと、新しいことを学べなくなるので気をつけましょう。
自分が気づいていない視点があるのではないかと、省みる謙虚さと余裕も大切です。
講師 小泉嘉孝
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koizumi1 2025-04-09 21:21:05
小泉先生
「譲り渡す資産の帳簿価格が総資産額の5分の1以下の場合には、事業の重要な一部の譲渡に当たらない」というような単純なものではないということなのですね。いつもクリアな回答、ありがとうございます。よくわかりました。
Harry 2025-04-11 12:44:12