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不登法/買戻権/買戻特約の登記申請情報について
tonton-chan 2017-08-11 07:59:43
売買を原因とする所有権移転登記の登記原因証明情報たる売買契約書に記載された金額と異なる売買代金及び契約費用を買戻特約の登記申請情報に記載しても、当該登記申請は受理される(昭和35年8月1日民甲1934号通達)。
上記のとおり解説書に記述がありますが、所有権移転のための売買契約と当該買戻特約が同時に締結されていることが、買戻特約の登記に要求されているにもかかわらず、所有権移転の登記原因証明情報(売買契約書)に記載された売買代金及び契約費用とは異なる内容(売買代金と契約費用)で、買戻特約の登記申請が受理されるのは、なぜですか。
同時契約ならば、両者の内容は同じはずですし、たとえば、地上権の登記において登記原因証明情報たる契約書に地代の記載があれば、地上権の登記申請の際に、この地代について申請情報の内容にしなければ、登記申請が却下されるとの取扱いに比べると、上記買戻特約の取扱いは乱暴だと考えます。
上記買戻特約の取扱いとなる理由または考え方をご教示ください。
tonton-chanさん、こんばんは。
まず、買戻特約の登記の申請において、その登記原因証明情報と申請情報における各売買代金の記載に不一致があれば、却下事由となります(25⑧)。
次に、現在では、所有権移転登記の申請及び買戻特約の登記の申請は、ともに登記原因証明情報の提供が要求されていますが、上記先例が出された当時は、「登記原因証明情報」という制度ではなく、「登記原因証書」(売買契約書等)又は「申請書副本」(申請書の写し)を添付することとなっていました。
そこで、本件でも、所有権移転登記の申請において、売買契約書を登記原因証書として添付し、買戻特約の申請では申請書副本を添付することになったという前提があります。
その上で、当該所有権移転登記の登記原因証書たる売買契約書の売買代金と買戻特約の申請書に記載された売買代金の不一致がある場合に、その申請が受理されるかが問題となったものです。
結論は、これを受理するとしたわけですが、その理由としては、以下の2つが考えられます。
① 買戻特約の登記の申請書には、買主が「現実に支払った代金」を記載すべきであるが、売買契約書の売買代金は、税対策等から過小に記載されている場合がある。
② 登記官は、たとえ同時に申請された登記であっても、買戻特約の登記の申請については、当該申請書に添付された添付書類だけで審査すべきであり、所有権移転登記の申請に係る添付書類に基づいてこれを審査すべきではない。
現在の不動産登記法のもとでは、特に実務上は契約書そのものを登記原因証明情報として使用することが少ないため、上記が問題となるケースは稀であると思われますが、一応理論上は論点として成り立ちうるというという位置づけで押さえておけば十分であると考えます。
講師 小泉嘉孝
参考になった:8人
koizumi 2017-08-12 20:17:01
小泉先生、ご回答ありがとうございました。
初学生にとっては、何度考えても見当すらつけられなく困っていたことでも、今回、具体例を挙げて分かりやすく解説していただけたことに、非常に感謝しています。
今回、「所有権移転登記の申請では売売買契約書を登記原因証書として添付し、買戻特約の申請では申請書副本を添付」という不動産登記法の過去の事情や「登記官は、申請書に添付された添付書類だけで審査すべきである」という形式審査主義と掛け合わせて考えなければ、登記研究の結論の本当の意味というものが理解できないと気づかされました。
tonton-chan 2017-08-26 07:43:48