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民法/即時取得の可否
oyajisan 2017-10-31 10:58:28
「本人Aが、代理人Bをして、Cが所持する動産Xを購入した。当該Xは、Cの所有物ではなく、小遣い欲しさに、父親Dの所有物をDに無断で持ち出した物であった。Aは、Xが、Cの所有物でないことを知らなかったことについて、過失があったが、Bには過失がなかった。」という事案において、Aは、Xを即時取得できるかについて、Aが、法人である場合(平6-3-2)と自然人である場合(平9-2-イ)で、結論が異なる理由を教えて下さい。
oyajisanさん、こんばんは。
意思表示の瑕疵の有無は、原則として、代理人を基準に判断し(101Ⅰ)、本人から特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情、過失によって知らなかった事情について代理人が善意や無過失であったことを主張することができない(101Ⅱ)。
民法192条における善意無過失の有無は、法人については、第一次的にはその代表機関について決すべきであるが、その代表機関が代理人により取引をしたときは、その代理人について判断する(最判昭47.11.21)。
この2つの論点を質問されているのだと思われますが、まず、oyajisanさんが設定された事案の内容が、本人A(自然人)が代理人Bに対して、Cが所持する動産Xの購入(特定の法律行為)を委託したというもの(平成9年第2問イは、Aが代理人Bに特定の動産を買い受けることを委託した事案)であれば、本人Aに過失がある以上、たとえ代理人Bが善意でかつ無過失であっても、即時取得(192)はできないことになります(101Ⅱ)。
次に上記判例(最判昭47.11.21)の事案は、代表機関(代表取締役)が善意かつ無過失で、代理人が悪意というもので、平成6年第3問2の法人代表者に過失があり、代理人が善意かつ無過失という事案とは異なります。
そこで、平成6年第3問2のパターンについては、直接には判例は触れていないということになりますが、即時取得の要件である善意無過失の判断については、代表機関が代理人により取引をしたときは、その代理人について判断するという結論は、本肢にも当てはまると考えるべきで、代理人が善意かつ無過失である以上、即時取得が成立することになります。
さらに、その先の101条も適用についてもここに当てはめ、つまり、代理人が善意かつ無過失であっても、法人代表者に過失があるならば、これを本人(法人)の過失として、即時取得の成立を否定するという展開は、理論上、十分に成り立つものと考えます。
しかし、そこまで踏み込んで明確に結論を示した判例が存在しないことと、そもそも平成6年第3問2の問題文の中では、代理人に特定の動産を買い受けることを委託したとの内容が示されていないことから、解答の上で、101条の適用は考慮すべきでないと考えます。
講師 小泉嘉孝
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koizumi 2017-11-02 13:06:00
有難うございました。
最後の段落の「しかし」以下の記述に疑問が有ります。
法人が、何らかの行為を、代理人をして行わしめる場合に、「具体的に何をするか」について、理事会等の決議を承けて代理人に委任するのではないでしょうか?
それに、別の質問にも書いたのですが、民法101条2項の適用にあたって、判例や通説は、「本人の側に、代理人の行為をコントロールできる状況にあれば足りる」とか「本人の指示を契機として代理人が行為したという関係があればいい」というように、かなり緩やかに解しているのではないでしょうか?なぜ、このような判例や通説に従われないのでしょうか?疑問です。
oyajisan 2017-11-02 13:33:56
oyajisanさん、こんにちは。
もちろん、代理人に法律行為の委任をする場合は、「具体的に何をするか」を決定していますが、それが「特定の法律行為」(101Ⅱ)に該当するか否かは、また別途検討する必要があります。
この点は、他に質問を挙げられたところに解説を入れておきましたので、ご参照下さい。
講師 小泉嘉孝
koizumi 2017-11-02 14:44:00