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会社法/利益相反取引の特則/監査等委員会の承認
2020-atsuko 2018-02-04 22:00:03
監査等委員会設置会社において、取締役が利益相反取引につき取締役会の承認に加えて、監査等委員会の承認を受けた場合には、
その取引によって株式会社に損害が生じたとしても、取締役は、その任務を怠ったものと推定されない(423条4項)。
と規定されています。
ところが、指名委員会等設定会社の監査員会の承認では、この特則が適用されず、その理由は、監査委員会は、「監査機能」のみを有するからと
解説されています。
この「監査委員会は「監査機能」のみ」という意味が十分理解できないため、質問をさせてもらいました。
「監査機能」のみ、という意味は、もちろん「会計監査のみ」という意味ではないですよね。(確認)
指名委員会等設置会社における監査委員会には、監査委員会による調査権(405条)や取締役会への報告義務(406条)、監査委員による執行役等の行為差止め請求権(407条)があり、単なる会計の適法性監査だけでなく、妥当性監査の権限を含めた「執行役等の職務執行監査」も有するとされています。
つまり、監査委員会は、405~407条による権限や妥当性監査の権限があろうとも、これを「監督」とは呼ばず、あくまでも、それは「監査」の範疇ということでしょうか。
また、監査委員会が423条の特則の適用を受けないのは、株主総会において人事や報酬に関する意見陳述権が、監査等委員会のように認められていないことを指して、「監督」権限を有していないということでしょうか。
このような理解でよろしいのかお聞きしたいと思います。ご多忙中のところ、大変申し訳ございませんが、よろしくお願いします。
2020-atsukoさん、こんにちは。
テキスト会社法・商法ⅠP312a枠内「cf.これは監査等委員会が監査等委員である取締役以外の取締役の人事(指名及び報酬)についての意見陳述権を有し、これを通じて業務執行者に対する「監督機能」を有していることを根拠とするためである。したがって、指名委員会等設置会社における監査委員会は、「監査機能」のみを有する監査機関にすぎないため、当該特則の適用はない。」の部分は、2020-atsukoさんの理解されているとおりです。
まず、指名委員会等設置会社における監査委員会の「監査機能」のみというのは、その前の文言「監督機能」との対比で、「のみ」と表現しているもので、「会計監査のみ」という意味ではありません。
次に監査委員会の権限としては、違法性監査の権限が認められることは会社法407条の差止請求権等を有することから明らかであり、さらに執行役等の職務執行の妥当性を監査する権限も含まれるとするのが通説的解釈だといえます。
そうすると、この職務執行の妥当性監査は、「監督」と呼べないのかというと、確かに微妙な部分が生じてきます。
それは、監査委員会を構成する監査委員は、会社の業務執行の妥当性(効率性)を監督することをその中心的業務とする取締役会の構成員であることを前提とする地位であるため、その性質を帯びるのは当然だともいえます。
ただ、それゆえに、監査等委員会設置会社における監査等委員会の権限との差異をこの点に求めるのは妥当ではなく、これはどちらかに分類するとなると「監査」ということになります。
やはり監査「等」委員会と監査委員会の決定的な差は、監査等委員以外の取締役の選任等及び報酬等についての株主総会での意見陳述権の有無といえます。
指名委員会等設置会社においては、これに対応する権限を有するのは、指名委員会及び報酬委員会であって、監査委員会ではありません。
つまり、この人事(指名及び報酬)に関する権限の有無により、「監督」権限まであるとするのか、「監査」権限のみとするのかの違いとなって表現されていると理解してください。
講師 小泉嘉孝
参考になった:8人
koizumi 2018-02-07 21:58:43
小泉先生、ありがとうございました。
質問者である私が、うまく説明できない部分を先生が質問の意図をくみ取って解説していただきました。
おかげ様で、この箇所の理解を深めることができました。
これからもご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願い致します。
2020-atsuko 2018-02-11 21:18:24