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会社法/新株予約権の質入の対抗要件
2020-atsuko 2018-03-14 13:11:18
新株予約権の質入の対抗要件について教えて下さい。
解説では、証券発行新株予約権の場合には、対会社、対第三者ともに、証券の占有が質入の対抗要件となるとなっています。
これは、新株予約権の譲渡の対抗要件とは異なっており、「譲渡」の場合には、記名式のときには、対会社の対抗要件は新株予約権原簿の名義書換で、第三者の対抗要件は新株予約権証券の占有という2つに分けて考えると解説されていました。
そこで、冒頭の問題に戻って考えてみたのですが、証券発行新株予約権の場合には、対会社、対第三者ともに証券の占有が質入の対抗要件となるというのは、証券発行の略式新株予約権質の場合に適用される規定であり、登録新株予約権質の場合には、質入の対抗要件は、対会社と対第三者で分けて考えることになるのでしょうか。
つまり、対会社は、新株予約権原簿の質権者の記載、第三者は新株予約権証券の占有になるということでしょうか。
無記名式≒略式、記名式≒登録質と考えると整理がつきやすいと思いますが、このような理解は間違いでしょうか。
ご多忙中のところ、大変申し訳ございませんが、よろしくお願いします。
2020-atsukoさん、こんばんは。
まず、証券「不発行」の新株予約権の質入れについては、新株予約権原簿への記載・記録が対会社・対第三者への対抗要件となります(268Ⅰ)が、その記載・記録がなされることで、「登録新株予約権質権者」となるため、「登録質」のみが存在し、「略式質」という形態は存在しないことになります(振替制度の対象を除く)。
次に、証券「発行」の新株予約権は、「記名式」の証券が発行されている場合と「無記名式」の証券が発行されている場合に分類され、「記名式」はさらに「登録質」(新株予約権原簿に質権の登録あり)と「略式質」(新株予約権原簿に質権の登録なし)に分類されます。
よって、無記名式は略式質のみですが、記名式は登録質に限られません(会社法269条は、質権設定者に「略式質」にするか「登録質」にするかの選択を認めた規定と解されています)。
つまり、新株予約権原簿に「新株予約権者」の記載・記録はあるが、「質権者」の記載・記録がない(「記名式」かつ「略式質」)というパターンがあるということです。
いずれの場合も、共通して要求される対抗要件は、証券の占有継続です(268Ⅱ)。
そこで、「登録質」では、新株予約権原簿に質権者が記載・記録されていますが、これだけでは足りず、証券の占有継続をも要求されることになります。
その結果、登録新株予約権質権者が新株予約権原簿に記載・記録されていても、証券の占有を失った場合は、対第三者だけでなく、会社に対しても自己が質権者であることを主張できないことになります。
講師 小泉嘉孝
参考になった:9人
koizumi 2018-03-16 23:50:28
小泉先生、ありがとうございました。
わたしは、てっきり記名式の場合は、登録質と思い込んでいました。
先生の解説を拝読させていただき、このあたりの整理が進みました。
これからもご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願い致します。
2020-atsuko 2018-03-17 22:17:16