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労災保険法/暫定任意適用事業所と特別加入
thth1233 2018-01-18 03:37:42
労災保険の暫定任意適用事業の除外に「農業(畜産及び養蚕の事業を含む)であって、事業主が特別加入した事業」とあり反対解釈として、この暫定任意適用事業の要件に農業等の事業は「事業主が特別加入
していない」とあります。それでは、水産の事業で、常時使用労働者数5人未満などその他の暫定任意適用事業としての要件は満たしているとしまして、この水産の事業主が特別加入している場合でも、暫
定任意適用事業とされるのでしょうか?水産業や林業の暫定任意適用事業の要件に農業等みたいに「事業主が特別加入していない」の要件はないので、よくわかりません。
ご教授お願いたします。
お考えの通りです。
この扱いは平成3年の法改正から始まっています。
① 昭和47年の改正で、暫定任意適用事業を除き労働者を使用するすべての事業が適用事業とされた。
(労災保険の適用範囲の拡大)
② 昭和50年の改正で、暫定任意適用事業の範囲が個人経営の労働者5人未満の農林水産業の一部に
まで縮小された。
③ 農林水産業の内、
(a) 林業は常時労働者を雇用すれば規模に関係なく強制適用になる
(b) 水産業は総トン数5トン以上の漁船は河川湖沼港湾等の内水面のみにおける操業を除いて
強制適用になる
この(a)(b)の理由で、農業に比較してさらなる適用拡大の必要性が薄いとされ、林業・水産業に
ついては、昭和50年改正以降の適用拡大は検討されなかった。
④ 農業については労災事故が少なくなく、さらなる適用拡大の必要性は検討されていたが、
(c) 農村部には「ゆい」等の、集落の互助的な労働力提供の習慣があり、これによって労働力を
提供する者は労働者とは言えないが、一般的な労働者との識別は困難である。
(d) 雇用が農繁期の短期間に集中しており、実態の把握が困難である。
この(c)(d)の理由で、個人経営の労働者5人未満の農業を強制適用事業とした場合に適用事業と
なるか否かの判断が困難であるとされていた。
⑤ 平成3年の改正で、農業関係者の特別加入が拡充され、農業経営者が労災保険の適用を受けられる
範囲が広まった。これに伴い、事業主が特別加入している農業の事業が労働者を使用する場合は、
事業自体を強制適用にすることで、制度の均衡を保ち、労働者の保護を図ることになった。
以上のような歴史的経緯があります。
農業経営者は、任意加入によって事業を適用事業にした上で、中小事業主として特別加入するか、一人親方としての特別加入か、どちらでも選べますが、一人親方としての特別加入をした場合は、その事業主の事業は強制適用になります。
林業・水産業の場合は、先に書いたとおり、単に「5人未満」かどうかだけではなく、さらに他の要件で強制適用の範囲がある程度広くされているため、現在でもこのような扱いはありません。
ただし、林業・水産業の場合でも、労働基準法75条から84条の適用はあるため、労災保険関係が成立していない林業・水産業の労働者が業務上被災した場合は、使用者が無過失であっても、使用者に災害補償義務が課せられます。
このような場合に自力での災害補償が履行できない事業主のために、事故発生後に後追いで暫定任意適用の保険関係を成立させ、保険関係成立前の事故について労災保険が保険給付する制度があります。
暫定任意適用の保険関係成立前の事故について労災保険が保険給付する場合は、他の事業主との負担の公平性を保つために、通常の労働保険料の他に特別保険料が事業主から徴収され、特別保険料が徴収されている間は、暫定任意適用の保険関係を消滅させることができません。
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poo_zzzzz 2018-01-18 10:26:43
難しいですよね(笑)
歴史的経緯は、私の備忘を兼ねて書きました。
私自身、過去にこの質問を受けたのが4~5年以上前で、内容を忘れていたので。
難しければ、
> 以上のような歴史的経緯があります。
> 農業経営者は、任意加入によって・・・・・
よりも下の部分だけ、しっかり把握しておいてください。
労働基準法の災害補償義務は通常の受験勉強ではあまり学習しないのですが、労災保険を体系的に理解する上では落とすことができないと思います。
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poo_zzzzz 2018-01-18 17:40:44
poo_zzzzz様、何度もご説明ありがとうございます。
poo_zzzzz様の解説回答を読み返し、再度疑問点が発生致しましたので質問させてください。
農業等の事業主は一人親方として特別加入出来るのでしょうか?
(1)一人親方とは、次の種類の事業を労働者を使用しないで行うこと常態をとする者をいう、とあり
①自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業(個人タクシー業者など)
②土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊、若しくは解体又はその準備の事業(大工、左官など)
③漁船による水産動植物の採捕の事業(⑦に掲げる事業を除く)
④林業の事業
⑤医療品の配置販売の事業
⑥再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体等の事業
⑦船員法に規定する船員が行う事業
とあり、ここに農業等が入っておりません。しかし、この上の七つは単なる例示にすぎないのでしょうか?
教授お願いいたします。
thth1233 2018-01-19 12:57:59
ああ、すみません。
農業の場合は、特定農作業従事者か指定農業機械作業従事者としての特別加入ですね。
実務をやっていると第2種特別加入(一人親方等の特別加入団体を通しての加入)という形で同じように見てしまうので、用語を間違えました。
申し訳ありません。
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poo_zzzzz 2018-01-20 19:56:21
poo_zzzzz様、再度のご回答ご説明ありがとうございました。
疑問点が少しずつ解決理解出来てきました、ありがとうございます。
今までのpoo_zzzzz様のご回答ご説明を読み返しました。次の理解で宜しいでしょうか?
特定農作業従事者か指定農業機械作業従事者に該当しない農業等は労働者を雇わない一人親方等での
特別加入については出来ない。上記特定農作業従事者か指定農業機械作業従事者に該当しない農業等が
特別加入するのであれば、労働者を雇い、中小事業主等で特別加入することになる。
ご教授宜しくお願い致します。
thth1233 2018-01-21 06:38:53
受験対策としては、まあ、正しいといっていいでしょう。
ただ、制度の理解のポイントは少し違います。
特定農作業従事者の場合、事業の規模が問題となるほか、「特定の農作業」をしている間のみが業務災害になります。
例えば非常に急斜面の果実畑の上部で摘果作業中、転倒、転落し骨折した場合は「高さが2メートル以上の箇所での作業」中の事故として業務災害になり得ます。
しかし、同じ人が同じ果実畑の最下部の平地で摘果作業中、転倒し、たまたま手の付き方が悪くて骨折した場合は業務災害になりません。
しかし、同じ人が同じ場所で農薬散布中に転倒し骨折したなら「農薬の散布作業」中の事故として業務災害になり得ます。
また、「動力により駆動する機械を使用する作業」はトラクターやコンバインを想像しますが、収穫物や農機具、肥料などを運ぶなら、軽トラックでもいいんですよ。
軽トラックで田畑に通っう途中の事故は、通勤災害にはなりませんが、その軽トラックが「農作業場で行う耕作等の作業のための機械」であれば、業務災害になる場合があります。
今のご時世、小さなトラクターも持たず、軽トラックもなく、農薬も使わない農家はあまりないでしょう?
指定農業機械作業従事者は、規模に関係なく農業者(労働者以外の家族従事者などを含む)が、指定農業機械作業をする間、または指定農業機械を農作業のために運搬する間の事故が業務災害になります。
事業の規模が要件とはならないため、間口は広いですが機械の使用が前提のため、高所作業や農薬散布は補償対象になりません。
いずれにせよ、問題になるのは「あるものを使い、ある作業をしている」間のみ業務災害になる、と、いうことです。
軽トラックを使った作業や住居との往復ですら業務災害の対象になり得ますから、「該当しない農業等」は、ほとんど無いのです。
また、逆に、特別加入していても、例えば手作業の田植えや草取りの間は、業務災害になりません。
収穫した野菜や果実を軽トラックで集荷場に運ぶ作業は「収穫作業」の一環ですので業務災害の対象になり得ますが、箱詰し、商品化された野菜や果実を運ぶ場合はもはや「農作業」ではないので業務災害の対象になりません。
特別加入の手続きをするのは大前提ですが、問題になるのは「何を使い、何をしていたか?」です。
ですから、特定農作業従事者や指定農業機械作業従事者としての特別加入そのものを、「できる」か「できない」かで論じることは、あまり意味が無いと思います。
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poo_zzzzz 2018-01-21 11:43:41