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おかしな質問、とまでは言いませんが、法令の理解の順序を守っていない質問であるように感じます。
法令の順序に沿って考えれば、例外の前にある原則的なことを、例外を盾にして質問されても返答に困ります。

まず、雇用保険法の適用事業は「労働者が雇用される事業」です。
例外として法附則2条の任意適用事業に該当する場合は強制適用になりませんが、水産業のうち船員が雇用される事業は任意適用にならないことになっていますので、結果として船員が雇用される事業は雇用保険の強制適用事業です。

そして、適用事業に雇用される者は、雇用保険の被保険者になります。

ある者が被保険者になるかどうかは、この「適用事業に雇用される」に該当するかどうかの判断が、まず必要です。
例えば法人の取締役などは、基本的に法人との間が委任関係であるため「雇用されている」とは言いがたいのですが、代表権が無く、工場長や営業部長などとして労働契約関係にある実態がある場合は、その部分において「適用事業に雇用される」ことになります。
株式会社の代表取締役などは、一般的に労働者性がないと判断されるため「適用事業に雇用される」には該当せず、被保険者になりません。
これは「適用除外」ではありません。
適用除外というのは、「適用事業に雇用され、被保険者になるべきものであるが法の定めにより被保険者としない」場合です。

そして法6条の適用除外です。
適用除外は、本来は被保険者となるべき「適用事業に雇用される者」について、法の定めによって被保険者としない制度です。

つまり、「適用事業に雇用される者」は、適用除外に該当しない限り雇用保険の被保険者です。

そして、適用除外を定める法6条の5号に「船員法第1条に規定する船員であって、漁船(政令で定めるものに限る。)に乗り組むため雇用される者(一年を通じて船員として適用事業に雇用される場合を除く。)」があるのです。

このような順序で考えるなら、「そうしますと特定漁船に乗り込む船員は、一年未満でも雇用保険が適用されるのでしょうか?」という質問は、なんだか変ではないですか?
「適用事業に雇用される者」は、適用除外に該当しない限り雇用保険の被保険者なのですよ?
「特定漁船に乗り込む船員」に対する適用除外規定がないのであれば、その者が「適用事業に雇用される者」に該当し、適用除外の他の号に該当しない限り、その者は被保険者です。

逆に特定漁船に乗り込む船員であっても、労働者性がなければ「適用事業に雇用される者」になりませんから被保険者になりません。
「船員」の種類には「船長、海員、予備船員」があり、このうち海員は「労働の対償として給料その他の報酬を支払われる者」(船員法2条)であり、「予備船員」は「船舶に乗り組むため雇用されている者」(船員法2条2項)ですので一般に「適用事業に雇用される者」に該当しますが、船長にはそのような規定がないため、船員法上の「船員」であっても「適用事業に雇用される者」に該当しない場合があり得ます。
また、特定漁船に乗り込む船員で「適用事業に雇用される者」であっても、適用除外の他の号に該当すれば被保険者になりません。

つまり、これらは法令の特定の箇所ではなく、上記に書いた順で一つ一つ考え、判断すべきことです。
もちろん受験対策としては、題意を考え、目をつぶるところはつぶらないと解けない場合はありますけどね(笑)
例外から他を考えるのではなく、原則を順に理解した上で例外を覚えるのです。

もう一度書きますが、その者が「適用事業に雇用される者」であって、法6条の適用除外のいずれにも該当しないなら、当然に被保険者です。
あなたの質問はこの「当然の部分」を訊いておられます。
そうなると、回答する側としては、「何に引っかかっておられるのか?」を考えてしまいます。「当然のこと」を訊かれているのですからね。
先に書いた法令の構造が解っていらっしゃらないのか?とか、法6条の適用除外が理解できていないのか、とか・・・
正直、何を尋ねられているのか解りません・・・

「法令の順序に沿って考えれば、例外の前にある原則的なことを、例外を盾にして質問されても返答に困ります」と書いたのはそういうことです。



ここからは蛇足です。
本当に分かりにくいのは、ではなぜ「漁船(政令で定めるものに限る。)に乗り組むため雇用される者」が適用除外なのか?という部分です。

船員保険という法に基づく保険があります。
船員法に定める船員に適用される社会保険で、昔の船員保険は、労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険の機能を全て持つ、スーパーコンビニエンス保険でした。
時代と共に船員の数が減り、独立した社会保険として維持できなくなったので、まず厚生年金保険に相当する部分が切り離され、次に労災保険に相当する部分、雇用保険に相当する部分が切り離されました。

実を言うと、この船員保険が雇用保険に相当する給付(失業給付)を行っていた時代から、船員保険の被保険者であっても「漁船(政令で定めるものに限る。)に乗り組むため雇用される者」については失業給付を行わない、というルールだったのです。

船員保険から失業給付がなくなり、雇用保険がそれを行うようになってからも、このルールが受け継がれています。

これについて、改正時の厚労省の資料に下記の記述があります。

「特定種類の漁船以外の漁船に乗り組むために使用される者のうち、1年を通じて使用される者等以外の者」については、漁船によっては年間稼働でないため1年のうち一定期間就労しないことを前提とした賃金の水準となっていることから、これまで適用除外としていることを踏まえ、雇用保険への統合後も、同様の取扱とすべきである。」

つまり、この者たちは、一定の季節の労働だけで、その者の年収相当の給与を稼ぐ者なのです。
漁労期が過ぎ漁船を下りれば、形式的には失業していますが、「漁労期が終われば次の漁労期までの間に仕事がない期間がある」という前提であらかじめ年間のスケジュールが組み立てられている者だから、公的な失業給付は適用除外、ということです。

この適用除外が、今の雇用保険法6条5号です。

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poo_zzzzz 2019-06-27 11:22:54



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