改正前（たぶん平成26年改正）の国民年金法の不服申立では、再審査請求に対する社会保険審査会の裁決がなければ、処分の取り消しの訴えができない定めになっていました。

現在と違い、この規定は保険料の不服についても適用されていたので、保険料の不服についても、いきなり訴訟を起こすことはできず、「審査請求→社会保険審査官の決定→再審査請求→社会保険審査会の裁決→処分の取消の訴え」のプロセスが必要だったのです。

もしかしたら、お尋ねになっている情報は、改正前のものではないですか？
ご確認をお願いします。



以下、現在の法令の話をします。

法101条1項に、「審査請求をし、その決定に不服がある者は、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる。」とあります。
「することができる」ですから、審査請求による決定後、不服がある場合の再審査請求は義務ではありません。

行政事件訴訟法8条1項に、「処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。」とあります。

つまり、審査請求によらない訴えを制限する法の定めがある場合に訴えは制限されますが、そういった訴訟を制限する定めが法に無い場合は、法の規定により審査請求をすることができる場合においても、審査請求をせず、いきなり訴えを起こすことは、行政事件訴訟法によって妨げられません。

なお、行政事件訴訟法3条3項に「審査請求その他の不服申立て（以下単に「審査請求」という。）に対する行政庁の裁決、決定その他の行為（以下単に「裁決」という。）」とあるため、行政事件訴訟法8条1項は、審査請求だけではなく再審査請求にも適用され、裁決だけではなく決定にも適用されます。

国民年金法における訴訟の制限は法101条の2であり、「前条第1項（法101条1項）に規定する処分（被保険者の資格に関する処分又は給付に関する処分（共済組合等が行った障害基礎年金に係る障害の程度の診査に関する処分を除く。）に限る。）の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する社会保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができない。」とあります。

つまり、法が制限しているのは、国民年金の被保険者の資格に関する処分又は給付に関する処分（共済組合等が行つた障害基礎年金に係る障害の程度の診査に関する処分を除く。）の審査請求に対する社会保険審査官の決定の有無だけです。

この規定は保険料の不服については適用されません。
また、再審査請求の裁決と訴訟との関係にいては、資格や給付を含め、こういった制限がありません。
先に書いたように、法が制限しない限り、審査請求・再審査請求をせずに訴えを起こすことは、行政事件訴訟法8条1項に基づく権利です。



ここからは蛇足です。

行政事件訴訟法8条2項に、

前項（8条1項）ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。
一　審査請求があつた日から3箇月を経過しても裁決がないとき。
二　処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。
三　その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。

という規定が昔からあり、これはこの条文に対する適用除外規定が無い限り、すべての法律の不服申立と行政訴訟の関係について適用されます。

社労士受検の範囲は少し超えていますが、この規定があるために、労働社会保険各法にある訴訟の制限規定は、大きな目で見ると「原則として」ということになります。

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poo_zzzzz　2020-10-29 00:59:00

丁寧なご回答ありがとうございます。
国民年金保険料に関する不服の提訴は、審査請求前、再審査請求前と再審査請求後のいずれでも出来るという事で理解致しました。
近年の法改正が影響していたのですね。確認不足でした。

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t0423　　2020-10-31 09:14:41

> 近年の法改正が影響していたのですね。確認不足でした。

受験をされるのであれば最新のテキストをお使いのはずですよね？
テキストは受験に必要な情報を精選し、無駄を絞った「武器」です。
受験勉強の間は、常にテキストを正として学習してください。

仮にテキストに誤りがあったとしても、それで失う得点は多くないはずです。
迷ったり寄り道する方が、得点に対する影響は大きいと思いますよ。

投稿内容を修正

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poo_zzzzz　2020-10-31 16:26:14