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厚生年金基金の制度趣旨を簡単に言うと、厚生年金基金が設立された事業所については、厚生年金保険が徴収すべき厚生年金保険の保険料を厚生年金保険は徴収せず、厚生年金基金が掛金として受け取って運用し、その期間の老齢厚生年金は支給されず、厚生年金基金が老齢年金を支給するという制度です。

しかし、厚生年金保険は基礎年金拠出金を拠出しなければなりませんし、物価等の変動による年金の価値の保障もしなければなりません。

それら部分の負担は厚生年金基金にはできないので、やはり厚生年金保険がしなければなりません。

このため、
(1) 厚生年金保険が徴収すべき保険料の「一部」を、厚生年金保険は徴収しない。(免除保険料)
(2) 免除保険料部分は厚生年金基金が掛金として受け取って、厚生年金基金が運用する。
(3) 厚生年金保険は、厚生年金基金の加入期間について、物価等の保障部分を除き老齢厚生年金を支給しない。
(4) 厚生年金保険が老齢厚生年金として支給しない部分は、厚生年金基金が老齢年金として支給(代行部分)する。
という内容になっていました。

厚生年金基金の加入員であった期間については、厚生年金保険が支給すべき老齢厚生年金の一部を老齢厚生年金として支給せず、基金が老齢年金として支給するのですから、その期間の在職老齢年金を、老齢厚生年金の額だけで計算すると、在職調整による年金停止額が本来の額より小さくなります。

この制度内容を知っていれば、在職老齢年金について、基金の加入員であった期間を加入員でなかったものとして老齢厚生年金の額を計算し、その額に基づいて支給停止額を決定することは、当たり前だと思いませんか?



さて、以下は余談です。

なんのためにそのようなことをしたかというと、本来厚生年金保険が徴収すべき保険料を厚生年金基金が掛金として受け取り、それを株や債権等で運用して増やし、老齢厚生年金よりも手厚い老齢年金を厚生年金基金が支給することで、退職者への給付の増額を図り、福利厚生を充実させるためです。

厚生年金基金は、厚生年金保険が受け取るべき保険料を受け取るかわりに代行部分の老齢年金を支給する責任がありますから、責任準備金の積立義務が課せられました。
また、厚生年金基金には年5.5%の予定利率が課せられ、これを超える運用益を出すと、その部分は代行部分の老齢年金以外の+αとして老齢年金が増額される仕組みでした。
高度成長期には預貯金でも年3%~6%の金利で回っていましたから、この予定利率は全く高くありませんでした。

本来支払うべき保険料を国に支払わず、基金に掛金として支払って、企業はそれを損金として利益を圧縮し、基金で資金運用し、予定利率よりも高い利率で運用できれば、自社の福利厚生を充実させることができるのです。

企業にとっては、いってみれば他人のお金で福利厚生を充実させることができる制度で、こんなにおいしい話はありません。このため、大企業はこぞって系列会社で厚生年金基金を設立し、中小企業も同種業者で共同して厚生年金基金を設立しました。

しかし、この制度は運用が予定利率以上であればメリット満載ですが、運用が予定利率を下回っても、+αの給付を除く部分の給付は、予定通り基金が支給しなければならない制度だったのです。
老齢厚生年金の代行ですから当然ですよね?

このためバブルが崩壊し、予定通りの資金運用ができなくなると、厚生年金基金の財務は急激に悪化しましたが、基金を解散しようとすると、代行部分の原資である責任準備金を国に返上(代行返上)しなければなりません。

しかし、バブル崩壊後も、予定利率通りの運用ができているという前提で給付を続けていましたから、責任準備金が基準額を割り込む基金もありました。
そのような場合の欠損の補填責任は基金自身にあり、それは設立事業所の連帯責任とされていました。

まず、大企業が厚生年金基金を解散し始めました。大企業の厚生年金基金は設立事業所が系列会社で構成されていますから、損失補填もしやすかったのです。
特別損失を出して代行返上し、厚生年金基金を解散した企業が多かったのですが、将来を見越して基金を黒字解散させた企業もありました。

しかし、総合型基金(同種業者が共同運営する基金)は、そうはいきません。
総合型基金は、同業種というだけで、お互いに経営上の関係がない多くの企業が共同運営する基金であり、しかも中小零細企業が占める割合が多いのです。

責任準備金が足りない総合型基金を解散しようとすると、代行返上で各事業所に大きな金銭負担が生じるため、「いや、うちはそんなお金は出せない」という事業所が多く、大赤字だから解散したいけど、解散について事業所間の合意がとれないため解散できない厚生年金基金が続出しました。

このため、平成26年に実施された法改正で新規基金の新設が認められなくなると共に、5年間の時限措置で基金解散時の財務的な要件が緩められ解散しやすくなりました。

平成10年頃には1,800を超える厚生年金基金があり、総合型基金があるので事業所数は17万件くらいあったのですが、令和3年3月時点で厚生年金基金は5つしかありませんし、事業所数も1,000件台です。

そのような状況であり、改正で法の条文も本則から削除されたため、平成26年以降は基金に関する問題は、年金一元化がらみで出たくらいです。

過去問にあるので説明しましたが、受験対策としての重要度は低いです。

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poo_zzzzz 2021-03-12 12:06:41

この度はありがとうございました。

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ponta-315  2021-03-13 09:47:00

この度も、ご丁寧にご教示いただきありがとうございました。
以前にご助言いただきましたとおり、今日までテキスト等に書かれていない事や、座学で説明されていないことは、受験勉強のためには深入りせず勉強をしてきました。
現在、直前期対策を控え、受験雑誌、過去問、問題集等で繰り返し学習しています。
年金以外の科目は覚える数字であったり、申請期限が給付金ごとに異なっていたりしても、「なんでこの申請期限は2か月で、こっちは3か月なんだろう」とはほと
んど気にならず、割り切って暗記をしているのですが、どうも年金科目だけは、例えば厚生年金の繰り下げで言えば、「平成19年4月1日以降に受給権を取得したもの
に限る。」とあると、「何らかの理由で法改正がされたのだろうけど、なんでこの年からなのだろう。なぜこれ以前の人は繰り下げできないんだろう。」となってしまい、
つい調べてしまったり、このような場で質問をさせていただく衝動に駆られてしまいます。
そこでお聞きしたいのですが、受験生としてはこうした部分については、語呂合わせ等で強制的に暗記に走るのがよいのでしょうか。(と、申しますのはなかなか暗記だ
けでは定着をはかれないため、試験までの時間との兼ね合いもありますが、受験上の対策としてはどのような学習方法が良いのか悩んでいます。)

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ponta-315  2021-03-13 09:53:11

まあ、暗記した方が無難ですね。

もともと、厚生年金保険には被保険者の年齢制限がありませんでしたが、新法改正で、65歳で資格喪失となりました。
老齢基礎年金の受給権が無い場合を除き、65歳以上の者が国民年金第2号被保険者にならないのは、この時の名残です。
平成12年改正で平成14年4月から厚生年金保険は70歳で資格喪失となり、65歳以上の厚生年金保険の被保険者に対し、老齢厚生年金の在職調整をするようになりました。
実はそれまで、厚生年金保険の繰下げ支給はあったのです。
しかし、60歳台後半の在職老齢年金制度の導入に伴い、老齢厚生年金の繰下げ支給制度が廃止されました。この廃止理由は平成12年改正の大綱に明記されています。
そして、平成16年改正で繰下げ支給が復活し、その対象が平成19年4月以降に受給権を得た者になりました。

平成19年の理由は上記の通りですが、暗記した方が早くないですか?
平成11年改正、平成16年改正は、5年に1度の年金財政や給付の見直し(法2条の4)によるものです。
しかし、平成11年改正は国会審議が間に合わず平成12年になりました。
しかも、平成12年改正の一部の実施は平成14年からでしたし、平成16年改正も一部の実施は平成19年からです。
関連付ける意味は無いと思いませんか?

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poo_zzzzz 2021-03-13 20:59:35

この度も、ご丁寧なご回答ありがとうございました。
今更で申し訳ないのですが、以前おっしゃられた意味が最近わかってきたように思います。限られた時間の中で、あれこれ理由を考えるより受験勉強としては、割り切って暗記した
方が結果的に効率が良いですよね。
私は講師を目指しているわけではないので、今は細かな改正の内容に時間をかけるより、その分、試験に出そう(点につながりそう)な年号や数字を覚えるのに時間を割くのが賢明
ですよね。
いよいよ、先日から受験申込書の郵送が始まりました。いよいよ待ったなしです。腹を決めて繰り返し学習して知識の定着を図ってをしていこうと思います。
5月以降は、法改正や白書対策で新たに覚える数字も増えるため、その前にやるべきことをやるだけです。
悔いの残らないようにしようと思います。
本当にありがとうございました。

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ponta-315  2021-03-14 18:14:43

そうですね。
私自身は、疑問に思ったことは何でも自分で調べて、非常に手間の掛かる受験勉強をしましたが、お勧めしません。
仮に社労士を職業にするなら、学習は合格してからがスタートなのです。

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poo_zzzzz 2021-03-14 18:58:52



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