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合っているようですが、割増賃金については、使用者に支払義務があるのか?ないのか?が法律上の論点です。
支払われるか、支払われないかは使用者の行為の結果ですから、論じることができません。



まず、労働契約は民事の双務契約です。
双務契約ですから、使用者と労働者がお互いに義務を負い、権利を持ちます。
お互いが納得すれば良いのですからどのような契約も可能ですが、民法90条により、公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とされるため、例えば奴隷的な労働条件を定める労働契約は、労働基準法以前に無効です。

公序良俗に反しない労働契約やそれによる行為は、民法の他の規定や労働基準法その他の法令に反しない限り、法律的には制限されません。



次に労働基準法です。

① 法32条によって、1週40時間、1日8時間を超える労働は禁止です。これを法定労働時間と言います。
② 法32条の2以下の変形労働時間制や法40条の特例事業所のように、条件を定めて1週40時間、1日8時間の法定労働時間の枠組みが緩和される場合があります。つまり一定の条件下で1週40時間、1日8時間を超える労働をさせても「法32条の法定労働時間の違反とならない」場合があります。
③ 深夜労働は年少者と妊産婦を除き制限されていません。深夜労働は基本的に自由です。
④ 法34条によって、労働時間に合わせた労働時間内の休憩を与える義務が使用者に課されています。
⑤ 法35条の規定により、原則1週1日の休日を与える義務が使用者に課されています。
⑥ 法32条や法35条の「違反となる時間外休日労働」を、条件付きで法定労働時間や法定休日の違反にしない規定があります。法33条の災害により臨時の必要がある場合や、法36条の36協定が締結され行政官庁に届け出た場合です。
⑦ 上記②と⑥の一番大きな違いは、⑥の場合は法37条の割増賃金の支払が使用者に義務づけられるが、②の場合は割増賃金の支払義務がないことです。
⑧ 法37条の割増賃金は、①、②や⑥に関係なく、深夜労働を行わせる場合に使用者に支払が義務づけられます。つまり深夜労働は自由だが法37条の割増賃金が必要です。

ここまでが、労働時間、休日、休憩に関する制限の中心です。



⑨ 法41条によって、農業(林業を除く)や水産業(以下「農業等」と言います)及び管理監督者等には、上記①④⑤が適用されません。つまり、1週間の労働時間や1日の労働時間を制限せず、また休日や休憩を取らせることも使用者に義務づけません。
⑩ ①⑤の適用がないのですから、当然のこととして②⑥の適用もなく、⑥の適用がありませんから⑦の時間外休日労働の割増賃金の支払義務もありません。林業は⑨に入りませんから①②④⑤⑥が適用され、⑥の場合は割増賃金が必要です。
⑪ この場合に、深夜労働に関する規定は、法41条が適用除外とする「労働時間、休憩及び休日に関する規定」とは解されていません。つまり、法41条該当者であっても、深夜労働を行わせる場合には法37条の割増賃金の支払が使用者に義務づけられますし、法61条の深夜労働の禁止規定の制限も受けます。



⑫ 年少者には法61条や法61条等によって、さらに労働時間や深夜労働の制限があります。
⑬ 法61条により、交代制の例外を除き、年少者に深夜労働を行わせることは災害時を除き禁止です。禁止ですからそもそも深夜労働させることができず、処罰の対象ですが、させた場合にはその間の賃金や割増賃金の支払は使用者の義務です。
⑭ ここは少しややこしいのですが、農業等の法41条の該当業種であっても法61条の深夜業の制限を受けます。では農業等に従事する年少者に深夜労働させることができないのかというと、法61条4項が農林水産業(林業を含むことに注意)や保健衛生業等について法61条1項から3項の適用を除外しているため、農林水産業に従事する年少者に深夜労働させることができます。つまり、法41条該当であるからではなく、法61条の内部で適用除外であるために年少者の深夜労働が可能であり、この場合⑪に書いたとおり使用者に割増賃金の支払義務があります。
⑮ 法56条の最低年齢は法41条に関係なく適用されます。また、法60条により年少者は原則的に時間外労働ができません。
⑯ 年少者に対しても基本的に法41条の適用は除外されていませんから、農業等の場合は年少者であっても法60条は適用されず、①④⑤も適用されませんから、年少者に対しても時間外休日労働はさせることができ(というか、法定労働時間や法定休日の適用がない)、時間外休日労働の割増賃金の支払義務もありません。



>④における「適用されない」の意味(適用されない=割増賃金が必要、適用されない=そもそも労働できない)を理解できておりません。何卒よろしくお願い致します。


最初に書いたとおり、公序良俗に反しない労働契約やそれによる行為は、民法の他の規定やその他の法令に反しない限り、法律的には制限されません。
それに対する労働基準法は、基本的に自由である労使の契約や行動について、使用者に対して禁止や制限や義務づけを定める法律です。

つまり、労働基準法の各条文の第1歩は、禁止であり制限であり義務づけです。
この禁止や制限や義務づけには、事業規模や業種、労働者の年齢や性別などによる条件がつく場合があります。
さらに一定の条件を満たす場合に、禁止や制限や義務づけを解除したり緩和する規定があります。
さらには、この解除や緩和の規定の適用を制限する規定があります。
労働基準法の規制は、基本的にこの組み合わせです。

つまり、労働基準法を理解するには、まず「何が禁止され、制限され、義務づけられるのか?」から順を追わなければなりません。
いきなり割増賃金を論点にすると誤ります。順序よく理解するようにしてください。



追記
難しかったですか?例を挙げておきますね。
変形労働時間制・災害・妊産婦の例外・事業規模の例外・休日労働などは考えません。

■小売業で勤める25歳の者の場合
法定労働時間は1週40時間1日8時間。これを超える労働は原則的に禁止
法定労働時間を超える労働をさせる場合には36協定の締結と行政官庁への届出が必要であり、その届け出た範囲でしか時間外労働はできない
法定労働時間を超える労働をさせた場合には、その間の通常の賃金に加えて法37条の割増賃金が必要
深夜労働は基本的に自由であり、36協定の必要もない。しかし深夜労働させた場合には、その間の通常の賃金に加えて法37条の割増賃金が必要

■小売業で勤める17歳の者の場合
法定労働時間は1週40時間1日8時間。これを超える労働は原則的に禁止
法60条により年少者は36協定の締結と届出による時間外労働はできない
禁止ではあっても、法定労働時間を超える労働をさせた場合には、その間の通常の賃金に加えて法37条の割増賃金が必要
年少者の深夜労働は法61条により禁止。禁止ではあっても深夜労働をさせた場合には、その間の通常の賃金に加えて法37条の割増賃金が必要

■農業で勤める25歳の者の場合
農業は法41条の対象事業のため、法32条は適用されないので法定労働時間の規制は適用されない
法定労働時間の規制が適用されないので時間外労働の概念はなく、法37条の割増賃金の支払も必要ない
深夜労働は法41条の適用除外の対象にならないので、深夜労働させた場合には、その間の通常の賃金に加えて法37条の割増賃金が必要

■農業で勤める17歳の者の場合
農業は法41条の対象事業であり、法41条は年少者にも適用されるため、法32条は適用されないので法定労働時間の規制は適用されない
法定労働時間の規制が適用されないため、法60条の年少者の時間外労働の規制も適用されない(法60条は年少者について法定労働時間を超えたり変形することの原則禁止)
法定労働時間の規制が適用されないので時間外労働の概念はなく、法37条の割増賃金の支払も必要ない
法41条は法61条の年少者の深夜業の禁止を適用除外にしないので、法41条対象者であるという理由では年少者の深夜業禁止は適用除外にならない(法61条は適用される)
しかし、年少者の深夜業を禁止する法61条は、その4項で農林水産業等について、法61条1項から3項を適用除外にしている。このため農業の場合は年少者の深夜労働が禁止されない。
深夜労働は法41条の適用除外の対象にならないので、深夜労働させた場合には、その間の通常の賃金に加えて法37条の割増賃金が必要

■林業で勤める25歳の者の場合
林業には法41条が適用されないため、法定労働時間は1週40時間1日8時間。これを超える労働は原則的に禁止
法定労働時間を超える労働をさせる場合には36協定の締結と行政官庁への届出が必要であり、その届け出た範囲でしか時間外労働はできない
法定労働時間を超える労働をさせた場合には法37条の割増賃金の支払が必要
深夜労働は基本的に自由であり、36協定の必要もない。しかし深夜労働させた場合には、その間の通常の賃金に加えて法37条の割増賃金が必要

■林業で勤める17歳の者の場合
林業には法41条が適用されないため、法定労働時間は1週40時間1日8時間。これを超える労働は原則的に禁止
法60条により年少者は36協定の締結と届出による時間外労働はできない
禁止ではあっても、法定労働時間を超える労働をさせた場合には、その間の賃金と法37条の割増賃金の支払が必要
年少者の深夜業を禁止する法61条は、その4項で農林水産業等について、法61条1項から3項を適用除外にしている。このため林業の場合は年少者の深夜労働が禁止されない。
深夜労働させた場合には、その間の通常の賃金に加えて法37条の割増賃金が必要

ざっとこんな感じですかね・・・

農業と林業の関係がややこしいですが、もともとは林業も法41条によって法定労働時間等が適用されない業種だったんです。
平成6年の改正で法定労働時間(週44時間)が適用され、平成9年の改正で週40時間が適用されました。
これは、
・林業の現場が過酷で労働時間の規制による労働者の保護が必要とされたこと
・天候などの自然条件に著しく影響される仕事ではあるが、計画林業が主となってきたため、労働時間の規制が以前ほど難しくなくなってきたこと
による規制の強化です。
農業や水産業も、天候などの自然条件に著しく影響される仕事であるという理由で法定労働時間等が適用されない業種で、こちらは業務が忙しい時期や日と暇な時期や日が織り交ぜてあり、労働者が十分に心身を休める余地があるということで、今でも法定労働時間等が適用されない業種になっています。

年少者の深夜業については、天候などの自然条件に著しく影響される仕事であり、深夜の時間帯に仕事をすることがどうしても必要になる(特に水産業)業種であることから、林業も含めて農林水産業は年少者の深夜業を規制しません。言い換えれば、平成6年の規制強化の対象にならなかった、と、いうことです。



また、法で禁止されている場合でも、時間外や休日に労働させた場合には法37条の割増賃金が必要になるのは、以下の理由です。

法37条の時間外休日の割増賃金の支払は、条文上は、災害のための臨時の必要や36協定の締結と届出による、合法な時間外休日労働が前提です。
しかし法37条の法意(法律の意図)は、法32条又は法40条の労働時間を超えた労働、法35条の休日の労働に対して、その間の通常の賃金の支払を前提として、それに加えて割増賃金を支払わせる事にあります。(昭和23年3月17日基発461号、昭和63年3月14日基発150号他)
このため、法令に反した時間外労働や休日労働であっても、その者に法定労働時間や法定休日の適用があるのであれば、その規制を超えた労働については法37条の割増賃金が必要です。
逆に言うと、法定労働時間や法定休日が適用されない者であれば、時間外休日の割増賃金は必要ありません。

深夜業の場合、法定労働時間や法定休日とは関係なく、深夜という「時間帯」に対して法37条は割増賃金の支払を求めています。
先ほどと同じ理由で、深夜労働が禁止されている者であっても、深夜労働をさせたのであれば、その間の通常の賃金に加えて法37条の割増賃金が必要です。

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poo_zzzzz 2022-09-07 10:50:00

今回も迅速にご解答いただき、ありがとうございます。
きちんと読んで理解するのに少し時間がかかりそうです。
必ず返信しますので、取り急ぎ御礼だけさせてください。

投稿内容を修正

Alice1204  2022-09-07 12:48:31

お返事ありがとうございます。
ゆっくり考えてください。

労働基準法の労働時間規制のおおまかな流れを理解して欲しくて長々と書きましたが、あなたが疑問に思っているのは、ポイントを絞れば、林業に従事する年少者は時間外休日労働できないのに、深夜労働ができるのはなぜか?のはずです。

まず、これを論じるのに、割増賃金が支払われるかどうかで考えるのは止めてください。
論じるべきは、使用者が労働者に対して、時間外労働をさせることができるかどうかと、深夜労働をさせることができるかどうかです。

(1) まず、法32条により1週40時間1日8時間の法定労働時間を超える時間外労働は禁止です。(原則の法定労働時間)
(2) ただし変形労働時間制や法40条の特例で法定労働時間の枠組みが異なるときは、その枠組みの範囲内であれば時間外労働になりません。
(3) さらに災害による臨時の場合や36協定の締結と届出で、一定の範囲で法定労働時間を超えて時間外労働させることができます。この場合、法37条の割増賃金の支払義務があります。
(4) 深夜労働は、原則的に制限する規定がないので原則自由です。深夜労働させた場合には、法37条の割増賃金の支払義務があります。
この(1)~(4)が基本です。

次に年少者の場合です。
法60条は、災害による臨時の場合を除き、年少者に(2)(3)の適用をしません。このため年少者の労働時間には原則(1)しか適用できません。
このため、法60条3項の例外を除き、年少者に、1週40時間1日8時間の法定労働時間を超えて時間外労働させることができません。
しかし法41条の適用がある場合、年少者であっても労働時間の規制が適用されませんから、(1)(2)(3)も法60条も適用されません。
法定労働時間そのものを考える必要がないのですから、例えば農業の年少者の場合、何時間労働させても時間外労働や割増賃金を考える必要がありません。
林業は法41条の適用がありませんから、林業の年少者の場合、法32条の法定労働時間を超えて時間外労働させることができません。

法61条1項は、年少者に深夜労働させることを禁じています。これは(4)の例外です。
法41条の適用がある場合でも法61条の適用はあります。
このため、例えば監視断続業務で行政官庁の許可を受けた年少者は、法41条の適用がありますが深夜労働をさせることができません。
しかし、法61条4項は、災害による臨時の場合や、農林水産業や保健衛生業等について、法61条1項から3項を適用しないと言っています。
これにより農業や林業の年少者には、法61条1項の深夜労働の禁止が適用されず、(4)の状態に戻ります。
このため、農業や林業の年少者には、深夜労働させることができます。深夜労働させた場合には、法37条の割増賃金の支払義務があります。



なお、説明してからでないと揚げ足を取るみたいになるので、前回は指摘しませんでしたが、法41条の適用がある場合、労働時間や休日の規制そのものがありません。
このため、あなたがお書きになっている「時間外・休日労働を行った場合」が、法定労働時間を超えた労働や法定休日の労働を指すのであれば、例えば農業のような法41条の適用業種で働く労働者については、「時間外労働・休日労働の状態そのものがありえない」ということになります。

参考になった:1

poo_zzzzz 2022-09-07 21:43:07

返信が遅くなり大変失礼しました。
順を追って丁寧に分かりやすく条文を説明いただき、さらに具体例や制定の背景まで付け加えていただき、本当にありがとうございます。

労働基準法の、「禁止・義務・制限→解除や緩和→解除や緩和の規定の適用を制限する」という流れを掴めておらず、混乱しておりました。
①~⑯までの順を追った解説により、法の流れと絡みがやっとわかりました。
2回目にご解答いただいた、(1)~(4)の労働時間規制の基本の理解がとても大事ですね。この基本を踏まえた上で、法41条の適用があれば労働時間や休日の規制そのものがなくなると。
ですので、最後に指摘いただいた、「農業に従事する労働者が時間外労働や休日労働を行った場合に~」の質問自体ががありえないことがわかりました。
さらに年少者についても(1)~(4)を踏まえるのは同じで、農業の年少者であっても法41条の適用があるので、法定労働時間そのものがないので割増賃金は考える必要がない。
林業は法41条の適用がなく、年少者の場合には法60条により時間外労働は原則禁止されている。(法で禁止されていても時間外休日労働を行ったのであれば割増賃金支払の義務がある。)
年少者の深夜労働については、法61条により禁止されているが、法61条4項における災害による臨時の場合や農林水産業や保健衛生事業は適用除外になり、深夜労働をさせることができる。

自分の言葉ではなく、書いていただいた事を重複してるだけになってますが、理解できたと思います。

これだけの長文を書いていただくのに大変お時間がかかったと思います。一つも無駄な箇所がなく、一つでも省略して書かれていたら、私は理解できておりませんでした。本当にありがとうございます。
ご解答に比べ、私の返信が陳腐で短いのが恥ずかしく申し訳ないですが、心より御礼申し上げます。

投稿内容を修正

Alice1204  2022-09-08 12:25:07



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