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労働保険徴収法/令和4年度本試験 労災・徴収問10-Dに関して
GinLuts 2022-09-24 06:03:04
質問投稿では、「はじめまして」になります。
標記の問題につきまして、不明な点がありましたので投稿いたします。
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(問)
健康保険法第99条の規定に基づく傷病手当金について、標準報酬の6割に相当する傷病手当金が支給された場合において、
その傷病手当金に付加して事業主から支給される給付額は、恩恵的給付と認められる場合には、一般保険料の額の算定の基礎となる賃金総額に含めない。
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疑問は、「標準報酬の6割に相当する傷病手当金」という表現です。
「標準報酬」という用語の不正確さに関しては、徴収法の問題なのでこの際措いておくとしても、
傷病手当金の額(健保法103条及び108条による調整を考慮しない原則的な額)は、一日につき、
標準報酬月額をもとに所定の方法で計算した額の「3分の2に相当する額」であり、
学習範囲に「6割」ないしそれに準ずる文言がどこにも見つかりません。
実は、まったく別のところで、同様の誤りに出くわしたことがあります。
上野歩さんの小説『労働Gメンが来る!』(2021年、光文社文庫)において、労働基準監督官が次のようなセリフを喋る場面があります。
なお、当該小説は、2019年現在の法令に基づいて執筆されているようで、当該セリフはいわゆる労災かくしを追及する場面の一節です。
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(以下引用。ただし、ディスプレイ上の読みやすさを考慮して適宜改行しています。)
「労働災害で休業する場合、労災保険から賃金の六〇パーセントの休業補償、
さらに二〇パーセントの休業特別支給金の合計八〇パーセントが支給されます。
私傷病として休業する場合だと、健康保険から六〇パーセントの傷病手当金が支給されるだけなんスよ。
支給を受けることのできる期間も、労災保険のほうが長いんス」
「そうした差額は、会社のほうで出してくれました。なんでも、労災保険を適用せず処理できるように
あらかじめ民間の傷害保険に加入していたようです」
「それって、周到に労災かくしの隠蔽工作をしたということで、より悪質な事案として評価されますよ」
石毛がうなだれる。
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小説のセリフですので、文言の法令上の正確さには深入りしないとしても、
こちらにも傷病手当金の額の計算がはっきりと「60パーセント」と記載されています。
調べてみたところ、平成19年4月改正前の傷病手当金の額は「標準報酬日額の100分の60」だったようです。
このうち、「標準報酬日額」という現行規定にない用語に関しては、調べて納得しました。
そのうえで、令和4年度本試験や小説の「6割」「60パーセント」という表現は、当時の規定を念頭に置いている……
有り体に言えば、労働保険関係者(試験委員、小説の取材対象者)が健保法改正を追えていないと考えてよいのでしょうか。
それとも、私が試験範囲の中にある規定を何か見落としているのでしょうか。
小説はともかく、本試験問題に15年も前の改正が漏れていることは考えにくく、
さりとて「6割」の根拠がテキストや厚労省や協会けんぽの資料にも見つからず、復習にあたって不安を感じています。
おっしゃっていることは正しいですが、法令の知識として正しくても、受験学習としては問題があります。
社労士試験の受験学習は、何が正しいのか(間違っているのか)を選ぶ学習ではありません。
出題者が、何を選ばせようとしているのかを考え、選ぶ力を養う学習です。
結果としては同じ答えになることがほとんどですが、問題の内容に疑義がある場合に、これを意識しているのかいないのかは大きな差を生みます。
社労士試験においてグレーな肢は、案外多くあります。
先に他の方から質問があった、R4択一健保10Aも、おそらくは問題文に誤りがあります。
細かいことを言えば、R4択一雇用10CやR4択一厚年03Eも疑義があります。
R4択一雇用10Cは、問題の捉え方にもよるのですが、有期事業の現実の手続を問う問題と考えるならば、届先に「所轄公共職業安定所長」はないです。
法令に書かれている内容の単純な組み合わせの問題と考えれば問題ないですが・・・(法令は雇用保険関係での有期事業を否定していないため)
R4択一厚年03Eでは「標準報酬月額を算定する場合」とありますが、算定するのは報酬月額であり、報酬月額に基づいて標準報酬月額が「決定」されます。
しかし、択一式試験は、それらの疑義を押さえつつ、5つの肢の中で相対的に判断するものです。
そして、そこにグレーな肢がある以上、受験学習はそういった判断力を養うことを意識して行うものです。
R4択一労災10は、B肢が明らかに誤りです。
「造林」での出題は初めてだと思いますが、林業(立木の伐採を除く)や、同じグループの水産動植物の採捕での出題は過去にありますから、確実に誤と判断できなければならない肢です。
このB肢との比較で考えると、E肢は「6割」に疑義はありますが、どちらを誤の肢として選ぶのかといえば、B肢だと思います。
E肢は「単に恩恵的に見舞金として支給されている場合」を中心に見れば正しいですし、徴収法の問題の正誤の論点が健康保険法が定める給付率にあること自体が変ですしね。
問題文が正しいかどうか?ではなく、択一式試験としてどの肢を選ぶべきか?であるなら、そういった判断ができれば十分であり、グレーな肢を論じるのはあまり意味がありません。
また、社労士試験は昔から相対的な判断が必要な場合がある試験だったのですから、それがすべてだと思います。
追記
何か引っかかっていたのですが、思い出しました。
徴収法ではなく、雇用保険法の行政手引50502に「標準報酬」の用語が見えます。
行政手引の他の箇所に「標準報酬制」という表現も見えますから、労働局としては、これを法令に定義された用語ではなく、社会保険が使っている制度の名前として使っているのかもしれません。
徴収法の同様の手引は見ることができませんが、おそらくこれは労働局内の用語でしょうし、通達や行政手引からの出題がある前提で考えるなら、この点に疑問を持つのは不毛です。
また、この行政手引50502は、今でこそ「標準報酬の3分の2」になっていますが、私の確認できる範囲で少なくとも2017年までは「標準報酬の6割」でした。
この時点で健康保険法の改正からは10年経っていますが、もし、この「標準報酬の6割」の問題が2017年の雇用保険法で出題されていたなら、「行政手引通りの問題」ですから、非の打ち所のない問題になっていたと思います。
その程度なのだ、と思って受験対策された方が、合格に近づきやすいと思います。
参考になった:3人
poo_zzzzz 2022-09-24 15:43:43
2023年初受験の予定です。
ご指摘の点、全く同じ疑問を持ちました。小説や過去の法令までお調べになっていて、大変勉強になりました。ありがとうございました。
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kiokuryokusousitu2022 2022-12-25 17:29:49