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労働基準法/マルチジョブホルダーの労働時間管理
noha8008 2022-11-13 22:12:47
労働者Xは、Y社と1日4時間の労働契約を結んでいたが、Z社と今回4時間の労働契約を結び就労していた。
Y社は、ある日Xに1時間多く働いてもらった。Xは1時間多く働いたあとZ社で4時間就労した。
その場合、Y社は1時間分の時間外労働支払わなければならいが、Y社はそれをどうやって確認するのでしょうか?
Y社の担当者がZ社に「この日、Xはお宅で勤務されましたか?」なんて、個人情報がうるさいご時世で教えてくれるわけないですし、Xの申告を鵜吞みにするのも信じがたい。
マルチジョブホルダーの場合、労働時間管理はどのようにするのでしょうか?
マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で勤務しており、かつ、単独の事業所では雇用保険の加入要件を満たさないが、2つの事業所を通算すると雇用保険の加入要件を満たす場合に、本人の申出で雇用保険の被保険者とする制度です。
この問題は複数事業所で勤務する全ての労働者に共通する問題ですが、本人からの申出を基点とする制度はモラルハザードや逆選択を起こす懸念があるため、年齢層を65歳以上に限定して試行実施されています。
あくまで雇用保険の適用に関する制度であり、マルチジョブホルダー制度は、労働時間管理とは関係ありません。
以下は蛇足です。
労働基準法38条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
S23.5.14基発769 「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含む。
複数事業所勤務についての参考URL
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000673995.pdf
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000193040.pdf
例えば2つの事業所で勤務する労働者の労働時間の通算は、原則として、先に労働契約した事業所から通算します。
ただし、先に労働契約をした会社が、その労働者が他の事業所でも勤務していることを知っており、自社で残業させれば通算して法定労働時間を超えることを知りながら労働させる場合は、先の事業所が時間外労働の責任を負います。
このため、1日8時間労働の事業所で勤務する労働者が、出勤前に早朝バイトを始めた場合、1日の法定労働時間に対する割増賃金は早朝バイト先が支払うことになります。
また、夜の居酒屋でバイトしている労働者が、そのバイト続けながら昼に1日8時間の勤務を始めた場合、1日の法定労働時間に対する割増賃金は昼の勤務先が支払うことになります。
さらに言うと、1日6時間労働の会社で勤務する者が、別に1日2時間のバイトを初め、その事実を知りながら先の会社が1時間残業させたような場合、先の会社は残業させれば法定労働時間を超えることを知った上で残業させていますから、この場合の割増賃金の支払義務は先の会社にあります。
マルチジョブホルダーの場合は他の事業所での勤務を会社が知っていますから、あなたの書かれているとおり割増賃金を支払うのは原則Y社になると思われますが、Y社がZ社での勤務を知らない場合は、あなたの例での割増賃金の支払義務は、後で労働契約をしたZ社にあります。
このような管理を客観的に、労働者の立場を守りながら有効に行うことは非常に難しいのです。
労働時間管理でいうなら、マルチジョブホルダー制度とは関係なく、また、事業所がそれを認めているかどうかにも関係なく、今現在、多くの方が複数事業所で勤務しておられます。
しかし、上記のようなルールに従った労働時間の通算による管理やそれに基づく割増賃金の支払は、実態としてはごく一部でしか行われていないはずです。
厚生労働省の「柔軟な働き方に関する検討会」でも、異なる事業主間の労働時間通算の通達と現状とのギャップは指摘されていて、見直すべきとの提言もされています。
しかし、S23.5.14基発769通達は現状生きています。生きている限りこれに応じた管理はされなければなりません。
このため複数事業所勤務について出された通達とガイドラインが、上記の複数事業所勤務についての参考URLですが、多くの場合、このようにはなっていないはずです。
夜の飲食店や、朝の新聞配達で社会人アルバイトを雇う場合に、最初の1時間から割増賃金を支払う例はあまり聞きませんからね・・・
今現在、複数事業所勤務の労働時間管理をどのようにすべきかは、上記参考URLの通達とガイドライン通りであり、これは受験対策になり得ます。
これに対して「そんなの、できないのではないですか?どうやってやるのですか?」という疑問は、法と現在の社会とのギャップであり、社労士受験対策で扱うべきテーマではありません。
最後に、上記参考URLの通達やガイドラインを受験対策として取り入れるかどうかは、あなたがお使いのテキストで判断してください。
社労士受験対策の対象となり得る範囲は非常に広く、それをすべて網羅しようとする受験対策は合理的ではありません。
受験テキストは、合格に必要なものと、必要性が低いものを取捨選択してくれているからこそ「武器」としての価値があります。
つまり、「載っていないこと」は「受験の武器としての長所」です。
学習中はこれを忘れないようにして、疑問の解決についても、テキストを中心に解決の要否を判断してください。
参考になった:3人
poo_zzzzz 2022-11-14 08:51:52
ご回答いただきありがとうございます。
会社では、実務をやっているためこのような質問となりました。
山予備の月額制を利用していますので、試験に受かるための勉強としてテキストに記載されている内容をまずしっかり吸収したいと思います。
ありがとうございました。
noha8008 2022-11-14 16:35:18
そうですね。
実務と受験対策は違います。
まず、実務のご質問であれば、ここではない他の適切な場所でされるべきだと思います。
また、マルチジョブホルダー制度の学習中に労働時間管理に考えが向くのは良いですが、実務をしているからという理由でこのようなことを他人に質問するのであれば、マルチジョブホルダー制度の問題としてではなく、労働基準法の疑問として内容を整理し、下調べしてから質問される方が、あなたの知識の向上にもなりますし、余計なことを書かなくて済むので、質問を受ける側としても答えやすくなります。
受験対策としてならば、労働基準法のテキストを精査して、載っていればその内容を学習し、載っていなければ、疑問としては先送りです。
先にも書いたとおり、受験用テキストに必要なのは取捨選択であり、受験学習の初期や中期に、テキストにない疑問の解決を図る必要はありません。
テキストを読み込み、過去問に習熟し、過去問とテキストの間を何回も往復するうちに、多くの疑問は解決しますし、残った疑問も、解決が必要か、そうではないかの判断ができるようになります。
他人に訊くのはそれからで遅くありません。
参考になった:2人
poo_zzzzz 2022-11-14 21:56:37