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> 繰下げの場合→申出のあった日の属する月の翌月から支給を始める。
> この違いについて、なぜ繰下げは、申出のあった日の翌月とならないのでしょうか。

この「なぜ繰下げは」は、「なぜ繰上げは」の誤りですか?
ご質問のままだと、「繰下げの場合→申出のあった日の属する月の翌月から支給を始める」になっていますから、ご質問が成立しないように思います。

①「この違いについて、なぜ繰上げは、申出のあった日の翌月とならないのでしょうか。」
②「この違いについて、なぜ繰下げは、申出のあった日から支給とならないのでしょうか。」
この①②いずれかがご質問の内容と考えて回答します。

この疑問は、受給権の発生と、支給の通則との関係が、うまく組み合わせられていないことにより生じます。
知識として通則を知っていても、「通則は、その例外規定がある場合を除き、どの場面でも通用する」ということが意識に叩き込まれていないのです。
つまり、「知識」ではあっても、「特定の場面だけ使う知識」であって、「使うかどうかの判断を常に行い、判断が正しくできる知識」になっていないのです。
受験学習が、テキストと過去問を使った反復トレーニングを伴わなければならない理由がここにもあります。
回答の内容は、①も②も同じですからよく読んでください。



これを考えるには、まず、法26条の本来の老齢基礎年金の支給を考えてください。

法26条(抄)
老齢基礎年金は、保険料納付済期間又は保険料免除期間を有する者が65歳に達したときに、その者に支給する。

例えば1958年6月4日生まれの者の場合、2023年6月3日の24時に「65歳に達したとき」を迎え、法26条ではそのときに「老齢基礎年金が支給される」ことになります。
この書き方だと2023年6月分の老齢基礎年金から支給されるように見えますが、さて、この者に支給される老齢基礎年金は、2023年のどの月の分からですか?

「支給繰上げの場合には、請求があった日から支給するのはなぜですか?」という質問は、15年以上も前に私が対策校の講師をしていた時にも、とても多くありました。
私が「法26条の本来の老齢基礎年金も、「65歳に達したときに支給する」と書いてあるよね?これはどの月の分から支給されるのかな?」と答えると、多くの方はしばらく??な顔をされてから、「あっ!」と言われることが多かったですね。

繰上げを定める法附則9条の2には、「第26条の規定にかかわらず、その請求があった日から、その者に老齢基礎年金を支給する」とあります。
「第26条にかかわらず」とあることから明らかですが、繰上げの「その請求があった日からその者に老齢基礎年金を支給する」は支給開始月の特例ではなく、法26条の「65歳に達したときに支給する」の例外であり、受給権(基本権を指します。以下同じ。)の発生時期の特例に過ぎません。
本来、65歳に達したときに発生する老齢基礎年金の受給権を、繰上げ請求日に発生させるよ、と言っているだけなのです。

繰上げを定める法附則9条の2が、法26条ではなく「第18条の規定にかかわらず」だと支給開始時期の特例と捉えることができますが、繰上げの場合65歳に達していないので「いつ受給権が発生するの?」という問題があり、別に受給権発生に関する規定がなければなりません。

受給権の発生と、支給の通則との関係が自然に理解できるようになってください。

受給権発生と支給開始月の関係は、本来の老齢基礎年金も、繰上げ支給の老齢基礎年金も同じで、法18条1項により、支給すべき事由が生じた日の属する月(受給権が発生した月)の、翌月から支給開始です。

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次に法28条の支給の繰下げを、法26条や法18条をもう少し詳しく書いた上で説明します。

法18条1項
年金給付の支給は、これを支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から始め、権利が消滅した日の属する月で終るものとする。

法28条3項(抄)
第1項の申出をした者に対する老齢基礎年金の支給は、第18条第1項の規定にかかわらず、当該申出のあった日の属する月の翌月から始めるものとする。


老齢基礎年金は、他の要件を満たす場合は、「65歳に達したとき」に、受給権が発生します。
「65歳に達したとき」は民法と年齢の計算に関する法律の規定により、「65歳の誕生日前日の24時」です。
これは「65歳の誕生日の0時」と同時ですが、法律上は別の「とき」です。法律上の「とき」は「時」とは異なり「場合」を意味します。
このため、「65歳に達したとき」は「65歳に達した場合」であり、法律はこれを前日の満了時(24時)としていますから、「日」を単位に考える場合は、誕生日の前日に65歳になります。

また、法26条のような年金の受給権の発生を定める条文において、「支給する」は現実の年金の支払いを指すのではなく、受給権の発生を意味します。これは他の科目でも大切ですから意識してください。

例えば1958年6月4日生まれの者の場合、2023年6月3日が「65歳に達したとき」であり、法26条を考える場合は「老齢基礎年金は、2023年6月3日にその者に支給する」となりますが、これは現実の年金の支払いを指すのではなく、2023年6月3日に老齢基礎年金の受給権が発生すると言っているだけです。

そしてこの「65歳に達したとき」が、法18条の「支給すべき事由が生じた日」になります。
例えば1958年6月4日生まれの者の場合、2023年6月3日が「65歳に達したとき」であり、その日が属する月(6月)が法18条の「支給すべき事由が生じた日の属する月」であり、その翌月である2023年7月が、年金の支給開始の月になります。この場合、年金の請求が遅れても、支分権の時効の範囲内であれば、2023年7月分の年金に遡って支給されます。
この年金は、すぐに請求すれば(裁定請求は65歳の誕生日の前日以降に提出可能)、受験対策としては2023年8月から支払われると考えて良いですが、実務としては事務処理の関係で10月か12月にそれまでの分とまとめて支払われることが多いのです。



法28条1項による支給の繰下げの申出をした場合、法28条3項により、法18条1項の例外として申出をした月(または申出をしたとみなされた月)が基準になります。

例えば上記の者が2026年4月に年金の請求をしたとしましょう。
この場合、法18条1項に従って、2023年7月が支給開始の月になり、2023年7月に遡って老齢基礎年金が支給されます。

この者が請求の際に、繰下げの申出をした場合は、法18条1項の例外になりますから2023年7月は支給開始の月ではなくなり、法28条3項によって、申出月の翌月である2026年5月が支給開始の月になります。
この場合2023年7月分から2026年4月分までの年金を受ける権利は失いますが、その代わりに、2026年5月分以降の老齢基礎年金の額は、本来の額に制令に定める額が加算されます。
政令で定める額は、法27条の老齢基礎年金の額に、1000分の7に当該年金の受給権を取得した日の属する月(2023年6月)から当該年金の支給の繰下げの申出をした日の属する月(2026年4月)の前月(2026年3月)までの月数を乗じて得た額になります。

この場合でも老齢基礎年金の受給権発生は、法26条により2023年6月です。
つまり、受給権発生月と支給開始月が大きく離れることになりますが、支給開始月を遅らせることと引き替えに年金を増額する制度が支給繰下げですから、その場合に「では、いつから支給開始が適切?」と考えると、「申出」というアクションの「翌月分から支給」であることに違和感はないと思います。



追記
> 1 老基礎の支給繰下げの場合、申出により支分権が発生する(増額率で増額された額)
この考え方は、間違っているとは言いませんが、考え方が複雑になるのでやめた方が良いと思います。

先にも書きましたが、支給の繰下げの申出は、法18条1項の「これを支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から始め」の特例です。
支給の繰下げの申出により、年金の支払開始時期が、受給権発生の日の属する月の翌月ではなく、申出月の翌月になります。

① 受給権発生(原則65歳)の翌月以降、各支払期月ごとに支分権が発生している。
② このため、年金の請求が遅れた場合も、受給権発生の日の属する月の翌月に遡って年金が支給される。
③ また、受給権発生の翌月以降、各支払期月ごとに支分権が発生しているからこそ、5年の消滅時効が成立しうる。
④ 支給の繰下げにより、法18条1項の支払開始時期が変更され、受給権発生の日の属する月の翌月ではなく、申出月の翌月から増額して支給される。
⑤ 支払開始月の変更により、結果として、申出をしなかったら受け取れたであろう、受給権発生の日の属する月の翌月分から申出月分までの年金を受ける権利は消滅する。
こういう流れです。

繰下げの申出後は、その翌月以降に新たに支分権が発生することには間違いありません。
しかし、支分権は、もともと年金の支払期月ごとにそれぞれ生じるものですから、支給の繰下げの場合にそこを強調するのは、上記の流れの理解を妨げると思います。

余談ですが、改正で繰下げの申出時期の上限が70歳から75歳になったことで、繰下げの申出を予定していた者が、70歳を超えてから老齢基礎年金を請求し、その際に繰下げの申出をしなかった場合に、上記の③の問題が発生します。
例えば繰下げを予定して70歳を過ぎても老齢基礎年金を請求していなかった者が、70歳を過ぎてから重い病気が分かり、「繰り下げている場合じゃない。昔に遡って年金を貰わなきゃ」という場合などです。
国が繰下げを75歳まで認めているのですから、そのような場合の③の不利益は防がなければなりません。
このため、消滅時効の期間を変更するのではなく、現実の請求日の5年前に、繰下げの申出があったものとみなす例外があります。
「繰下げの申出」ということは「年金の請求と共に繰下げの申出をする」という意味ですから、75歳までであれば③の問題はまがりなりにも回避できます。

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poo_zzzzz 2023-06-05 06:25:24



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