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労働基準法/変形労働時間制
toratoto 2024-04-26 14:35:20
願書を提出していよいよ受験モードに突入です。
さて、変形労働時間制を学んで、
例えば週の所定労働日数が2日で一日の所定労働時間10時間のアルバイトA労働者がいたとして、
その事業場では変形労働時間を採用していてそのA労働者もその変形労働時間制の対象となっていたとしたら
A労働者は週の労働時間は20時間を超えることはなく、一日8時間を超えた部分は割増賃金の支払いが不要なのでしょうか。
もしそうなら脱法的な未払いのように感じますが、私の法解釈に間違いないのか皆様の見解を教えていただきたいです。
(1) 1週間について、40時間を超えて労働させてはならない ※注1
(2) 1週間の各日について、1日8時間を超えて労働させてはならない
この(1)(2)が労働基準法32条の、法定労働時間の規定です。
この規定に対し、例えば1か月単位の変形労働時間制を定める法32条の2は、
(3) 労使協定又は就業規則の定めにより、1か月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が(1)の労働時間(40時間)を超えない「定め」をしたときは、上記(1)(2)の規定にかかわらず、
(4) その「定め」により、特定された週において(1)の労働時間を超えて、労働させることができる。
(5) その「定め」により、特定された日において(2)の労働時間を超えて、労働させることができる。
この(3)(4)(5)が「変形労働時間制」です。
(1)(2)が「法定労働時間」の規定で、(3)(4)(5)は、この「(1)(2)の規定にかかわらず」、一定の変形された労働時間で「労働させることができる」のです。
これが、「変形労働時間制」であり、「変形」しているのは、法が定める労働時間の限度(法定労働時間)の「形」です。
「1週40時間以内」と「1日8時間以内」の「両方」を満たさなければ法違反となる法32条の「法定労働時間」の「形」を、「所定の手続きを取り」「ある期間を平均して週40時間以内であるように定めること」を条件として、「あらかじめ特定された週が40時間以上であっても法違反とはしない」「あらかじめ特定された日が8時間以上であっても法違反とはしない」というように「変形」しているのです。
このため、例えば1か月単位の変形労働時間制に関する「定め」により、1か月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えないことを定め、それの内容に沿って作成された就業カレンダーによって、ある労働者の4月26日の労働時間が10時間と定められていた場合、(5)に該当しますから、その日に10時間労働しても法定内の労働になります。
正しく適用された変形労働時間制の元では、変形によって例えば10時間と特定された日に10時間労働しても、変形によって例えば48時間と特定された週に48時間労働しても、それは法定内の労働であり、時間外労働の問題は発生しません。
(1)(2)の「労働させてはならない」は、法による禁止です。
(3)(4)(5)は、「(1)(2)の規定にかかわらず」適用されます。
そして、(3)(4)(5)の「労働させることができる」は、(1)(2)の「労働させてはならない」に対する表現です。
「させることができる」なので使用者の権利を書いているように見えますが、(そうでもあるけれど)そのような趣旨ではありません。
この「労働させることができる」は、(1)(2)の「労働させてはならない」という「禁止」に対する用語で「禁止の解除」を意味します。
つまり、変形労働時間制は、法32条の原則の法定労働時間制による禁止を「解除する規定(免罰規定)」です。
このため、正しく適用された変形労働時間制の元で、変形によって10時間と特定された日は、10時間が法定労働時間(法の定めによりそれ以上労働させてはならない時間)になります。
追記
週の所定労働時間が20時間で週2日勤務の例だとシフト制の可能性がありますが、シフト制でも変形労働時間制は適用可能です。
https://jsite.mhlw.go.jp/kumamoto-roudoukyoku/content/contents/001179968.pdf
ただ、このレジュメの2の③にも書かれているように、対象期間すべての労働日の労働時間をあらかじめ具体的に定める必要があります。
このレジュメの最終ページの表のように、対象期間すべてのシフトをあらかじめ定める必要があるのです。 ※注2
これが「特定された週」または「特定された日」になります。
このとき、シフト表の20日に、Bシフトで9時間働くことになっていた厚生姫子さんが急に休んだ場合に、Aシフトで8時間働くことになっていた基準督助さんを9時間労働させれば、基準督助さんについて9時間と「特定」されていない日に8時間を超えて労働させることになりますから、基準督助さんに1時間の時間外労働が発生します。
また、厚生姫子さんが20日に休むことがあらかじめ分かっていたような場合に、20日がもともと休日になっていた労働太郎さんに対し、労働太郎さんの20日の休日をBシフトになっている23日と振り替えることを命じ、20日に労働太郎さんを9時間労働させたような場合でも、やはり労働太郎さんに1時間の時間外労働が発生します。 ※注3
この場合、労働太郎さんの休日と、あらかじめ9時間と特定されている労働太郎さんのBシフトの日が振り替わるのだから、時間外労働はないように見えますが、振り替わるのは「休日」であって、対象期間の開始後は、変形労働時間制による日の特定は他の日に移すことができないからです。
このように、変形労働時間制の労働日の「特定」はかなり厳密なので、シフトの入れ替えが頻発するようなシフト制の場合は、変形労働時間制は向いていません。
※注1 例外の適用を受ける事業所がありますが、ここでは論じません。
※注2 このシフト表は、労働太郎さんについて変形労働時間制に適合しない例として作成されていますが、そのことは、ここでは論じません。
※注3 20日の1時間の時間外労働とは別に、週を単位とする時間外労働が発生する可能性がありますが、ここでは論じません。(下記URL参照)
https://jsite.mhlw.go.jp/okinawa-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/jigyounushi/question_1_kyujitu.html
参考になった:2人
poo_zzzzz 2024-04-27 13:24:26
追記2
追記2、というか・・・雑談です。
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■ 昭和22年に施行された当時の労働基準法
法32条1項
使用者は、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間、1週間について48時間を超えて労働させてはならない。
法32条2項
使用者は、就業規則その他により、4週間を平均し1週間の労働時間が48時間を超えない定をした場合においては、その定により前項の規定にかかわらず、特定の日において8時間又は特定の週において48時間を超えて、労働させることができる。
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上記は、昭和22年に初めて制定され、施行された当時の、労働基準法32条(1項と2項)です。
法32条の1項は、当時の法定労働時間(法律上それ以上労働させてはならない時間)で、1週間について48時間でした。1日については今も同じ8時間です。
そして、その例外になるのが法32条の2項で、変形労働時間制の一番最初の形です。
変形の実施期間は、受験される方が今でも学習する法35条2項の「変形休日制」と同じで、「4週間単位の変形」です。
4週間という決まった期間でしか実施できませんでした。
この、法制定当時の法32条の「1項」と「2項」を見比べてください。
とてもシンプルですから、2項が、1項の「原則の法定労働時間」の「例外」として定められていることがよく分かると思います。
次に、この施行当時の法32条2項と、現在の法32条の2(1か月単位の変形労働時間制)、または、法32条の4(1年単位の変形労働時間制)を見比べてみてください。
(1) 所定の手続と定めによること
(2) 実施期間の長さに制限があること
(3) 実施期間を平均して、週の労働時間が一定の時間を超えない定めをすること
(4) 法32条1項の規定にかかわらず
(5) 「特定された日」または「特定された週」において、法32条1項の制限を超えて労働させることができること
現在の規定(特に法32条の4)は複雑ですが、この(1)から(5)の「骨格」は、77年前の法制定・施行当時から変わっていません。
変形労働時間制は難しい(実務においても)ですが、細かいことの暗記の前に、この「骨格」をしっかり理解することをお勧めします。
参考になった:3人
poo_zzzzz 2024-04-28 19:49:38