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労災保険法/加重の考え方と併給繰上げの例外について
hauser 2016-12-23 18:55:12
労災保険で加重の考え方と、併給の例外について、そもそもの疑問があり、ご教示をお願いいたします。
まずは、加重について
Q:既にあった障害等級に応ずる障害補償年金Bの人に、あらたな業務上の災害で、同一部位を加重することになった場合の新たな障害に応ずる障害補償年金Aとの差額が支給される。
その場合でも、従前の既にあった障害補償年金Bは消滅しない。
A:答えは○なのですが、
この問題は、要するに、A-Bの差額とBを支給するのなら、文章の表現上では、結局、「Aを支給する」ということで良いではないかと思うのですが、問題でもし、差額を支給するとしないで、Aを支給するとした表現の場合、間違いになります(過去問ですが)。なぜでしょうか。
差額のA-Bと、従前額Bを支給するのですから、A-B+B=Aなのだから、Aを支給するという表現でも間違いではないはずです。差額を支給するという表現がなくても良いと思うのですが。
次に、障害の併給繰上げの例外について
13級と9級では、8級に変更になっても、例外的に、支給は13と9級の合算になるというのが理解できません。労働者の救済が目的なら、多く支給してあげるのが本筋だと思うのです。
給付基礎日額が1円未満を1円に切り上げるようなことをやっているくせに、肝心な労働者救済になっていないのではないかと思うのです。多いほうの額をなぜ支給しないのかです。
こういう似たようななことは、財政が破格に黒字だらけの雇用保険もそうです。
こんなところに法の矛盾を強く感ずるのですが・・・・。
加重について
仮にA事業所で給付基礎日額15,000円で働いていた労働者が、業務災害で障害等級5級になった場合、15,000円×184日=2,760,000円の年金が支給されます。
この労働者が、その後B事業所で給付基礎日額8,000円で働いていて再び業務災害に遭い、前回と同じ部位に障害を得て、障害等級3級になったとしましょう。
この労働者がB事業所での業務災害で失ったのは、前回の業務災害(5級)と同一部位ですから、「B事業所における」3級と5級の差の分の、働いて稼ぐ能力(労働稼得能力)です。
このため「B事業所における給付基礎日額」を用いて、3級の障害補償年金の額と5級の障害補償年金の額の差額を計算し、その額を3級の障害補償年金として支給します。
8,000円×245日=1,960,000円
8,000円×184日=1,472,000円
1,960,000円-1,472,000円=488,000円(障害等級は3級)
つまり、この者には従前の5級の障害補償年金2,760,000円と、加重による3級の障害補償年金488,000円が支給されます。合計は3,248,000円です。
加重によらない本来の3級の障害補償年金は、給付基礎日額が15,000円なら3,675,000円、給付基礎日額が8,000円ならば1,960,000円ですから、そのいずれとも違うでしょう?
2回以上の被災があった場合は、それぞれの被災ごとに給付基礎日額が異なり、またその後のスライド等の適用も異なるのです。
そのために、加重があった事業所における給付基礎日額で差額の障害補償年金を支給し、かつ従前からの障害補償年金もそのまま支給するのです。
併合繰上の例外について。
結果が障害補償一時金となる併合繰上のパターンは、9級+9級、9級+10級・・・12級+13級、13級+13級まで15通りあります。
例えば9級+9級は、本来ならば391日分+391日分で782日分のはずですが、1級繰上の8級が適用されて503日分になります。
例えば12級+13級は、本来ならば156日分+101日分で257日分のはずですが、1級繰上の11級が適用されて223日分になります。
併合繰上の場合、2つの障害によるそれぞれの障害補償一時金の額の合計額よりも、併合繰上による障害補償一時金の方が低額に抑えられているのです。
つまり1回の業務災害で、複数の障害が残った場合に、それぞれの障害に対して障害補償年金や障害補償一時金を支給するのではなく、それらの障害を併合して障害等級を決定し、より低額の障害補償年金や障害補償一時金を支給するのが「併合繰上という制度」だということです。
実をいうと、1回の事故で複数の障害を得た場合、補償されるべき損害は、個々の障害で評価した損害の合計ではなく、それら複数の障害を併合した障害の程度による併合という方法は、労災と関係のない交通事故の補償でも通例になっています。
1回の事故で複数の障害を得た場合の、日常生活や労働の場での後遺障害の損害の程度は、個々の後遺障害の損害の合計には及ばない、ということではないかと私は思いますが、その合理性をきちんと説明する資料や知識を、今の私は持ち合わせていません。
そのため、この点について不合理を感じられたとしても、私は、そういうものなのだ、としか言えません。
ただ、併合繰上は、それによる補償額が、個々の障害の程度による補償額の合計を下回る制度であることは、お分かりいただけたと思います。
繰り返しますが、この制度のありかたそのものについて不合理を感じられたとしても、私は何も言えません。
ただ、そういう制度である以上、併合繰上による補償額が、個々の障害の程度による補償額の合計を上回ったのでは、制度の意味が無いのです。
そして結果が障害補償一時金となる併合繰上の15種類のパターンのうち、9級+13級だけが、そこに引っかかってしまうのです。
このため、障害等級は8級に繰り上げますが、障害補償一時金の額は、個々の障害による合計額を上回らないように、492日分に抑えられます。
上記のように、併合と併合繰上の「制度そのもの」に対して「なぜ補償額が抑えられるんだ?」と疑問を持たれるのであれば理解できますが、9級と13級の例外だけに疑問を持たれるのは、たいへん失礼ですが、木を見て森を見ず、のような気がします。
参考になった:41人
poo_zzzzz 2016-12-23 23:35:18
poo_zzzzz様
早速にご回答を賜りましてありがとうございました。
この計算例は、大変にわかりやすく理解できました。
やっと納得できました。
また、併合繰上げの例外についても、詳しい例示を頂けまして助かりました。
制度趣旨を含めて理解を深めようと思っていましたので、この不都合がどうも理解できなかったのです。
基本テキストにも記載がありませんでした。単に暗記だけでは、今の試験に通用せず、制度の趣旨の理解は、選択式問題でもヒントとなる場合もあると思います。
この例外の件は、明確な説明がテキストにありませんが、個人的には政府の渋りかな?と思っています。
要は、大判振る舞いはしないという実に明確なものだと思うのです。
真に、労働者の救済を目的とするなら、障害2以上重ねれば、当然、「どちらか多い方を」となるはずです。
財政は有限ではありますが、必要なところにもっと税金を適所配分する必要性があるのではないかと強く思います。
hauser 2016-12-24 09:36:44
> この例外の件は、明確な説明がテキストにありませんが、個人的には政府の渋りかな?と思っています。
> 要は、大判振る舞いはしないという実に明確なものだと思うのです。
> 真に、労働者の救済を目的とするなら、障害2以上重ねれば、当然、「どちらか多い方を」となるはずです。
私の気のせいかも知れませんが、お伝えしたかったことが伝わっていないような気がします。
よろしければ、今一度、私の回答を読んでみて下さい。
参考になった:5人
poo_zzzzz 2016-12-24 09:39:51
poo_zzzzz様
これは問題の本質と関係の無い「私見感想」になってしまい、大変失礼いたしました。
先生の仰る肝心のしくみ、内容の真意は確かに理解いたしました。
本当にありがとうございました。
ご例示いただきましたように、計算事例で考えると本当にわかりやすいです。
テキストにはそういった豊富な事例があるわけではないのですが、自分でも数字を当てはめて計算してみるなど
理解を深めていこうと思います。
hauser 2016-12-24 10:14:03