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galonさん、こんにちは。

結論から言うと、改正後は買主が悪意であるか否かで契約不適合責任を追及できる・できないを区別するわけではなくなりました。
ただ、改正後も買主が目的物の品質に問題があることを知っていれば、通常は、売主に対して責任を追及することはできません。

詳しく説明します。
改正前の民法では、買った物に「隠れた瑕疵」がある場合、買主は売主に対して瑕疵担保責任の追及ができました。
ただ、「隠れた瑕疵」であることが必要なので、買主が瑕疵担保責任を追及するためには買主が善意・無過失であることが必要であるとするのが判例(大判大13.6.13)でした。
そのため、買主が瑕疵を知っていた、すなわち買主が悪意の場合は瑕疵担保責任の追及はできませんでした。
そして、この結論は常識にかなっています。
買主が悪意で売買契約を締結しながら、売主に責任を追及できるとするのは明らかに不合理だからです。

そのため、この点は改正後の民法でも変わるところはありません。
ただ、改正後の民法では、「瑕疵」という概念から「目的物の品質に関する契約不適合」という概念に変わりました。
その結果、買主が目的物の品質について売主に責任を追及できるかどうかは、目的物の品質について契約内容に適合しない点があるかどうかによって左右されることになりました。
そして、買主が目的物の品質に問題があることを知っている場合は、通常、目的物の品質に問題があることが契約内容に盛り込まれるでしょうから、たとえ目的物の品質に問題があったとしても、契約内容に適合していることになります。つまり、買主が悪意であれば、通常は契約不適合には該当しないので、買主は責任追及ができなくなるのです。

そういうわけで、冒頭に書いたように、改正後は買主が悪意であるか否かで契約不適合責任を追及できる・できないを区別するわけではなくなったが、買主が目的物の品質に問題があることを知っていれば、通常は、売主に対して責任を追及することはできないのです。

ただ、買主が悪意であるか否かで契約不適合責任を追及できる・できないを区別するわけではなくなったので、今後は「買主が悪意の場合に責任を追及できるか」といった形の出題はなくなると思います。
市販されている過去問集の中には、旧法時代に出題された「買主が悪意の場合に責任を追及できるか」という問題をそのまま掲載し、無理やり改正法にあてはめて解説をしているものもあるようです。
しかし、上記のような考えから、タキザワ宅建予備校の過去問集は、「買主が悪意の場合に責任を追及できるか」という問題は、「買主の責めに帰すべき事由がある場合に責任を追及できるか」という問題にアレンジしています。

タキザワ宅建予備校 講師 瀧澤宏之

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nobori_ryu 2020-10-05 23:34:17

丁寧な解説ありがとうございます!

独学では全く理解できない論点でしたので本当に助かりました!

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galon  2020-10-06 08:02:34

少し補足します。

「買主が悪意であれば、『通常は』契約不適合には該当しないので、買主は責任追及ができなくなる」と書きましたが、買主が悪意でも契約不適合に該当する可能性もあります。
以下の様な設例だったらいかがでしょう。

買主は、購入予定の建物を事前に見学した際に建物の一部に不具合があることに気づいたが、それを言い出せないまま売買契約を締結した。
売主は、その不具合に気付いていなかったため、当該不具合は契約内容に盛り込まれなかった。

この場合、買主は悪意ですが、目的物の品質に関する契約不適合に該当することになります。
しかし、やはり買主は売主に対して責任を追及することはできません。
契約不適合について買主の責めに帰すべき事由があるからです。
したがって、いずれにせよ、買主が悪意の場合に目的物の品質に関する契約不適合責任を追及できる可能性はないことになりますね。

それから、宅建業法が37条書面に既存建物について、「建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項」の記載を義務づけているのも、売主・買主の双方が認識している瑕疵は目的物の品質に関する契約不適合とはならないことと軌を一にするものと言えるでしょう。

タキザワ宅建予備校 講師 瀧澤宏之

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nobori_ryu 2020-10-06 08:41:44



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