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権利関係 [過去問]/相殺
tommy67 2017-07-11 18:41:27
瀧澤先生
お忙しい中、失礼致します。
権利関係の肢別過去問の相殺ついて質問がございます。
平成23年の問6
Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し賃料債権を有している。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1.Aの債権者Cが、AのBに対する賃料債権を差し押さえた場合、Bは、その差し押さえ前に取得していたAに対する債権と、差し押さえにかかる賃料債務とを、その弁済期の先後にかかわらず、相殺適状になった段階で相殺し、Cに対抗することができる。
答え○
Bが差し押さえ前にAに対する債務を取得しているので、Cに対抗できるのは理解できるのですが、本問の「その弁済期の先後にかかわらず、」という部分の意味がわからないと言うかイメージが全然つかめません。
どう言う事を言っているのでしょうか?
自働債権の弁済期の事なのか受働債権の弁済期の事なのか?イマイチわかりません。
よろしくお願い致します。
tommy67さん、こんにちは。
「その弁済期の先後にかかわらず」というのは、学説が対立しているところであり、判例が変遷したところでもあります。
ただ、これを理解するのは少し骨が折れますよ。
では、説明に移る前に、まず条文を確認しておきましょう。
民法511条
支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない。
ということは、511条を裏返せば、支払の差止めを受けた第三債務者(=差押えを受けた第三債務者)は、差押え前に取得した債権であれば、「無条件で」相殺を差押債権者に対抗することができる、ということになるはずです。
ところが、以前の判例(最大判昭39.12.23)は、差押えを受けた第三債務者が、差押え前に取得した債権による相殺を差押債権者に対抗できるのは、「第三債務者の債権の弁済期が差し押さえられた債権よりも先に到来する場合に限られる」という立場(制限説)を取りました。
基本テキストVol.1 P143の下の図を使って説明すると、第三債務者Aによるa債権の取得がCの差押えよりも先であっても、Aがa債権とb債権の相殺をCに対抗できるのは、a債権の弁済期がb債権の弁済期よりも先に到来する場合に限られるというのが、旧判例(制限説)の立場です。
なぜなら、a債権の弁済期がb債権の弁済期よりも後になる場合は、a債権とb債権が相殺適状となるまでAはb債権の弁済について履行遅滞をおかさざるをえません。自働債権(a債権)の弁済期が到来しないと相殺適状とならないからです。しかし、旧判例(制限説)は、そのようなAの身勝手な相殺に対する期待は、正当なものと評価できないので、相殺は差押債権者Cに対抗できず、Cの差押えが優先すると考えるのです。
しかし、そのわずか6年後に判例が変更され、現在は、差押えを受けた第三債務者は、差押え前に取得した債権であれば「無条件で」相殺を差押債権者に対抗することができる、つまり、第三債務者は「a債権とb債権の弁済期の先後に関わらず」相殺を差押債権者に対抗できる(無制限説)とするのが判例の立場です(最大判昭45.6.24)。
理由は、第一に旧判例のような制限を掛ける条文上の根拠がないことです。上でも述べたように、511条を裏返せば、差押えを受けた第三債務者は、差押え前に取得した債権であれば、「無条件で」相殺を差押債権者に対抗することができる、ということになるはずだからです。
また、そのように解するのが第三債務者と差押債権者の公平にも資するからです。
瀧澤
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nobori_ryu 2017-07-11 01:05:06